【光る君へ】ドラマレビュー第37回・38回公開されています
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クロワッサンオンライン連載光る君へドラマレビュー37回
クロワッサンオンライン連載光る君へドラマレビュー38回
前回のnoteでも触れたように(記事はこちら)『紫式部日記』には、紫式部の同僚である女房たちの姿がイキイキと描写されています。ドラマ37話の中宮・彰子と女房たちによる帝へのおみやげ……源氏物語豪華冊子づくりが映像化されてとても嬉しかったのですが、加えてこれもドラマになるかなあ、と胸高鳴らせて待っていた場面がありました。
土御門殿から、中宮が敦成親王とともに内裏に帰る日の日記。皆で御輿と牛車に乗り込むところです。※以下、( )内はドラマの配役
「中宮様(見上愛)の御輿には、宮の宣旨(小林きな子)が同乗する。糸毛の牛車には殿の奥様(倫子/黒木華)と若宮様を抱いた少輔の乳母が乗った。大納言の君(真下玲奈)と宰相の君(瀬戸さおり)が黄金づくりの牛車に、そのあとに続く牛車に小少将の君(福井夏)と宮の内侍。その次に馬中将の君(羽惟)と私が乗り込んだ……」
文章から想像するだけでも、とても煌びやかな牛車の列!そこに盛装した女房たちが乗る様子は、さぞ華麗だったことでしょう。ドラマで映像化するかも、でも無理かなあとワクワクハラハラしていたので、まひろの里帰り場面の後「内裏の藤壺に戻った」というナレーションと、既に藤壺で寛ぐ中宮様の姿に、つい「あああああああ、もう戻っちゃったか!」と落胆の声が出ました。いや、仕方ない。牛車の列はどうしてもなきゃいけない場面ではないしね。予算もあるしね(小声)と、自分を納得させたのでした。
ところで『紫式部日記』では、この帰りの牛車の中で小さなコトが起こります。紫式部と同じ車に乗り合わせた馬中将の君が
「わろき人と乗りたり」と思ひたりしこそ「あなことごとし」と……
(「嫌な人と乗ってしまったわ」という様子を見せたのです。「あらまあ、同じ車に乗ったくらいで大げさな」……)
職場で相性のよくない人というのはいるもの。でも、そうした人と同行することになったからといって態度に出すのは大人げないですよね。ここで馬中将がその様子を隠さなかったのは理由があるのでは、と思っています。
御輿、牛車に乗り込む順番を見ると、後宮の中での序列に従っていることがわかります。中宮が先頭、お付として同じ御輿に乗り込むのは女房のトップである宮の宣旨。その次が中宮の母である源倫子と、生まれたばかりの親王を抱いた女房。……そうした序列の筈なのに、たかが受領の娘である紫式部がなんで私と一緒に乗っているわけ!?と馬中将の君は思ったのでしょう。馬中将の君は醍醐天皇の孫である源明子(瀧内公美)の姪。高貴な血筋の自分と受領の子が同じ車に!という気持ちだったのではないでしょうか。
このあたり、平安時代の身分制度と個人の意識、現代と変わらない人間くささが感じられて、とても好きなのです。
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紫式部がヒロインの大河ドラマが制作されると聞いたとき『紫式部日記』に記された女房仲間たちとの会話、関係が映像化されるのだろうなと楽しみにしていました。『光る君へ』はまひろと道長の関係にフォーカスしている分、藤式部が局で一人で書く場面が多く、女房で仲良しの人物ができた気配はありません。その点を少し残念に思いつつ、大胆な歴史解釈によるストーリー展開を毎週思いっきり楽しんでいます。
38話で宮の宣旨(小林きな子)がまひろに声をかけ、彼女の境遇を察して話をするシーンは、これまで作品内ではさほど触れてこられなかった、女房仲間と紫式部の関係性を補填するようで嬉しくなりました。
小林きな子さんの演技もよかったですよねえ。
歴史上、紫式部がいつまで宮仕えしていたかははっきりしていないのですが、ドラマではできるだけ長く勤務して同僚たちとの場面を見せてくれないかなと期待しています。
(つづく)