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草の実のような随筆集

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週に一度程度更新するエッセイをまとめました。
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#わたしと海

桜散る海を

桜散る海を

桜の花びらのようだとも、ピアノ教室の先生の綺麗な爪のようだとも思った。

私の母、祖母の実家は海辺の小さな村落にある。すぐ近くに遠浅の砂浜が広がる、曾祖母の家に遊びに行くのが幼い頃の楽しみだった。
海風に吹き上げられた細かな砂が、そこかしこに散る土間でサンダルを履き、古い木造の家から浜辺に向かって駆け出してゆく。
浜までの家々の軒下には青い網が広げられ、そこには釜から茹で上がったばかりの真っ白なシ

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