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日本経済:GDP改定値の真実

外資投資銀行出身の証券アナリストが解説!

サマリー

 12月8日、日本の7-9月期のGDPの第2次速報値が発表された。実質GDP成長率は、年率換算で前年比0.8%減となり、第1次速報段階の1.2%減に比べて、0.4%減少幅が縮小した。数字上は、上方修正ということになるが、その実態は、かなり厳しい内容であった。四半期ベースの前期比では、マイナス0.3%からマイナス0.2%に減少率が縮小しているが、その主な要因は、民間在庫投資の積み上げがマイナス0.1%からプラス0.1%に改定されたことによるものである。つまりは、在庫が積みあがっていることになり、次期の重荷になる可能性が高い。この積み上がりの解釈次第ではあるが、積極的に在庫投資をしたというよりは、むしろ、結果的に在庫が積みあがっていると見るべきだろう。民間消費支出が前期比0.3%増から0.1%増に0.2ポイント下方修正になっている点を考慮すると、消費水準が低かったために、在庫が滞留している可能性が高い。
 結論としては、上方修正とは言いながらも、実態的には、ポジティブな内容とは評価できないものであった。むしろ、今後の不安感を高める数字になっている。

GDP2次速報値概要


 表のように、7-9月期のGDP統計第2次速報値は、第1次速報値との比較において、実質GDP成長率は、マイナス圏ではあるものの、上方修正となっている。しかしながら、その改善要因は、主に在庫の積み増しによるものである。在庫が1次速報の際の前期比マイナス0.1%からプラス0.1%となったことで、GDPを押し上げた形になっている。輸出の伸びもあったが、全体へのインパクトは限定的であった。
 逆に、個人消費の伸び率が下方修正されている点も、非常に気になる。消費が低迷して、在庫が増えたということは、次の四半期において、生産活動の抑制が生じると考えるのが自然なことであろう。
 こうしてみると、実質GDP成長率が、上方修正といっても、内容的には積極的に評価できるものではないことが浮き彫りになっている。このまま推移していくと、本格的な経済の回復は見込めず、むしろ、もう一段の下振れリスクが高いとも言えよう。

コロナ禍からの回復は未達成

 日本政府の公式見解によれば、コロナ前の実質GDP水準は、2019年10-12月期が比較対象として相応しいとしているが、それは、明らかに間違っている。2019年10月には、消費税の増税があり、当該四半期の実質GDPは、一時的に落ち込んでいる。このタイミングをコロナ前の巡航速度とは、到底考えられない。私も含めて、一般的には、その前後の四半期を対象とするか、2019年度の実質GDP水準を比較対象とするのが普通である。
 そうした意味では、2022年7-9月期においても、年率換算の実質GDPは、546.8兆円にとどまっており、2019年度の550.1兆円には届いていない。この比較の方が、生活実感にも近いものと考えられる。つまり、日本経済は、いまだにコロナ禍からの回復を果たしていないといのが実態である。

今後の見通し

 日本経済については、需要不足、とりわけ個人消費の低迷が継続している。その点に関しては、今後も特段の改善要因が見当たらない。政府支出も、補正予算を計上したものの、執行が伴わない部分も多そうで、積極財政とも言えない状態になっている。むしろ、先々の増税議論を進めようとしている意図も伝わってくるため、消費意欲を抑制させる方向に働いてしまっている。
 また、円安についても、すでにピークを過ぎたとの見方もあり、実際、直近のピークと比べると、1割近い円高に傾いている。海外要因には、不透明感も強く、さらに円高となれば、むしろ、下振れリスクが懸念される。
 アメリカ経済は、現時点においては、むしろ過熱気味であるが、ヨーロッパは明らかに経済活動の水準が低下している。さらに、ゼロコロナ政策の影響が顕著な中国は、かなり深刻な経済の低迷が避けられないだろうと見られる。ゼロコロナ政策の一部緩和もあるようだが、全体としては、経済活動が戻っていないようである。不動産バブル崩壊の影響も広がっているようであり、中国が世界経済の牽引車になり得ないのは、明らかである。
 外需に期待ができない以上、日本の内需を拡大する経済政策を推進すべきであるのは明確だが、政府にその気がないように見えるのは、非常に残念なことである。財務省主導の経済政策では、日本経済は、本格的に立ち直ることができなくなる。その可能性が高まっていると考えておいた方が良いだろう。

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