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量子コンピューティングを齧る 共役転置、エルミート行列、そしてユニタリ行列

ヒルベルト空間に没入すると定期的に記憶が消去されるという話は聞いていたが(誰に!?)上書きをすれば済む話だ。
どうも量子の世界は前に進めない気もするけど、おそらく別宇宙の俺はとっくにアルゴリズムの1つや2つ考え出しているだろう。まだ重ね合わせ状態が続いてるだけだ。負けないぞー(観測された途端、こっちの俺の運命は…)。

1. 共役転置 (Conjugate Transpose)

2×2行列における共役転置は行列の転置を取り、次に各成分の複素共役を取る操作です(順不同)。

定義
行列 $${A}$$ を
$${A= \begin{bmatrix} a & b \\ c & d \end{bmatrix}}$$

とすると、共役転置 $${A^*}$$ は次のように計算されます。
$${A^∗= \begin{bmatrix} \overline{a} & \overline{c} \\ \overline{b} & \overline{d} \end{bmatrix}}$$

ここで、$${\overline{a}}$$ は $${a}$$ の複素共役を意味します。


行列の
$${A= \begin{bmatrix} 1+i & 2-i \\ 3i & 4 \end{bmatrix}}$$

共役転置は
$${A^∗= \begin{bmatrix} 1-i & -3i \\ 2+i & 4 \end{bmatrix}}$$


2. エルミート行列 (Hermitian Matrix)

エルミート行列は、自身の共役転置と等しい行列です。すなわち、行列$${A}$$がエルミート行列である条件は次のように表されます。
$${A=A^∗A = A^*A=A^∗}$$

2×2エルミート行列の一般形
2×2のエルミート行列は次のように表されます。
$${A= \begin{bmatrix} a & b + ci \\ b - ci & d \end{bmatrix}}$$

ここで、$${a}$$ と $${d}$$ は実数であり、$${b}$$ と $${c}$$ は実数または 0 です。


行列の
$${A= \begin{bmatrix} 2 & 1+i \\ 1-i & 3 \end{bmatrix}}$$

共役転置は、
$${A^* = \begin{bmatrix} 2 & 1+i \\ 1-i & 3 \end{bmatrix}}$$
元の行列と一致するので、これはエルミート行列です。

特性

  • 共役転置が等しい:$${A = A^*}$$の性質を持ち、対角成分が常に実数、非対角成分は対称的な複素共役です。

  • 固有値が実数:エルミート行列の固有値は必ず実数であり、物理的解釈が可能です。

  • 固有ベクトルの直交性:異なる固有値に対応する固有ベクトルは直交し、ユニタリ行列によって対角化可能です。

意義

  • 物理的観測:観測可能量はエルミート行列で表され、実固有値で観測結果が実数として意味を持ちます。

  • 信号処理スペクトル解析や安定したフィルタ設計に利用されます。

  • データ解析と次元削減:行列の対角化・分解を通じて主成分分析などに役立ちます。

  • 安定性解析:エルミート行列の実固有値性がシステムの安定性に寄与します。


3. ユニタリ行列 (Unitary Matrix)

ユニタリ行列は、その共役転置が逆行列と等しい行列です。すなわち、行列 $${U}$$ がユニタリ行列である条件は次のとおりです。
$${UU^∗=U^∗U=I}$$

ここで、$${I}$$ は単位行列です。

2×2ユニタリ行列の一般形
2×2のユニタリ行列は、次のように表されます。
$${U = \begin{bmatrix} a & b \\ -\overline{b} & \overline{a} \end{bmatrix}}$$

ここで、$${|a|^2 + |b|^2 = 1}$$ が成立します。


行列
$${U = \frac{1}{\sqrt{2}} \begin{bmatrix} 1 & i \\ -i & 1 \end{bmatrix}}$$

の共役転置は、
$${U^* = \frac{1}{\sqrt{2}} \begin{bmatrix} 1 & -i \\ i & 1 \end{bmatrix}}$$

この行列の積 $${U U^*}$$ は、
$${U U^* = \begin{bmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{bmatrix} = I}$$
となるため、これはユニタリ行列です。

特性

  • 共役転置が逆行列:ユニタリ行列は $${UU^* = I}$$という性質を持ちます。これは、ユニタリ行列が回転や反射といった角度や長さを保つ変換であることを意味します。

  • 固有値の絶対値が1:ユニタリ行列の固有値は必ず絶対値1の複素数(単位円上にある)です。

  • 固有ベクトルの直交性:ユニタリ行列の固有ベクトルは互いに直交し、規格化(ノルムが1)されます。

  • ノルムを保つ:ユニタリ行列はノルム(長さ)を保つため、行列の作用によってベクトルの大きさは変わりません。

意義

  • 物理的観測:量子系の時間発展はユニタリ行列で記述され、情報が失われず全体のエネルギーや確率が保たれます。

  • 信号処理:ユニタリ行列はフーリエ変換などで使われ、ノルムの保存により信号のエネルギーが保持されます。

  • 数値計算の安定性:ユニタリ行列の直交性や長さの保存は、数値計算において誤差が蓄積しない安定した計算を可能にします。

  • データ解析と次元削減:ユニタリ行列を使った対角化やスペクトル分解は、主成分分析信号分離において重要です。


4.固有値

行列の固有値 (Eigenvalues) とは、線形代数において行列が特定のベクトルにスカラー倍を施す場合に出現する値のことです。行列がどのような方向にスケールするかを示し、行列の持つ重要な性質を理解する上で欠かせない概念です。

定義
行列$${A}$$の固有値 $${λ}$$と、それに対応する固有ベクトル$${v}$$は、次のような関係を満たします。
$${Av=λv}$$

ここで、

  • $${A}$$は$${n×n}$$の正方行列

  •  $${v}$$は$${n×1}$$の非ゼロベクトル(固有ベクトル)

  • $${λ}$$はスカラー値(固有値)、即ち行列作用のスケール倍率

つまり、行列$${A}$$がベクトル$${v}$$に作用した結果、ベクトルの方向は変わらず、長さだけが$${λ}$$倍されることを意味します。

固有値の求め方
行列$${A}$$の固有値を求めるには、次の特性方程式 (Characteristic Equation) を解きます。
$${det⁡(A−λI)=0}$$

ここで、

  • $${det}$$ は行列式を意味する

  • $${I}$$は単位行列です。

この方程式は行列の零空間の解析であり、行列$${A}$$の固有値$${λ}$$を求めるための多項式方程式です。

固有値の性質

  • 固有値の和は、行列の対角要素の和(トレース)に等しい。

  • 固有値の積は、行列の行列式に等しい。

  • 正規行列(対称行列、エルミート行列、ユニタリ行列など)の場合、固有値は直交する固有ベクトルを持つ。

固有値は行列のダイナミクス安定性、対角化、ジョルダン標準形などの分析において重要な役割を果たします。


それにしてもTeX…めんどくせー。


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