職人と安全第一
弱小末端下請けの職人は、ひとつミスをしたら大企業のホワイトカラーの前ではとにかく反省文と下手したら全責任を負わされての現場出入り禁止だ。
出入り禁止になると明日から無収入だ。なので謝るしかない。という計装工の友人。
どうしても安全帯とヘルメットをしていると作業できない場所があり、「外さないと入れない」と言ったら「勝手にやれ」と言われ、外して作業していたらお縄になった。
相手はKと名のつく大建設企業。手も足も出ない。「人が入れる設計にしろ」と言うと「している。そっちの技術が足りない」という押し問答。最後に「訴えるぞ」と言われたら金のある方が勝つのだ。
どんなに素晴らしい設計図を書いたとしても、それを自分の手足体を使って一つ一つ積み上げてくれる職人がいないとそれはただの紙。それが電気とか土木だったらライフラインは確保されない。設計者と職人は同等のはずだ。
テレワークで仕事が成り立つのは幸せな方だ。その先には、厳重な感染対策を強いられ、暑さ関係なくヘルメットと安全帯を着けての命がけの作業をしてくれる職人がいる。
ちなみに現場にクラスターが発生したらその現場は終わり。職人は無収入となる。設計をした人はお給料はもらえる。別に痛くもかゆくもないのだ。
現場では大手の下に入る電気工事などの職人は、非常に立場が低い。いやがらせもしてくる。
そして信じられないが。
相手が女だと、ターゲットにされる。
今回はわたしの友人が完全にターゲットにされた。ここに責任を集中させれば、事は終わる。もし向こうが許さなかったら、彼女は明日から無収入になる。職人魂を持って挑んだ仕事で、クビ。じゃあどうすればよかったのか。
「できません」
「ヘルメットとればできます」
どちらにしても作業は中止。
「できません」なら、他へと仕事は移る。「ヘルメットとる」なら、作業は中止。やったらお縄。
なるようにしてなったのだ。たまたま彼女が一瞬ヘルメットを取ったところを捉えて、そしてすべてを彼女の責任に負わせることで大企業の方は助かった。まわりの仲間がどんなに訴えても、全く取り合わなかった。
「じゃあどうすりゃいいんだよ」
という質問には答えない。
「安全第一」という垂れ幕。
あんなの、職人を守るための標語ではない。
どう考えても企業の名前を守るための垂れ幕だ。
ちなみに、最初にこの彼女のことを書いた記事はこちらです。
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