便り
はじめて「メール」というものができた時
友達と送りあってそれはそれは楽しかった
なんだか普段顔をみて言えないようなことが
不思議とメールなら伝えられる
なんてことないありがとうや嬉しかった気持ちや
心の内みたいなことを送りあって
しかも送ったそばから読んですぐにお返事がくる
やりとりは夜遅くまで続いて
着信の音が鳴ると嬉しくてちいさな画面に即座に言葉を連ねた
ただの連絡もお互いに相手の都合をそれほど考えなくてもいいし、返せるタイミングで返信をすればいい
そんなできごとはかれこれ20年も前の話
LINEやSNSができて
わたしたちは言葉を送り合うとても簡単でスマートなかたちを手に入れて今ではもうこの機能無くして日常は成り立たない
会話のように一言だけで返したり
スタンプなどで十分に伝わったり
けれど、手紙や葉書の楽しさを大切に思う人たちはきっと多くて、葉書やレターセットの絵柄、ペンの色や紙の質感、切手やシールを選ぶとき
文字を書く前の深呼吸の
そのもっと手前の楽しさがそこにある
送る人を思ったり、自分らしさをこめてみたり
どこかで美しい葉書を見つけると、あの人に送りたいなぁと顔が浮かぶ
わたしは決して字がきれいではないけれど
一年に何度か数人の方とお手紙でやり取りが続いている
中にはメールでもいくらでもやり取りできる人もいて、お手紙のお返事をメールでするゆとりのない時もあるのだけど、葉書一枚をその人に向けてポストに入れる時の何とも言えない気持ちはちょっと他のことには例えられない心地よさがある
数日経って
「届いたかな」とその人のことをまた思い浮かべる
庭先で読んでいるだろうか
午後のお茶を飲みながら読んでいるだろうか
仕事帰りにポストで見つけて灯りをつけた寒い部屋で読んでいるだろうか
それはみんな、わたしが受け取った記憶があるから
受け取った葉書一枚に紙一枚の重さ以上の
大きな力を感じることがあるから
工房からの風から帰って数日後
遠く静岡のお客さまからのお便りが届きました
おそらくnoteもインスタもご覧くださっていて
ちひろの葉書に労いの言葉を綴ってくださっていました
6年前、同じように風から帰り翌朝のこと
メールにはこの方から、わたしの作品について温かく力強いメッセージが届きました
それから、お互いに何かの時にはちいさな贈り物をしたり近況を報告したり、ワークショップにでてくださったりしながら長く、緩やかで、温かなつながりが続いています
ブレーメンのモチーフのきっかけをくださった方でもあって、この葉書の裏にはモチーフの成長を喜んてくださっている言葉がありました
そして先日、やさしい色合いの中に秋の葉が舞う葉書が届きました
風の時に朝一番で来てくださって
「彩り」と名づけたエプロンをお選びくださったお客さまでした
エプロンの紐の長さを調節するためにお預かりしていて、お直しが完成したのでお送りしていて
無事にお手元に届きましたのお知らせのお葉書でした
葉書はまるでわたしの刺繍の続きのようでした
風に舞う秋の葉が
私の手元にもまた降ってきた
そしておふたりとも切手はかわいらしいお花の集まり!
その人を思って
言葉を綴って
その人を思って
言葉以外のことも込められる
お便りの楽しみ
ささやかでいて、豊かなこと
今の制作が落ち着いてから
ゆっくりとお便りしたいと思う人たちがいます
どんなものを選んで
どんなことを書こうかな
そんなことを思いつつ今日も刺繍をしています