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飛翔前夜 -樫尾七十年代-

「飛翔前夜」は、まだ知られていない人物の、羽化に至るまでの飛翔前夜に焦点を当て、誰もが未知な情報をいち早くキャッチできるようなインタビューをお届けする最先端の記事である。

今回私が目を向けたのは、新進気鋭の若き天才アーティスト、という肩書きすら凡庸に感じさせるほど謎の多い人物、樫尾七十年代さん(21)
実をいうと、インタビュアーの私と彼は血縁関係にあり、私は昔から彼の活動を身近に見てきた者の1人である。
おそらく今認知している人はほとんどいないであろう、彼の活動、思考に迫り、その比類なき存在を紹介することができればと考えている。

樫尾 七十年代 (かしお ななじゅうねんだい)
2003年、東京都にて出生。
1年前に専門学校を中退した後、
フリーターとして実家で生活する傍ら
創作活動を続けている。

インタビューは常に緊張感の漂う空間で行われた。彼の持つ独特なムードの煙に巻かれ、ときに戸惑う場面もあったが、基本的にとても真摯に私の質問に答えてくれた彼は誠実な芯のある人だと思う。


ーまず、自己紹介をお願いします。

樫尾七十年代 (以下、樫尾) : あ、はい。どうも、樫尾七十年代です。まあ、なんか色々やってるんですけど。ええと、難しいな。具体的には、絵とか、マンガとか、音楽もやってる。あとは、うーん…。とにかく、色々やってるんです(笑)。 アーティストとかミュージシャンとか自称するのは恥ずかしいんで、ちょっと抵抗ありますけど、まあそんな感じだと思ってください。

ーどのような媒体で作品を発表しているのですか?

樫尾 : 主にネットですね。絵や写真をInstagramに流したり、動画をYouTubeに投稿したり。発表しないことも多いです、自分の部屋に置いたり、パソコンのフォルダにしまうだけだったりすることがほとんど。別に失敗作ってわけじゃないんですけど、「これは人に見せなくても完成したな。」みたいな感触があって、作り終わった時点で満足してしまうんです。個展をやったり、どっかの大会に応募したりっていう気もないですね。

ーネットで作品を発表している。と仰いましたが、名前を検索してもそれらしきアカウントが見つからないんですよ。作品を発表するための公式アカウントがない。これはなぜですか?

樫尾 : これは、とにかく「誰が作った」「いつ作られた」みたいな情報を排除するためですね。適当な記号の羅列を名前にしたアカウントなんかを使って、複数のサイトに作品を散らべてます。ネットにある程度泳がせたら削除。だから、僕が作ったものってことは誰も知らない。僕の名前を検索しても僕の作品は出てこない。

 YouTubeに投稿された3日後に
アカウントごと削除された動画

ーなぜそこまでして作品の匿名性を高めようとするのですか?

樫尾 : 作品単体の、バックグラウンドを無視した評価を得たかったんです。僕の好きな作品もそういうものが多くて、誰が作ったか分かんないし、作られた意図も全然分かんないんだけど、そういう作品がある日偶然目の前に現れてきて、それが無性にカッコいい。その感覚が理想なんで、あえて名前を出す必要はないわけです。別に利益も気にしてないですし。

ーそうなってくると、樫尾七十年代という名前は必要ないように思えますが。

樫尾 : いや、僕がさっき言ったような「誰が作ったか分からない作品」も、分からないだけで、作者は存在するし、その人にも名前がもちろんありますから。それをあえて隠すのが魅力なんです。

ーなるほど。それでは、樫尾七十年代という名前の由来を教えてください。

樫尾 : 深い意味はないです。樫尾っていうのは、僕の友人に伊藤って名字のやつがいて、それをもじりたかったんですよ。僕と伊藤で対になる存在みたいな。で、そうなると後は連想ゲームです。
伊藤→いとうせいこう→SEIKO→CASIO→樫尾
っていう。どうでもいい身内ノリですね。
名前の七十年代っていうのは、名前で◯◯年代ってあったら面白いと思って。個人的に映画や音楽が好きな年代を選びました。語感も良いし。英名は70's Casioです。使ったことはないけど。

ー現在樫尾さんは、専門学校を中退してそこからフリーターとのことですが、創作活動が本業になるということは考えていませんか。

樫尾 : 今は駆け出しの駆け出しなので、そこまでは考えられないです。週2日バイトして、月給がだいたい7万円。でも実家暮らしで、生活費は両親に出してもらっているので何とかなっています。

ー両親からは何も言われないんですか?

樫尾 : いや、まあ…(苦笑)。大学3年生の年齢だと考えれば実家暮らしも月給7万円もよくあることだからってことで一応容認されています。普通追い出されますよね(笑)。本当にありがたいです。このままじゃイカンという気もあるんだけど。

ーバイト、というのがどのようなものなのか聞かせてもらっても?

樫尾 : まるまるまるまるまるまるで働いています。

ーえ?まるまるまるまるまるまる?

樫尾 : はい。まるまるまるまるまるまる。

ーすいません、存じ上げないです。

樫尾 : いや、まるまるまるまるまるまるなんて名前の場所はありませんよ。伏せ字の"まる"です。"まる"にはとある言葉が入ります。吉祥寺にある中古屋ですね。

ー店名を伏せることを希望しますか?

樫尾 : そうです。"◯◯◯◯◯◯"と表記しておいてください。お店に迷惑がかかるといけないんで。◯◯◯◯◯◯です。◯◯◯◯◯◯。
主にマンガやホビーを取り扱っているところ。家も近いし昔からよく通ってました。

ーそこでは主にどのような業務を?

樫尾 : 入荷したアダルトビデオのデータ入力です。パソコンにメーカー名をカタカナ半角で打ち込んで、あとはタイトルを入力する。これを倉庫でずっとやってます。なんでこんなことやらされてるのかは分かりません。何に使われてるかも知らない。とにかく、ある日シフト表を見たらそこに移動されてた。
元々レジ打ちをしていたんですけど、あまりにも仕事ができなさすぎて、色んな場所をたらい回しにされたんです。そして、最終的に今の部署に落ち着きました。コミュニケーションが苦手だったり、まあ単純にミスが多くて。いまの仕事はそういう意味で、1人でできるんで比較的楽です。

ーアルバイトをしていて辛いことは?

樫尾 : やっぱり自分の時間が減ることです。家に帰るころには疲れて何もできない。もっと本読んだり映画観たりしたいんですけどね。
仕事で大変なのは、アダルトビデオのタイトルって長いじゃないですか。それを打ち込むのが面倒臭い。頭がおかしくなりそうです。
ただ、ここでとっておきのウラワザを教えちゃいます !!! ビデオのパッケージにあるバーコードを読み込んで、駿河屋なんかで検索するとタイトルが出てくるんで、それをコピペすればとってもラク。そんな感じで仕事してますね。

ー樫尾さんというと、昔からマンガが好きだった印象があるんですけど、マンガとの出会いを教えてください。

樫尾 : 初めて読んだマンガは覚えてないな、普通にコロコロとか読んでましたけど。でもやっぱり印象に残ってるのは、小学生のときに読んだ藤子・F・不二雄の短編『ミノタウロスの皿』です。王道ですけど、オチに衝撃を受けました。僕のルーツは藤子・F・不二雄なので、起承転結があって構成がきちんとしている、かつメッセージ性がある作品にずっと惹かれるんです。そういうものを作りたいです。

ー基本的に昭和のマンガを読んでいるイメージがあります。近年の作品で面白かったものは何かありますか?

樫尾 : ああ、あのねぇ…。僕は総じて、最近のマンガは全てゴミだと思ってます。何が面白いのかさっぱり分からない。気質なんでしょうね。これはもう、本当にダメ。有名なやつ、流行ったやつ、色々読みましたけど、全部ゴミです。まず、最近の絵が好きじゃない。ああいう絵は本当に分かんない、いま主流の絵柄とか嫌いなんですよ。絵がダメだから中身も入ってこない。

ー最近の絵といっても色々あると思いますけど、具体的にどのような絵のどのようなところがダメだと思うのでしょうか。

樫尾 : なんていうか、僕はあの、「萌え」ってやつが大嫌いなんですよ。意味が分からない。媚びてるというか、なんというか、気持ちの悪い…。

ー「萌え」って久々に聞きました。半ば死語になっている気もしますが…。でも「萌え」的な要素なら、樫尾さんの好きなマンガ(手塚治虫など)にも充分にあるじゃないですか、萌えのルーツといっても良い。そこらへんの違いを教えてください。

樫尾 : あ、いや単純に絵柄の話です。いわゆる「萌え系」の絵柄がダメって話なので。
昔の萌えは当然良いです。素晴らしい。昭和なら吾妻ひでお、大正なら竹久夢二、江戸なら美人画。平成から今に至るまではダメです。これに関しては単なる好みなのでしょうがない。

ーそんな樫尾さんですが、自身も昔からマンガを描いているそう。マンガを描き始めたきっかけはなんですか?

樫尾 : うん、よくぞ聞いてくれました。あのね、僕マンガを発明したんですよ。マンガを1から作ったんです。

ーどういうことですか?

樫尾 : 発明したというよりは、発見したというべきかな。僕は幼稚園のころからテレビっ子で、マンガは読んでなかったんですけど、アニメを頻繁に観てたんです。アンパンマンに異様にハマってキャラ大全集買ったり、カートゥーンやキッズチャンネルを熱心に観たり。
そんなある日、アニメのDVDを再生していると、機器の調子が悪くなって画面が静止してしまったんです。正確にいうと、静止画が紙芝居みたいに切り替わって話が展開していくみたいになった。それを見たときに閃いたんです。
物語って静止画の連なりで表せるのでは?と。
そこから独自にマンガのようなものを描き始めました。

ーそれはどんなマンガですか?

樫尾 :『メガネくん』っていう、まあ本当に下らないマンガなんですけど。それを毎日幼稚園のときは描いてました。独自にやってたものですから、吹き出しもコマ割りも曖昧で。どちらかというと『鳥獣戯画』に近いですね。

インタビュー中に突然取り出したペンで、
震える手を押さえつけながら描いた絵。
『メガネくん』のキャラクターデザインとのこと。

ー小学生、中学生とマンガを描き続けていたそうですが。

樫尾 : はい、毎日連載してました。小1のときの学級新聞で将来の夢はマンガ家って描いてたんで、少なくともそれより前から描いてたかな。主に家族や友人に見せていたんですけど、「面白い」とか「もっと読みたい」とか言ってくれて、そういうのがモチベーションになってずっと描いてました。
ただ、トラブルもあって、中学のときも友人に頼まれてよくマンガを描いてたんですけど、授業中にクラスメートが回し読みするものだから、ある日先生に取り上げられたんです。しかもその回に限って酷い下ネタ、悪趣味なマンガで。問題になって親を呼ばれました。親にそれを読まれたのが本当に恥ずかしかった、でも、学校からの帰り道、母親が「描きたいものを描くのがいいよ。」って言ってくれたんです。周りの人の助けあってのマンガだったなぁと。今となっては感謝してますね。

ーマンガを描くうえで影響されたものは?

樫尾 : 藤子・F・不二雄は当然ルーツで、あとはさっきいったようにカートゥーンとかキッズチャンネル。日本語に翻訳されて日本に入ってくるようなアメリカのアニメって上質なものしかないんですよ。低質なものが淘汰されたうえで入ってきたものだから。藤子・F・不二雄同様、起承転結なんかのプロットがしっかりしていてメッセージ性もある。そういう作品からの影響は確実にありますね。

ー最近読んだマンガを教えてください。

樫尾 : 『ちびまる子ちゃん』の8巻。

ー音楽を作り始めたのはいつからですか?

樫尾 : 中学から。家にあったパソコンに入ってる楽曲制作ソフト、ガレージバンドを使って作ってました。ずっと存在は気になってはいたんだけど、難しそうなんで敬遠してたんです。でも、気まぐれでちょっといじってみた。
とりあえず最初はサンプル音源を並べるところから始めました。ドラムパターンやベースラインのサンプルが元々ガレージバンドに入っていて、それを組み合わせただけなんですけど、それだけのものを聴いて、ものすごい衝撃を受けました。自分の選択がこんなにカッコいい音楽を産み出したという事実が嬉しくて。ただ組み合わせただけで良いものができる音楽にも可能性を感じましたね。だから、いまだに嫌いな音楽はないんです。ドラム、ベース、ギター、ボーカルなんかの音が合わさって、ひとつの曲を形成している。これだけで僕には溜まらなく面白いものに思えてくる。
すっかり熱中してしまって、1日1枚アルバムを作っていた時期もありました。300枚以上は作ったと思います。

当時製作したCDのなかで
現存しているものの一部

ー作ったアルバムは誰かに聴かせたり自分で聴き返したりするんですか?

樫尾 : いや、聴き返したことないです。作ったらほったらかし。二度と聴きません。それよりも作ること自体に興味があったんです。誰に聴かせることもなく、どんどん部屋に自作のCDが積み上がっていきました。

ー影響を受けた音楽を教えてください。

樫尾 : なんだろう、小さい頃からジェームス・ブラウンとコブクロが好きだったんでその辺の影響はあるかもしれないです。でもそんなに自覚してない、モロに影響されてるみたいのはない気がします。

ー最近はどんな音楽を聴いていますか?

樫尾 : あー…。本当に今さらなんですけど、ビートルズの『Hey Jude』って何でこんな良い曲なんだろう…。ってずっと聴いてました。

ー学生時代の話を聞くと、すごく精力的に活動されていますよね。

樫尾 : そうですねぇ、でもそれくらいしかやってませんでしたよ。僕、勉強っていうのをしたことがないんです。テスト勉強なんてもっての他、予習も復習もしない。授業は居眠り、宿題は答えをうつすだけ。高校生活は本当に空白の3年間でした。友人もできず不登校で、近所のカクヤスでバイトして帰って寝るだけ。とにかく興味のあることしかできないんですよ。そのエネルギーがたまたまマンガや音楽に向かってしまったわけで(笑)。今後どうエネルギーが使われていくかは分かりませんね。

ー今までは樫尾さんのルーツを主に聞いてきましたが、これからは、樫尾さんの現在の活動や考えに迫っていきたいと思います。最近の活動内容について教えてください。

樫尾 : マンガとかはあんまり描けてないですね、たまに絵をボンヤリ描くくらいで。描くとしても何も考えてないです。テキトーに。

最近描いたという絵 タイトルは「シコーー」

ー音楽はどうですか?

樫尾 : ガレージバンドを使って、あえてチープな歌モノを作ろうと思って、一晩で10曲くらい作ってみたんですけど、あんまりうまくいかなくて頓挫しました。あとは、リズムボックス的なパターンに合わせたポエトリーリーディングとか作りましたね。

ー昔に比べるとずいぶん作品を作るペースが落ちている気がしますが、何か理由はあるのでしょうか?

樫尾 : いやぁ、創作意欲の減退かなぁ…。こういうの作りたいってのは色々浮かぶんですけど、どんどん体力がなくなっていきますね。でも、週2でフリーターやってるだけの癖に流石にそれは良くないし。難しい。
専門学校も一応美術系のところに進学したものの、何というか学校という制度に心底飽き飽きしてしまって、登校が苦痛になり製作もろくにせず中退しました。

ーバイトのない日は主に何をしているんですか?

樫尾 : 寝てるだけです。あとは、ライブハウス行って友人のバンド見たり、気まぐれに知らないバンドとギターでセッションしたりしてる。

ー趣味などはありますか?

樫尾 : YouTube見るくらいですね。最近この世にあるYoutube Shortsを全て見ました。何キロ画面をスクロールしたか気になります。
あ、でもコレクションとかはしてたな。できるだけ形と色と質感の良い究極の絹どうふ(トップバリュ)を探して、豆腐を集めてました。
数日後に腐って糸を引き始めたので捨てましたが。

ー作品はどういったタイミングで作りますか?

樫尾 : 思い出したように作品を作ります、主にコラージュとか。なんも考えずに何となくやってます。

30秒で作ったというデジタルコラージュ

ー最近作られた作品を並べて見ると、先ほど仰っていたようなメッセージ性はないですよね。

樫尾 : ないですね。あんま深く考えないでなんとなく面白い、みたいな。そういうのばっかり作ってます。ああ、確かに最近そういうのはないなぁ…。
最近のメッセージ性のあるものといったら、メッセージというかこれは啓蒙活動に近いんですけど。焚き火をしたんですよ。公園で。

ー焚き火ですか。

樫尾 : はい。現代社会を見てみると、人間が火に触れる機会って極端に少ないんですよね。コンロもIHだったりして、花火もBBQも都市部じゃ禁止。火を見たことがない子どももいるんじゃないですか? これはいけないですよ、むしろ文明の減退だと思っています。火は豊かさの象徴であって、自然物のようでありながら、歴史を省みると究極の人工物でもありえる。そんな火を、今都会の中心で起こすことに意味があると思ったんです。子どもの集まる都内の公園で、枝木を集めて火を付けました。我ながら驚くほど本格的に燃えましたね。

ーえ、許可はとったんですか?

樫尾 : いや、とってないです。警察も消防も来ました。厳重注意ってことで済みましたけど。

ーそれは壮絶ですね…。メッセージには納得ですが、そこまで過激な活動をしているとは知りませんでした。

樫尾 : まあ自己満足ですから。一歩間違えたら令和の江戸大火になるところでしたね (笑)。
まあ火なんて危ないですよ、とても現代人に扱える代物じゃありません。

ー言うことが二転三転しますね。

樫尾 : 会話なんてそんなもんですよ、会話とはこれ、即ちナンセンス文学です。アンチ会話を身をもって体現しているのがお分かりかな?
無意味なモンタージュをつなげて、つなげて…。

ー会話ではなくインタビューなんですが…。

樫尾 : あなたは鋭いですね。実に鋭い。

ー啓蒙活動をしているということで、今の世の中に対して何か思うところが色々あると思うのですが、話していただけますか?

樫尾 : これは常々思ってることなんだけど、みんな寝なさすぎだよね。睡眠時間が著しく短い。僕なんかは毎日12時間かそれ以上は眠らないと気が済まない質なんだけど、どうも世間はそうじゃないらしい。短く睡眠をとることを前提に社会が回ってるから生き辛くて仕方ないです。睡眠は生命の要ですよ。あなた、普段どのくらい寝てますか?

ー平日は4~6時間くらいです。休日は8時間くらい。

樫尾 : あぁ、短い短い。死にますよあなた。明日、いや、今日死にます。そんな寝不足じゃあいけません。僕みたいにたくさん眠るべきだ。

ー水木しげる先生もそのようなことを仰っていましたね。

樫尾 : はい、水木氏の意見には激しく同意の禿同鈴之助(はげどう すずのすけ)でございます。睡眠は至極大事。

ーなるほど、思わずフハッとさせられるお話でした。

樫尾 : そうでしょうそうでしょう。今すぐインタビューを放棄してこの場で寝たって良いんですよ別に。まあとりあえずこのインタビューが終わったら早く帰って寝ましょう。そのために次の質問をどうぞ。

ーこれからやりたいことについて聞かせてください。

樫尾 : それに関してはたくさんあります、マンガの長編も描きたいし、ライブもやりたい。ライブっていっても、メンバーが3人以上いるようなバンド形式じゃなくて、アコギの弾き語りでもない。なんか、リズムボックスを置いてリズムパターンを装置で反復させながら、それに合わせて僕がギターを弾く。ボーカルは、通りがかりのお爺さん(75才以上可)を壇上にあげて、即興で歌ってもらうとか。あとは映画とか撮りたいな。

ー映画というとかなり大がかりなイメージですが。

樫尾 : そう、キャストとか撮影方法はなんも決まってない。でもあらすじは大体決まってます。特別にここでそれとなく話してしまうと、
アリの群れがカマキリの亡骸を運んでいく様を、これでもかというほど叙情的に撮影することに執念を燃やす高校教師の物語、そんな彼の担当教科はコミュニケーション英語…。
あとは、突然に自我が芽生えたシンセサイザーと、小室哲哉の奇妙な友情を描いたドキュメンタリー映画とか。

ー将来の展望は何かありますか?

樫尾 : いやぁ…。とにかく働きたくないです、働かずに生きたい。やりたいことやって生きられたら最高ですけど自己プロデュースをする気もあんまりなくて…。これって万事休すですか、もしかすると。まあ、とにかく革命を起こします。起こしてやりますよ、頑張ろう!

ーぜひ頑張ってください。今後の活躍を期待しています。本日はインタビューを受けていただき、本当にありがとうございました。

樫尾 : いえいえ、こちらこそこんな朴念仁なんかにインタビューしてもらっちゃって。どうも今日はありがとうございました。


終始鷹揚とした様子で、自身の活動の経歴からプライベートなことまで話してくださった樫尾さん。これからの行く先は誰にも分からないが、夜明けはもう近いはずだ。
その自由な羽を広げ飛び立つ姿をぜひ目に焼き付けよう。
現代社会の特異点を照らす、たいへん有意義なインタビューになったことは間違いない。


(インタビュー、文、編集 : 能條良馬)

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