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量子コンピューティングを齧る 量子ゲート

さあ、ようやくゲートにたどり着いた。
この門さえ抜けちまえば…あっ、おまえたちは、いつかのパウリとアダマール!
ちぃぃぃっ、まさか量子界最強と謳われる那羅延堅固に密迹金剛士お二人揃ってのお出ましとは恐れ入ったぜ…
で、すみません。どこでお会いしましたっけ?なんせ厨房に入り浸り酒浸りで。へへ。
しっかりおさらいしていけと。へいへい。仰せのままに。

1. ユニタリゲート

ユニタリ性の条件

とにかく可逆。

$$
^\dagger U = UU^\dagger = I
$$


2. パウリゲート

X/Y/Zゲート

パウリゲート (X,Y,Z) は量子ビットの状態を特定の軸周りで反転させる基本的な操作です。

  • X ゲート(NOTゲート):古典コンピュータのNOTゲートに相当し、量子ビットの状態を|0⟩ ↔ |1⟩と反転させます。ブロッホ球上ではx軸周りの180度回転として表現されます。
    $${X = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}}$$ 

  • Y ゲート: 量子ビットの状態を虚数単位iを含む形で反転させ、|0⟩ → i|1⟩、|1⟩ → -i|0⟩という変換を行います。ブロッホ球上ではy軸周りの180度回転です。
    $${Y = \begin{pmatrix} 0 & -i \\ i & 0 \end{pmatrix}}$$

  • Z ゲート: 量子ビットの位相のみを反転させ、|0⟩はそのままで|1⟩の符号を反転(|1⟩ → -|1⟩)させます。ブロッホ球上ではz軸周りの180度回転として表されます。
    $${Z = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}}$$

状態変換

  • X: $${|0\rangle \leftrightarrow |1\rangle}$$

  • Y: $${|0\rangle \rightarrow i|1\rangle, |1\rangle \rightarrow -i|0\rangle}$$

  • Z: $${|0\rangle \rightarrow |0\rangle, |1\rangle \rightarrow -|1\rangle}$$

亜種のゲート

  • Sゲート:Zゲートの平方根(√Z)
    Zゲートの平方根として機能し、|1⟩状態に90度の位相回転(π/2)を加えるClifford演算です。
    量子誤り訂正が比較的容易で、|0⟩→|0⟩、|1⟩→i|1⟩という変換を実現します。

  • Vゲート:Xゲートの平方根(√X)
    Xゲート(NOT)の平方根として機能し、量子ビットを「半分だけ反転」させる操作を行うClifford演算です。
    2回適用するとXゲートと同じ効果になり、量子ビットの状態を完全に反転させます。

  • Tゲート:Sゲートの平方根(∜Z)
    Sゲートの平方根(Zゲートの4乗根)として、|1⟩状態に45度の位相回転(π/4)を加える非Clifford演算です。
    量子誤り訂正が難しいものの、ユニバーサル量子計算に必要不可欠なゲートです。


3. アダマールゲート


アダマールゲート

量子ビットを重ね合わせ状態に変換する重要なゲートです。
計算基底(|0⟩,|1⟩)とアダマール基底(|+⟩,|-⟩)の間の変換を行います。
量子アルゴリズムで頻繁に使用される基本的な要素です。
$${H = \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 1 & -1 \end{pmatrix}}$$

状態変換

  • $${|0\rangle \rightarrow \frac{|0\rangle + |1\rangle}{\sqrt{2}} \rightarrow |+\rangle}$$

  • $${|1\rangle \rightarrow \frac{|0\rangle - |1\rangle}{\sqrt{2}} \rightarrow |-\rangle}$$


4. 位相シフトゲート

位相シフトゲート

位相シフトゲート(Phase shift gate)は、量子ビットの|1⟩状態に対してのみ位相eiθを付加し、|0⟩状態はそのままにする操作を行います。数式で表すと|0⟩→|0⟩、|1⟩→eiθ|1⟩となります。
特殊なケースとして、θ=πのときはZゲート、θ=π/2のときはSゲート(位相ゲート)、θ=π/4のときはTゲート(π/8ゲート)となります。これらは量子誤り訂正や量子アルゴリズムの実装で重要な役割を果たします。

$${P(\phi) = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & e^{i\phi} \end{pmatrix}}$$

特殊な場合

  • $${S = P(\frac{\pi}{2}) = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & i \end{pmatrix}}$$

  • $${T = P(\frac{\pi}{4}) = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & e^{i\pi/4} \end{pmatrix}}$$


5. 回転ゲート

回転ゲート

回転ゲート(Rx, Ry, Rz)は、ブロッホ球上の量子状態を指定した軸周りに任意の角度θだけ回転させる操作を行うゲートです。
θ=πのときはパウリゲートと同じ効果になります。

  • X軸周りの回転: $${R_x(\theta) = \begin{pmatrix} \cos(\theta/2) & -i\sin(\theta/2) \\ -i\sin(\theta/2) & \cos(\theta/2) \end{pmatrix}}$$

  • Y軸周りの回転: $${R_y(\theta) = \begin{pmatrix} \cos(\theta/2) & -\sin(\theta/2) \\ \sin(\theta/2) & \cos(\theta/2) \end{pmatrix}}$$

  • Z軸周りの回転: $${R_z(\theta) = \begin{pmatrix} e^{-i\theta/2} & 0 \\ 0 & e^{i\theta/2} \end{pmatrix}}$$


6. 一般的な単一量子ビット操作

$$
{U(\theta,\phi,\lambda) = R_z(\phi)R_y(\theta)R_z(\lambda) = \begin{pmatrix} \cos(\theta/2) & -e^{i\lambda}\sin(\theta/2) \\ e^{i\phi}\sin(\theta/2) & e^{i(\phi+\lambda)}\cos(\theta/2) \end{pmatrix}}
$$


7. ブロッホ球での表現

X ゲート(NOTゲート)

$${X = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}}$$

  • x軸周りの$${\pi}$$回転

  • $${|0\rangle \leftrightarrow |1\rangle}$$ の反転(ブロッホ球の上から下、または下から上への移動)

Y ゲート

$${Y = \begin{pmatrix} 0 & -i \\ i & 0 \end{pmatrix}}$$

  • y軸周りの$${\pi}$$回転

  • 虚数位相を含む反転

Z ゲート

$${Z = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}}$$

  • z軸周りの$${\pi}$$回転

  • 位相の反転(ブロッホ球の前面から背面への移動)

ブロッホ球でのパウリゲートの説明

アダマールゲート

アダマールゲートの作用

$${H = \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 1 & -1 \end{pmatrix}}$$

  • z軸と x軸の間の$${\frac{\pi}{2}}$$回転(45度回転)を表します

  • 基底状態の変換:

    • $${|0\rangle}$$ を $${|+\rangle = \frac{|0\rangle + |1\rangle}{\sqrt{2}}}$$ に変換

    • $${|1\rangle}$$ を $${|-\rangle = \frac{|0\rangle - |1\rangle}{\sqrt{2}}}$$に変換

ブロッホ球でのアダマールゲートの説明


パウリとアダマールのやつら、俺にビビってブロッホ球なんてちょっと息切れしそうな名前の武器出してきやがったけど、位相とビット反転してやったらあっさり黙りやがったぜ。
でも、その影に位相シフトゲートと回転ゲートがいるなんて聞いてねーぞ。eのiψ乗とか三角関数とかぜってーあいつらのほうがやばいじゃんか。どうすんだよ。どうすんだって。
え?可逆だから駄目なら戻しちゃえば済む?
あれ?俺、今、取り乱してた?え?ふだんのダメっぷりと変わらなすぎて差がわからない?
そっか…ならいっか。


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