見出し画像

ミタエイガ「人体の構造について」

2022年 フランス・スイス・アメリカ合作
フランス語 日本語監訳:養老孟司

本当は12月の中盤に観に行っていました。
朝から「はたらく細胞」→「銭天堂」→映画館を移動して観た、この映画。

何と表現したら良いか分からないまま、時間が過ぎてしまいましたが、少し気持ちの余裕があるうちに記録しておこうと思います。予告編では「本予告編には刺激が強いと感じられる映像が含まれています」との注意書きが。
私は残念ながら予告編も見ず、内容も知らないまま”ジャケ買い”のように選んだ映画だっただけに衝撃が強かったのだと思います。

 FABRICAとは、1543年にアンドレアス・ヴェサリウスによって記された解剖学の大著。ルネサンス期に開発された遠近法や陰影法を取り入れて、人体の様子を精緻な絵によって表現し、その後の医学の発展の礎となりました。

 この映画の中身もある意味では、それぐらい衝撃的なものであるように感じます。ただ、医療現場にいる人(私は該当しない)にとっては、「わざわざ観る必要がない、と感じられる映像かもしれません。しかし、実際の検査、手術、治療、看護、介護などを、モザイクなしでここまで描いた映画はなかっただろうし、日本では絶対に作られない映画だと思います。

 先ごろのニュースでも、大学病院の看護師が匿名で発信したSNSの不適切な投稿に触れていました。もちろん不適切な発信は肯定されるものではありません。私はその人を知らないし、知っていたとしても実際の行動については私には分かりません。”書いてあること”=”やったこと”ではないかもしれないし、”やったけど書いていないこと”だってあるかもしれません。ただ、通りすがりの人が「ありえない!」と断罪したり煽ったりするのは違うんじゃないかと思う部分もあります。と、書いたのは、この映画でも医療者の心情を素直に吐露していると感じられる場面が見受けられるからかもしれません。

 話を戻します。「鬼手仏心」という言葉があります。外科の治療においては、ココロをオニにするのか、オニのテにするのか、どちらが良いのかわかりませんが、治療のために切らないと(傷つけないと)いけない、というのも事実な訳で、医療は本当に様々なジレンマや矛盾、葛藤を抱えているのです。映画館をハシゴして観た影響もあってか、単純化することでエンタメ性を持たせることができる物語もあり、デフォルメすることで削ぎ落とされてしまう世界もあります。コンピューター・グラフィック(CG)技術だって、どれがどこまでCGなのか、どれだけ進歩したのかさえ私には理解できないほどに進歩しています。それでも、この映画の中で映し出される「現実」には様々な気持ちや考えが生まれます。

 「肉眼」という言い方をしますが、人間が見ている世界は視野によっても視力によっても理解力によっても想像力によっても、人それぞれに異なります。「肉眼(目で見えるもの)が正しい(好ましい)」と言ったら、私が担当する精神看護はどうなっちゃうのでしょうか。X線写真もCTもMRIも心電図だって内視鏡だって科学や医学の進歩の賜物です。
頑張れ、医療画像専門技師!!(関係ない)

以下,パンフレットに記載されている
「本作に登場する外科手術と病院業務」を紹介します。
膀胱鏡検査、脳室開口術、帝王切開と胎盤組織検査、臨床検査技師、脊柱側弯症、小腸粘膜萎縮、レチウス腔温存ロボット支援前立腺摘除術、認知症と介護福祉、水晶体摘出手術、エンゼルケアと遺体管理、夜間警備、集中治療室(ICU)、サル・ド・ギャルド
※サル・ド・ギャルドは、フランスの病院に特有の医師だけが立ち入りを許される当直医食堂。印象的な壁画が描かれています。

この映画は、一回観ただけでは私には十分に理解することは難しい部分だらけです。でも、だからこそ「スゴイ映画だなぁ」と感じました。DVDを買って見返したい気もしますが、「すごい映画!」という気持ちを持ち続けるのも悪くないように思います。

いいなと思ったら応援しよう!