見出し画像

Z世代が考える「お金の使い方」とは?

こんにちは!『日テレR&Dラボ』です。

前回の「SDGs」に続いて、今回も産業能率大学経営学部マーケティング学科『小々馬ゼミナール』(以下、小々馬ゼミと表記します)の皆さんに、お話を聞いてみました。

今回のテーマは「Z世代が考えるお金の使い方」
小々馬ゼミの皆さんが発表されたレポート『Z世代の観点からマーケターの使命を考え直してみました! 2021年に描くマーケティングのニューノーマル』~令和の所徳倍増計画~(以下、「令和の所徳倍増計画」と表記します)をもとに、その研究の背景や実際の大学生の意識について聞いていきます。

※以下リンク、『Z世代の観点からマーケターの使命を考え直してみました! 2021年に描くマーケティングのニューノーマル』~令和の所徳倍増計画~

こちらのレポートは、「お金」よりも「徳」=利他の思い(共感・応援・感謝)が循環できる世の中の為に何ができるのかという視点で書かれており、Z世代の理解につながるものなので、是非noteを読んでくださっている皆様もご覧いただければと思います。

今回お話を伺ったのは、
産業能率大学経営学部マーケティング学科:小々馬 敦 教授
小々馬ゼミ:梶原 優衣さん、池田 悠人さん、室井 鈴音さん、森 雅乃子さん
 
の5名の皆様です! 聞き手はR&Dラボの西 憲彦、松本 京子、加藤 友規です。

■Z世代が考える「お金」ではなく「徳」が循環する世の中って?「令和の所徳倍増計画」

産能大ヒアリング2

加藤(日テレ):皆さんこんにちは。
今日は小々馬ゼミで発表されたレポート「令和の所徳倍増計画」について、小々馬先生や大学生の皆さまの考えを聞きたいと思いますので、よろしくお願いします!

一同:よろしくお願いします!

加藤(日テレ):先ず、このタイトルがすごく面白いなと思ったのですが「令和の所徳倍増計画」について、考えられたきっかけを伺えますでしょうか。

小々馬教授(小々馬ゼミ):そうですね、今日は実際にこのレポートをプレゼンした4年生のゼミ生が、就活が重なって参加できなかったので…、私の方から何故「令和の所徳倍増計画」と言い出したか、背景を説明させていただきます。

私たちのゼミは、「マーケティングは世の中の人々の幸せにつながる」ことをテーマにして研究をしているのですが、時代時代で「幸せ」の概念が違ってきていることに着目しています。

最近は、1950年代60年代くらいの日本がとても元気だった頃が「昭和レトロ」として若い人も興味を持ち始めているので、そのあたりを探るところからスタートしました。

50年代60年代の日活や東宝の映画を見直したんですが、その頃の「幸せ」のイメージは、もともとは地方に居て、地方の中で窮屈に暮らしていた若者が、都会に来てその中で自由を味わうことが幸せ…みたいなことが語られているんですね。

ただ、都会に来るとそこは「お金」中心の経済社会で、地方の村社会での窮屈さから解放されるけれど一方で、孤独になっていく。その中で孤独を埋めてくれるのが、大衆文化であったりマスメディアだったということが良くわかりました。

そんな中、都会では隣に誰が住んでるかよく分からない状態で、それでも他者のまなざしをすごく意識して生きて行かなければならず、「他者承認」の意識が強くなっていく時代になり、「所有するモノやブランド」で自分のアイデンティティを表現する為に、モノがたくさん売れた時代があったのだと思います。

その傾向が、特に2011年の震災以降はガラッと変わって、「家族の絆」が大切になりましたし、「SNS」もその時代から利用が伸び、「不特定多数の中の自分」というよりは「自分がよく知っている人」の中で、自分の「自己肯定感」を上げたいという風に変わってきていると思います。

1960年から1970年の日本はオリンピックや万博があり、今の日本もオリンピックや万博を控えていて、時代が繰り返しているのですが、あの頃はみんなが消費することで経済が成長し、みんな豊かで幸せになれる、「消費が美徳」と言っていたんですね。

では、今の時代の「美徳」は何かと考えた時に、特に消費については「応援消費」とか「エシカル消費」とか、モノとお金を等価交換するのではない概念に変わってきている。

「今の時代の消費」を言葉にまとめてみると、まず「共感」があり、共感したモノや人に対して「応援」したくてそのためにお金を使う。そしてもうひとつ「感謝」という思いもあり、この「3つの思い」がぐるぐる回っているのではないかと感じます。

私たちがネットで行っている「いいね!」「私もやってみた」と投稿する行動を、このような思いの循環として捉えました。その3つの思いがうまく回っていく社会を思考したら、幸せが社会に増幅して行く新しい時代が描けるのではと考えてレポートにまとめました。

昔はお金の「所得」だったけど所得の「とく」が「徳」を積むの「徳」に変わっていくんじゃないか?ということで「所徳」と表現しました。

「贈与論」という学問もあって、所得について調べてみたのですが、実は「所徳」の概念が先にあり、徳をお金を介して贈与するのが「所得」と解説している文献を見つけて「やっぱり!」と合点が言ったんです。

加藤(日テレ):「消費」で見られるような新しい傾向は他にも見て取れるものなんでしょうか?

小々馬教授(小々馬ゼミ):「消費」の他に、「コミュニケーション」の概念も変わってきています。学生たちがよく言っているのは、SNSは「世間」メディアは「社会」という存在らしいです。

SNSは「よく知ってる人」「自分が信頼している人」とつながっているので、顔が見える人たちの集団なんですね。その中で「自分らしさ」というのを「寛容」してもらって、自分が共感したり、相手が共感してくれたり応援してくれたり、やっぱり最後に「ありがとう」という感謝を言うことで「自己肯定感」が上がっていく。

多様性、価値観の違いを尊重する社会では、自分らしさが寛容される「居心地の良いコミュニティ探し」が始まっていくでしょう。今は、企業⇔インフルエンサー⇔消費者というような階層的なコミュニケーションの流れが多いのですが、企業もインフルエンサーも消費者も「一緒のコミュニティ」の中で、相対の関係でなく共感する仲間として、ワイワイガヤガヤと新しいものを作っていく活動が始まりつつあり、今後伸びて行くのではと考えています。

■~Z世代の消費行動モデル~ キーワードは「ずっととときめいていたい」「幸福を高め合う」

産能大ヒアリング3

加藤(日テレ): 「令和の所徳倍増計画」のレポートでは2つの消費行動モデルが提示されていて、ずっとときめいていたい「EIEEM」モデルや、これからは幸福を高め合う消費行動「EIEEB」に移るのでは?という話もありました。

ずっとときめいていたい「EIEEM」モデル(「令和の所徳倍増計画」より)

画像1


幸福を高め合う消費行動「EIEEB」
「令和の所徳倍増計画」より)

画像2


加藤(日テレ): こちらのレポートは4年生がまとめたそうですが、今日参加されている3年生の皆さんはどう感じましたか?

梶原さん(小々馬ゼミ):私は、EIEEMの「理想の買い方」のページはすごく共感しました。
インスタグラムとかで発見して、そこからいいなって思って、だけどそれを買うのはまだ不安だから更にSNSで情報を調べて、そこで実感を得てから買うという流れは、私も一緒だなって思いました。
でも、化粧品などはこの流れで買う事が多いんですけど、食べ物とかは意外と直感で買ったりもしますね。

小々馬教授(小々馬ゼミ):少し補足しますと、このレポートはもともと、「こういう風に買ってますよ」ってことをまとめたのではなく。「私たちはこういう風に買いたいんです」というのをまとめて、マーケッターの人に伝えていくために作ったものなんですね。

ところが、読売広告さんに興味を持っていただいて実際に全世代で調査してみたら、意外とこの「EIEEM」に基づいて買っているカテゴリーが多かったという調査もあります。

池田さん(小々馬ゼミ):僕の買い方は、さきほどのEIEEMにすごく当てはまっていて、偶然見つけて、自分で選んで、自己肯定感を持ちながらその実感を持ってシェアみたいな感じです。服はそういう買い方をしていて、周りの人とそれいいね!みたいな感じで共感しあっています。

高いブランド物を買って自分が満足するっていう人は、僕の周りにはあんまりいないですね…。安いものでも、自分が共感できるかで選ぶことが多いと思います。

松本(日テレ):服は「自分に似合う」が大事だと思うのですが、その他の選ぶ際のポイントとして、「作り手の思い」「環境を大切にしているかどうか」ということを気にしたりしますか?

池田さん(小々馬ゼミ):動物の毛を使ってないというのは気にしたことはありますね。
あとは、リサイクルでつくる靴とかもあるんですけど、ちょっと値段が張ったとしても「徳」を積めるのかな?という感じで買おうと思ったことは何回かありますね。

室井さん(小々馬ゼミ):私はEIEEBの最後の「高め合う」というところに特に共感します。大学生は美容意識とかも高くなっていく時期で、化粧品は結構高額なのでやっぱりいいものを買いたいので、友達同士とかで「これが良かったよ」と会話する機会が増えていると思います。

InstagramのStoryでも「この商品ですごい髪がつやつやになったよ」とかの情報が流れてくる機会が多くて、「良かったよ」っていう思いをシェアするっていうのが増えてきたなって感じました。

私は洋服とバッグのブランドで好きなブランドがあるんですが、それは決して金額は高くないんですよ。

今まで、おしゃれのイメージって色を使いこなしている人っていう固定概念があったんですけど、私は黒とか白とかシンプルな色が好きで、シンプルでも自分を満足させるコーデが組めて、おしゃれに着こなせるということを発信しているEDTというブランドのことが、共感して好きになりました。
https://www.juglans.jp/view/page/edt

いわゆる高級なブランドのイメージ、というよりはそのデザイナーさんの「言葉」「思い」に共感して買うことが増えてきたなって感じてます。

西(日テレ):こういうブランドがあるんですね、知らなかった。我々の若い頃にも、モノトーンが流行った時代ありましたよね。

小々馬:ありましたね(笑)

西(日テレ):時代は巡るんですかね(笑)

森さん(小々馬ゼミ):私はInstagramで「〇〇のここがいい!」というタイトルが書いてあると、それをついつい見ていいなと思って、たまたま買い物に行ってブランド品コーナーとか歩いていて「あ、これはこの間めっちゃ良いって言ってた商品だ!」って思って、お店の人話を聞いて良さを理解した上で購入して、買ったことと友達に報告する…という一連の流れがついこの間もあり、これってまさにEIEEMだなと思いました(笑)

■「推し」にありがとうと伝えて応援したい!新しい「徳の循環」消費とは?

産能大ヒアリング4

加藤(日テレ):Z世代の消費で、「徳の循環」ってどんなイメージなのでしょうか?例えば「お金を寄付する」とかは当てはまるんですか?

小々馬教授(小々馬ゼミ):今の学生は、「お金じゃないよね」という感覚がすごく強いし、お金が手元にはあまり無いので「寄付」は気持ちがあってもなかなかできないんですね。

代わりに、時間もあるしパワーもあるので、何か良いことをしたらそれが「ポイント」などになっていて、それを企業が「お金に換算」してくれて「世の中に良いコト」に使ってもらえるとか、そういう循環が生み出せると良いと考えています。

1つの問題として「奨学金」を借りている学生がとても多くて、就職した後の返済も大変なので…。大学中でも何か自分が良いことをしたらポイントが付いて、奨学金の返済額がどんどん減っていくとか、そういうことができないか?と学生と話していたりします。

松本(日テレ):お金じゃないとすると、どんなことを「徳の循環」と皆さん捉えているのでしょうか?

小々馬教授(小々馬ゼミ):授業でアンケートをすると、シンプルに良かったものに対して「ありがとう」と感謝する場があることが心地良いみたいですね。

今までは、モノを買ってそれの報酬がお金として戻ることを、マーケティングも含めた経済システムでやっていて、だからお金が中心なんですが、お金ではなくて、何か言葉で「ありがとう」を伝えたいという意識がある。MAKUAKEの応援購入が増えているのもそうだと思います。

自分が良かったことを他の人にも体験してもらいたいので「投稿」をしようという思いも利他の精神で「徳」を回していくことですし、それをやることで「本当にありがとねって!」という感謝が戻ってきて、それで「自己肯定感」がすごく上がっていくんですね。これが、SDGs、Society5.0で、頻繁に唱えられている「ウエルビーイングを実現する」のイメージに近いです。

そういう循環のことを「徳の循環」というふうに言ってます。消費者にも、共感して応援して感謝したいという思いがあって、そういう「思い」が集まったところに本当にリアルなコミュニティが出来上がっていて、そこはすごく幸せな環境になっているということなんですよね。

倫理学の中の贈与論(ペイフォワード)というのが注目されていますよね。
他人にとっていいことをすれば、自分に返ってくる、「情けはひとのためならず」という考え方なんだと思いますが、Z世代はそういう利他の精神をすごく理解できるし体現している世代なんだと思います。

西(日テレ):なるほど、よくわかりました!
具体的に学生の皆さんにお聞きしたいのですが、感謝や応援の気持ちで自ら関わった人やコミュニティとかがあれば教えていただけますか?

梶原さん(小々馬ゼミ):私は「あいにゃん」さんというYouTuberの方を応援しています。
私はディズニーが大好きなんですけど、「あいにゃん」さんはディズニーのことをたくさんお話している方で、実際にディズニーで遭遇したことがあり、ちょっとだけお話したことがあるんです。

すごく良い方で、優しくて、やっぱり自分が欲しい情報とかを発信してたりしいるので、この方を応援したいしずっと頑張ってほしいなという思いが湧いてきました。
その方がずっとやりたかったアパレルブランドを立ち上げた時に、応援したいし、その方のだったら何か買っても良いなと思ったのでそのブランドの洋服を買いました

西(日テレ):その方と手が届くような、距離が近いってこともすごく大事なんですね。
我々の時代だと、いわゆるブランドって手が届かないところがステイタスだったんですが、距離感が大事なんですね。

小々馬さん(小々馬ゼミ):そういう高級ブランドも手が届くようになったら買いたいという思いはあるそうです。今は手が届かないから、高級なブランドを否定しているわけじゃなくて、今の私には似合わないので、スパッと思いを切るみたいですね。
僕たち世代だと、思いが切れないじゃないですか(笑)。何とかして手に入れようとしますけど。

西(日テレ):なるほど~、そういう違いもあるんですね。

池田(産能大):僕はサッカーが好きで横浜マリノスをずっと応援してるんですが、マリノスグッズは日頃の感謝のような感じで、毎年ユニフォームを買っています

今は、コロナウイルスの関係で試合ができなかったり、クラブもお金が無いので、ファンもTwitterでつながっている人も、マリノスを助けるためだったらこれぐらいのお金を出すよという人を見かけます。僕の親もマリノスが好きなんで、マリノスを応援するためにいろんなグッズを買っています。

室井さん(小々馬ゼミ):私は先ほどお話した、EDTというブランドなんですが、本来WEBショップで年に何回かポップアップ(期間限定ショップ)を開く時があって、そのポップアップに行った時に新作のズボンを見つけたんですけど、私にはちょっと高い値段だったんですね。

でも、インスタでデザイナーさんがそのズボンの説明をしているときに、「日本の工場で作ることへのこだわりや思い」について話をしていて、私もその思いを実感していたので、応援したくなってそのズボンを購入しました。

デザイナーさん本人が目の前にいるので、感謝を伝えるためにポップアップに行って買ったという意味もあります。

森さん(小々馬ゼミ):みんなが話したこと、それぞれ私も体験があるなって思いました。
乃木坂の白石麻衣さんをずっと推してたんですが、卒業コンサートもオンラインになってしまったので・・・届かないような芸能人の方ですが、感謝を少しでも伝えたいと思ってグッズやDVDを購入しました。

あと、野々村真さんの娘の香音ちゃんが、POPTEENモデルで頑張っている中で、自分のブランドを立ち上げたんですが、私は香音ちゃんが小さい時からすごく好きだったので、ブランドが立ち上がったときに、いいなと思うものやカラコンを買ったりして、少しでも貢献できるように応援したり、インスタライブとかでコメントしたりして感謝を伝えています。

西(日テレ):なるほど~、やはりこういう応援したいという消費行動はもう明確に行われてるんですね。

小々馬さん(小々馬ゼミ):そうですね、テレビの視聴でもわりと顕著に出ている気がします。学生にアンケートを取ると、テレビのドラマや番組を見て「推し」を「応援」したいという「応援」って言葉がすごく出てきます。
あとは「こんな面白い番組作ってくれてありがとうございます!」とか、結構「ありがとうございます!」って書く学生が多いんですよ。

ですから「ありがとうございます!」の伝わる先がもっと見えたら、番組とのエンゲージメントはもっと増えてく気がします。
それは、出演者さんだけではなくてスタッフさんでも構わないんです。番組を誰か作っているかも最近の学生たちはよく調べたりしますので、作り手とつながって「ありがとう」って言えることは、大切なんじゃないかなと思います。

加藤(日テレ):なるほど、テレビ番組もそういう「徳」の循環の仕組みが加わると、もっと応援したい対象になったり、コミュニティが生まれそうですね。


いかがでしたでしょうか?
小々馬ゼミの皆さまとは引き続きSDGsや生きがい、働きがいをテーマにZ世代の研究を進めて行いきますので、その結果もnoteでシェアしていきたいと思います。