【光る君へ】ドラマレビュー第39回～47回公開されています
クロワッサンオンライン 連載中、大河ドラマ「光る君へ」ドラマレビュー第39回～47回、公開されております。このnoteでのお知らせコラムがしばらく滞ってしまい、申し訳ございません。毎回お読みくださった方々にお詫び申し上げます。各レビューのリンクは文末に貼りましたので、お読みいただければ嬉しいです。
気づけば明日（2024年12月15日）が最終回……まひろたち平安時代の人々と共に駆け抜けた、あっと言う間の一年でした。愛おしい登場人物たちと、もうすぐお別れだなと思うと、とても寂しいのですが、最終回を待たずに終盤で亡くなった人物たちもいましたね。
39話ではまひろの弟・惟規（高杉真宙）が、40話では一条帝（塩野瑛久）が世を去るという、2話続けて悲しい展開……そしてふたりとも辞世の歌の場面が印象的でした。それぞれの歌についてはドラマレビュー内で詳しく書きました。
『光る君へ』に登場した人物の辞世の歌は他にあるのかなと色々調べてみたのですが、最期の歌としてはっきりと残っているものは少ないのです。28話（ドラマレビューはこちら）で皇后・定子（高畑充希）がお産の後、自分の死期を悟ったのか部屋の几帳に結び付けておいたという和歌三首がそれに当たるでしょうか。『光る君へ』では、一条帝（塩野瑛久）に宛てたものと思われる歌が高畑充希の美しい声によって詠まれました。
夜もすがら契りしことを忘れずば恋ひむ涙の色ぞゆかしき
（一晩中愛しあったことを忘れずにいてくださるなら、私を思いあなたは泣いてくださるでしょう。その涙の色を知りたいのです）
46話ではまひろが周明に「遠い昔、仲良くしていた友が松浦で亡くなったの。辞世の歌に松浦とあったから、見に行きたくて」という台詞がありました。24話（ドラマレビューはこちら）で、筑紫に下向したさわ（野村麻純）から送られた歌のことを辞世と表現しています。24話ドラマレビューでも書いたとおり、これはドラマオリジナルの設定。
実際には紫式部と、さわのモデルとなった筑紫の君がやり取りした歌で、辞世ではありません。
紫式部
あひみむと思ふ心は松浦なる鏡の神や空に見るらむ
（私があなたに逢いたいと思う心は、松浦の鏡の神様が空からご覧になっています）
これに応えての、筑紫の君の歌
行きめぐりあふを松浦の鏡には誰をかけつつ祈るかとしる
（巡り巡って、また逢えることを待っているのです。松浦（まつら）の鏡の神様は誰のことを願いかけて祈るのか、ご存じなのでしょう。あなたとの再会です）
離れて住む友達に、彼女が住む松浦を思いながら書き送った歌とそれへの返事ですね。
死を前にして辞世の歌や句、漢詩を遺す文化自体は奈良時代に編まれた日本最古の和歌集である『万葉集』に見られるのですが、遺すのが当たり前というくらいに大流行するのは、紫式部や藤原道長の生きた頃よりももっと後、戦乱の時代に突入して以降かと思います。
そうそう、本人がそのつもりであったかはともかく、紫式部の辞世とされている歌もあります。
誰か世にながらへて見る書きとめし跡は消えせぬ形見なれども
（書き留めたものは消えることのない形見ですが、この後いったい誰が生き永らえてこれを読んでくれるというのでしょう）
この歌だけ読むと『源氏物語』の作者が「この作品を後世の誰が読んでくれるのだろうか」と言っているようで、いかにも紫式部の辞世だと思いたくなるのですが、果たしてそうなのだろうかと首を傾げます。ちょっとできすぎ、と言いますか……。
この歌が記されている『新古今和歌集』では、この歌の詞書は
「上等門院小少将（藤原彰子の女房である小少将の君／ドラマでは福井夏）が亡くなり、彼女と交わした手紙を見て詠んだ」とあります。
小少将の君は紫式部と仲良しの同僚です。つまり歌が指す「書きとめし跡」は紫式部が書いた物語ではなく、小少将が遺した手紙……。
もちろん、紫式部が亡き友人の手紙に自分の書いた作品を重ねていた可能性もあるのですけれどね。
今に伝わる歌や記録から想像を膨らませるのは、大河ドラマと共通している楽しさかもしれません。
明日（2024年12月15日）は『光る君へ』最終回。主人公が紫式部と聞いたときから、一体どこまで描かれるのか、どう終わるのか全く予想がつかなかった物語がついに終わります。ドラマはまひろの最期まで描くのでしょうか、「誰が世にながらへて……」は辞世の歌として出てくるのかどうか。
ご一緒に見届けましょう！
（つづく）
39回～47回までのドラマレビューへのリンクはこちら↓
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