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ちいさな願いごと

ばったりと、懐かしい友人に会った

ちょっとの時間差で絶対にそこですれ違わないような場所で

下りのエスカレーター
わたしが降りる階のひとつ下に更に降りていく横顔に、思わず声をかけて肩に触れた
振り向いて驚く彼女を追ってとりあえずわたしもひとつ下の階に降りた

しばらく近況を伝え合い
変わらない優しい笑顔にほっとした

わたしがバレエをはじめたのは
地域の体育館の小さなお教室に彼女と一緒に通ったことがきっかけだった
幼い頃習っていたという彼女と毎週そこで共に汗を流しささやかに楽しんだ

わたしを「くみちゃん」とちいさな頃の友達のように呼ぶ
優しい優しい笑顔が、わたしには想像さえおこがましいたくさんの経験からきている強さだと知っている

しあわせでいて欲しいと、心から願うわたしの友人のひとりだ

恨み言を言うわけでもなく、大変なことも引き受けて、辛いであろうことにも余計な愚痴を言わず、とにかくいつも笑顔だ
おおらかで優しい

偶然にもすれ違ってほんの少し話せてほっとした
大切なご家族に何事も起こらず、彼女が変わらず笑顔で、ほんとうによかった

「愛情はつかわせてもらうもの」

という、わたしが大切にしていることばがある

きれいごとかもしれないけれど、なかなか会えない友人のしあわせを思う時、こんなふうに思える友にこの生で出会えてよかったと思う
ふだんこまめに連絡を取るわけでもないし、
今回もお互いにほんの少し行動が違えばそこで会うことなんてなかったくらい不思議な偶然だけれど、そんなひとときを「嬉しい」と数日経った今もあの笑顔を思い浮かべながら仕事ができる
彼女の日々のしあわせを願っている

わたしたちはそれぞれに別なお教室に移り、彼女は数年前にそこのお教室で発表会にでたこともあって、舞台の上の彼女が生き生きとしていて眩しかった
そのときもわたしはそんな彼女を見てしあわせだった

今はまたあの体育館のお教室にいるという
いつの日か同じバーについてお稽古できたらとぼんやりと思っている


それは七夕のちいさな願いごとのひとつかもしれない


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