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ドロちゃん、あのね

夢の中でも
空模様でも
何かのちいさな音でもいいから
ドロちゃん、どうかすこしだけでもいいから帰ってきてね

きみが透明になってから2度目のお盆です

この間聞いた話だと
仏教では動物と人間はあちらで一緒にできないとのこと
おかあさんはそれからとても困っています

いつの日かわたしが透明になったら
きみが待っていてくれるからとずっとそう思っているというのに、こまったねぇ


机に置いたちいさな鉢植えの上をちらちらと飛ぶ
ごま粒のような虫を、きみかもしれないと思って眺めていたら、日に日にきみかもしれないごま粒さんが増えていて慌てて窓の外に飛ばしました

今も、きみに会いたいです

手を動かしていたり
オリンピックを見ていたり
バレエをしていたり
車を運転していたり
そんな時にずっと思っているわけではもう無いのだけど、今も変わらず
どうしてもきみに会いたいです


「さよならのあとで」
刺繍糸をしまう引き出しの上にいつも置いてある本を、ふと開いて眺めると
わかっているし、いつもできるだけ、もうそうしていることが書かれていて
わかっているし、もうそうしていることなのに
なんだか涙がひと粒流れました

きみに会いたいのです、やっぱり

ドロちゃんがいたらなぁと、いつだってそう思っています


夏の夕散歩では
こんなふうにフェンスの上の月を眺めたね


ドロちゃんあのね、この頃外で暮らしている猫のお母さんと3匹の赤ちゃんが時々やってくるのよ
みんな牛乳がだいすきで、ちいさな器にみんなで顔を突っ込んで美味しそうに飲んでいます
ご飯はカリカリや柔らかいのや、いろいろお出ししているのだけど、どうやらお母さんは煮干しが好きなようです

かわいいなぁと眺めて、できる限りゆっくりして行ってもらうのだけど、きみとはやはり全然違って、そばに来てだっこをせがんだりしません

ご飯の食べ方もまるで違うの
きみのように、飲み込むようにむしゃむしゃしたりせず、ゆっくりと口に入れてカリカリカリと噛んでいます
こんなにも、違うんだねぇ

今日は、暑さでもう少なくなってしまったアカツメクサとシロツメクサを、美味しそうなところを選んで摘んできました


そちらでもたくさん食べている?

きみと歩いてたくさんのお花や草に出会って
今日もこうしてお花を見つけては刺繍しています


さびしくてたまらないけど、きみのことを思うと口の端っこが少しあがって、涙をひと粒流しながらにっこりとできるようになりました

にっこりしながら刺繍しているから
どうか迷わず帰ってきてね
どんなちいさな合図でも、どんな姿でも
ちゃんと気づけるようにしているから

会いたいよ、ドロ
だいすきだからね
待ってる



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