【光る君へ】ドラマレビュー第27回公開されています
クロワッサンオンライン 連載中、大河ドラマ「光る君へ」ドラマレビュー第27回が7月20日に公開されております!いつもは公開当日にこちらのnoteもアップするのですが、なんと下書きのまま公開されていなかったという……痛恨のミス。本日7月26日に投稿となりました。毎週お読みくださる皆さんには、大変申し訳ないことをいたしました。
27回はこちらからお読みいただけます↓
ドラマでは、のちに紫式部となる、主人公まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)が石山寺で再会。がっつり関係を結び、まひろが子を授かる……という展開でした。
不義の子を身籠るという筋で思い浮かべたのは、ドラマレビューで触れたとおり『源氏物語』の藤壺中宮と女三宮です。もうひとり、今回連想したのは『源氏物語』第11帖「花散里」に登場する中川の女。
光源氏25歳。父・桐壺帝が崩御し後ろ盾をなくした彼は、朝廷で追い詰められています。あまり面白くない状況のなかで、妻として扱っているわけではない、たまーに通う程度の女性……花散里のところにでも行くか、と五月雨の止んだ隙に出かけることにしました。
花散里の屋敷までの道中、中川辺で小さいながらも趣のある家の前を通りかかると、琴の合奏が聞こえ、興味をそそるよい感じ。
あれ。この家、見覚えがあるな。ここの女、一度つきあったことがあるぞ。
そう思った光源氏は、歌をさらさらっと作って従者の惟光に託しました。
をちかへりぞ忍ばれぬぞほととぎす ほの語らひし宿の垣根に
(ほととぎすの声に、昔に立ち返り懐かしくなりましたよ。ほんの少しご縁があったこの宿なので)
突然の訪問に、女の家の中では女房たちがさわさわと囁き交わしているのが聞こえます。やがて、女主人からの返事なのか、女房が歌を寄越しました。
ほととぎす言問ふ声はそれなれど あなおぼつかな五月雨の空
(ほととぎすの声は聞こえますけれど、おいでになった方がどちら様なのか、どういった御用なのかわかりかねます。五月雨の空が辺りを曇らせているので)
こりゃわざと知らんふりをしているなと判断した惟光は「それは失礼しました、間違えたようですね」と出ていく……という筋立て。
中川の女が光源氏が政治的に落ち目であることを知っていたかどうかはわかりません。が、仮に父帝が生きていて強い立場であったとしても、一度抱いたことがあるからといって彼氏面してアポなしで来られてもねえ、というのはあるでしょう。こざっぱりした家で複数の女房たちがいて、優雅に琴を合奏しているので、女主人の面倒を見ている殿方は既にいるのかもしれませんし。
男性が幾人も妻と妾を持ち、通い婚だったこの時代。男性がいつの間にか来なくなってしまった、ふっつりと縁が切れてしまったという女性は数多くいたでしょう。そんな世の中で女にだけ貞節を求めるのはどうなんでしょうね……という紫式部の独り言のようなものを、中川の女のエピソードに感じるのです。
まひろは中川の女とは違い、夫・宣孝に生活の面倒を見てもらっている妾ではありますが、宣孝は他の女の存在を隠しもしません。当時は当たり前であったとしても、食わせてもらっていたら夫の不実を耐えるべきなのか。
今回の石山寺で抱き合うふたりは、そんなこたぁなかろうよというアンサーに思えました。
さて、7月27日土曜日は第28話の再放送。続きが楽しみですね。
(つづく)