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清い身体

今回、訪れたのは鶯谷。

駅を降り、北口に出るとどんよりとしたラブホテル街が目に入ってくる。
夜になればネオンサインが煌めきを取り戻すのだろう。
煌めき、輝き、僕はトキメキ。割愛。

視界良好。全てラブホテル。
ビューティフルでワンダフル!
エロティックワールドへようこそ。
渦巻く愛の大名行列!

勘違いをしないでもらいたいのだが、私と友人はそのラブホテル街を抜けてある場所を目指していた。
真昼間だというのに、足早にホテルに入って行くミニスカな女性たち。
お仕事、おつかれさまです。

駅から徒歩5分。大通りを渡り、ようやく我々は今回の目的地にたどり着いた。

『サウナセンター』

自動ドアの両脇には松飾があって、なんだか正月っぽい。
年が明けてからはじめてのサウナだ。

久しぶりのこの感じ。少し緊張が私の背筋を走るが、無事に3時間コースで受付を済ませる。

8時間コースというのもあったが、サウナだけ楽しみたい我々には些か長すぎる。
壁には丁寧にも現在時刻を表す時計とは別に、8時間進められた時計が掛かっている。
とても親切な店だ。

一階の更衣室で館内着に着替え、タオルを持っていざ出陣。エレベーターで6階まで上がる。

老舗サウナとの声高きサウナセンター、建物内の感じと比べると浴場はわりに綺麗だ。
とてもよく手入れが行き届いている。

館内着を脱ぎ、タオル一枚、準備万端。
向かうところ敵なし。キックオフ。

まずはシャワーを浴びる。冷えた身体に心地よい。
それから、しっかりと身体を洗い、湯船へと浸かる。
42℃前後だろうかちょうど良い湯加減である。

程よく温まったところで、サウナ脇のラックからサウナマットを取り出し、水分補給をする。

ポットはなんと二つ。左のポットには、、水、右には、、麦茶、まさかのお塩まで置いてある。
グレイトフル!

そしてサウナへ
写真で見るより広めだ。天井は低い。
3段に分かれているため余計そう見えるのかもしれない。ざっと16人ぐらいは入れそうだが、ここはソーシャルディスタンス。
サウナとて例外ではない。

腰をかけ真正面にはサウナストーンが鉄柵にどっさり敷き詰められている。
まるで暖炉のような趣すら感じる厳格な佇まい。これが、老舗の風格なのか、、。

設置されたテレビには焚き火の映像が絶えず流れている。私はテレビなし派の党員なのだが、焚き火の映像となると悩んでしまう。

まぁ、まさに完璧な陣形というわけである。

1セット目

中段に座った我々、まずは軽くウォーミングアップ。
なんなく8minをやり過ごす。
水風呂に浸かり、休憩椅子でテレビに映る高校サッカーをボーッとみる。

最近の子はみんな髪型がおしゃれだ。
誰もアシンメトリーなどいない。
襟足はあくまでも短く、前髪は重め。
我々の時と真逆だ。

青森代表vs東京代表 4-0

2セット目

今回は上段を攻める。
熱い!とてつもなく熱い。95°くらいありそうだ。一気に汗が吹きだすのがわかる。
友人に後1分などと我慢をさせられつつも、6minを過ぎたあたりで私の喉はカラカラに乾いていた。
8min終了。

ふとさっきまでは気がつかなかったのだが、サウナ横にペンギン(置物)がいるのを見つける。その隣の部屋には南極ルームと書いてある。

ははん、なるほど。
水風呂もいいが、こちらもアリというわけか。
そういえば一緒にサウナから出たはずの友人の姿も見当たらない。あいつもさては南極ルームか。よし、いざ。

引き戸を勢いよく開けた瞬間の凍りつくよな寒波に私は『フゥーーーーーワァオ!!!!』と叫んでしまった。
まぁ友人の他に誰もいなしと思い、よーく見ると友人はおらず、知らないお兄さんが座っているではないか。私は急に恥ずかしくなり、ふーんなるほどねぇ、などとブツブツ言いつつ早々に南極を後にした。

水風呂(友人発見)、サッカー、休憩、その繰り返し。眼鏡をかけないと何も見えない私、、。

青森代表vs東京代表 4-0 点差変わらず。

3セット目とおまけの低温熟成

今回も上段に陣取る。
ああ、いいぞ、いいぞ、このままだといい調子だ。様子がいい。

『サウナマットの交換にあがりました〜』

私と友人は無言で顔を見合わせる、あと2分ほどで完ぺきな仕上がりだったのにと、、でもこればかりは致し方がない。
一度外に出された我々は、行き場を失った熱気を抱えたまま、まんじりともせず、ただ高校生たちの活躍を眺めていた。
滴る汗は我々とて同じだ!高校生諸君!最後の最後まで自分との闘いなのだ!
(その時の私の心の声をここに記しておく)

後半ロスタイムに突入。以前、点差変わらず。

無事にマット交換が終わり、そのまま私は中段に腰掛け、再び焚き火を見つめ始めた。冷やされなかった身体は中段でも充分じわじわと温まった。

わたしはその時、低温調理される鴨肉のことばかり考えていた。本当にそれだけかと言われると実は何故かねんりん家のあのクルクル回るバームクーヘンも頭の片隅にあった。
理由は私にもよくわからない。あのイメージなのだ。

8min 終了

4-0 青森代表が勝ったようだ。
私とて戦いを終えた今、とても清々しい気持ちだ。

それから私と友人は水風呂をこなし、休憩の椅子にもたれかかりながら時短要請のニュースをぼーっと眺めていた。
いいことばかりはありゃしない。
清志郎もそう歌っているではないか。

それから段々と我々の意識を遠くなり、ネオン街を行ったり来たり、この小さな迷宮を上から見るような感覚に陥った。
つまり、俗にいう整ったわけである。

意識を取り戻した我々は、混み合ってきた風呂場をそそくさと後にし、速やかに会計をし外へと出た。きっかり3時間。

曇天の鶯谷。火照った男たち。

帰りがてら駅前のささのやで中ジョッキビールと大量の焼き鳥を食べる。
全てタレ。レバー白ハツナンコツ砂肝
全て同じ味!まぁうまい!
言うことなし。後は寝るだけ、準備万端!

食欲、性欲、睡眠欲とよく言うが、整ってしまうと流石に性欲など湧いてこない。

目の前に広がるネオンの明かり、寄り添って歩くカッポー。

不思議となーんにも羨ましくもない。

こうして年明け最初のサウナは幕を閉じたのだった。

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