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【スウェーデンの中学生】 仕事体験の巻
スウェーデンでは日本の中学2年生にあたる8年生になると必ず10日間以上、すべての生徒に少なくとも10日間の職業体験「PRAO」が義務づけられている。このPRAO(実践的な職業生活指導)は、生徒が自分で職業体験の場を探してくる必要があり、将来の学業や職業について考えるきっかけを与える、貴重な経験を得る機会なのだ。「働く」というリアルな体験ができる上、うまくいけば夏のアルバイト先を見つける機会にも恵まれる可能性を含んでいる。
この制度を通じて、私の娘と息子がそれぞれ異なる経験をし、それぞれの成長を感じることができた。彼らがどのように挑戦したかを振り返ってみる。
自ら探す
まず生徒たちがやらなければならないことは、自分自身で体験先を探してくることである。保護者や先生はサポートはするが、基本的には自力で職場に連絡を取り、受け入れてもらう必要があるのだ。
娘の場合
娘が8年生だった時、この課題はすぐにクリアした。自分でメールを送ったり、実際に探し歩いたりして、早い段階で見つけてきた。幼い頃は恥ずかしがり屋だったので、逞しくなったなと成長を感じて感動したのを覚えている。
スーパーでの職場体験をした彼女は、商品の陳列や、商品に手が届かない高齢者の女性のお客さんに取ってあげたとか、そんな話をしてくれた。指導者となってくれた人が若い女性だったことも楽しかったことの一つだったようだ。様子を見に行きたかった私は、「買い物しに行ってもいい?」と聞いたら「だめ。」とあっさり言われたので、残念ながら見にいくのはやめた。
その後、自分で探すことを学んだ娘は、実際に9年生の夏休みには園芸店の水やりの仕事を経験し、高校生の現在はレストランでアルバイトをしているが、次のアルバイト先を見つけてきたところだ。稼いだお金は全て化粧品や洋服代で消える。
息子の場合
一方、現在8年生の息子はのんびりした性格のせいか、受け入れ先探しに出遅れたようで、断られたり、すでに他の生徒が決まっていたりと、苦戦している様子だった。
期限ギリギリで、結局私の友人が経営しているレストランで一週間、夫の職場(基本親の職場はダメなのだがまあ指導者を他の人にしてということで)で一週間体験することとなった。
レストランでの体験
パンク好きでキャラクターのデザインなども自ら行うオーナーで、店はヒップでポップな雰囲気である。
仕事としては、食器を片付けたり料理をテーブルに運んだりといった基本的な業務が中心だったが、特別だったのはスタッフ全員が日本人だったので“日本語が飛び交う環境”だったことだ。普段はスウェーデン語とたまに英語を使う環境にいる彼にとって、日本語で会話しなければいけない環境は新鮮で楽しかったようだ。「おっとっとっと」などのなんでもない言葉がツボのようであった。また日本食の賄い付きもたまらない特典だった。
私はそんな息子の様子が見たくてしょうがなかったのだが、娘には断られた経験があるため、念の為息子に見に行ってもいいか聞いてみた。
「いいよ。」
あら、いいんだ。良かった。じゃあいくわ〜♪
体験の最後の日、友人に付き合ってもらい、ランチをしながら息子の働く姿を見に行ってきたのだった。腰下の黒いエプロンに黒いハンチング帽をかぶった息子の姿は思った以上に様になっていて、結構決まっていた。
大学の物理学研究室での体験
実際にやったことと共に感想を聞かせて、と言ったら第一声が、
「Det var chill.」 (※Chill は英語から来ているので意味は同じで リラックスする、くつろぐなどの意味。)
そうか、くつろいでたのか。で?
「研究室の機材の説明を受けて、難しくてそんなにわからなかったけど、ちょっと勉強になった。あとははんだ付けをやり、ネジなどの整理をした。」
物理学の楽しさはあまり伝わらなかった印象。物理学の理解力が乏しい私の脳みそ受け継いだかと少し不安がよぎったが、物理学だけが人生ではない。
好きなこと、興味のあることを頑張ってもらいたいと思ったのである。
親としての気づき
なぜか私は娘のときには心配することはほとんどなかったが、息子のときには、「ちゃんとできるのかな?」と心配でハラハラしていた。小さい頃から甘えん坊で、探し物が出来ない息子だ。それでも、息子なりにしっかり働き、仕事を通じて新しい経験を得たようでほっとしたのだ。