明暗
あまりに星が綺麗だったので
今日は駐車場で寝ることにした
北斗七星がちょうど視界の右に位置している
僕はあんまり目が良くないから見えない星もあるけれどあれは北斗七星だ
反対向きって言っていいのかわからないけれど
柄杓からは水が溢れそうになっている
そのうち柄杓から溢れた水は僕の顔に少しかかった
なんか甘いな、そう思った
今ごろベランダのユーカリの鉢も喜んでいるかもしれない
星が移動するのを待っている間に僕はどうやら眠り込んでしまったらしい
今度は柄杓が逆向きに見える
柄杓の周りには
名前のよく分からない星が無数に散らばっている
あれを回収するのはとても骨が折れる作業だ
一つ一つ丁寧に
まるでテーブルに散らばったザラメを集めるみたいにして、集めていくしかない
背中にひんやりとした感触が伝わってくる
どこまでもアスファルトはアスファルトで、僕の存在はなかったことになりそうな気がする
僕のこの揺らぎがおさまりそうな気配は微塵も感じられない
僕はそのうちだんだんと起き上がるのが嫌になってくる
例によって地球からは一方的に引っ張られる
こちらの気もお構いなしに
星は綺麗だし、明日は何もないし、空気は澄んでいるし、明るい部屋が僕を待っている
まずまずな夜だ、そうだろ?
明るい星がいて暗い星がいる
明るい部屋は空っぽで
暗い部屋は今か今かと僕を待ち侘びている
行かなくちゃいけないと思う
そんな時、暗い部屋をノックする音が聞こえた
なんだかそれは遠い昔にあったおとぎ話にも似ていた
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