カタール
中東の超富裕国
カタールワールドカップは、日本が決勝トーナメント進出を決めたこともあって、非常に盛り上がっている印象だ。そして、カタールという国についても、興味を持つ人が増えているのではないかと推測する。今回のワールドカップに投入された資金は、なんと2200憶ドル、日本円で約30兆円にも達するという。これは、前回のロシア大会の15倍以上の規模に相当する。オリンピックを遥かにしのぐ規模でしられているワールドカップとしても、前代未聞の金額である。
しかし、それを可能としたカタール経済については、あまり良く分からないという人も少なくない。そこで、今回は、カタール経済について、簡単にまとめておくことにした。
首長制(君主制)
カタールは、首長が元首として君臨する首長制の国家である。いわゆる民主主義国家とは一線を画す存在であるが、比較的穏健な国として知られている。議会に相当するような組織も、存在はしている。
その一方で、人権意識等については、西欧諸国や日本等とは、かなり違うのも事実である。今回のワールドカップでもその点が話題となっていたが、ここでは、経済面を中心に考察するため、詳しくは語らない。
カタールの近代の歴史についても、触れておこう。18世紀から19世紀にかけてクウェート、アラビア半島内陸部の部族がカタールに移住したことにより、現在のカタールの部族構成が成立した。その後、1916年に英国の保護下に入った。1968年、英国がスエズ以東から軍事撤退を行う旨宣言したことにより、1971年9月3日、カタールは独立を達成した。
天然ガスと原油
カタールは、確認埋蔵量が、世界全体の13%強を占める天然ガスの宝庫である。確認されている埋蔵量だけでも、可採年数は144年に達する。加えて、量的には多くないが、原油も産出する。まさにエネルギー資源大国となっており、カタールの経済力の裏付けとなっている。
カタールの天然ガスは、ロシア産天然ガスの供給が絞り込まれている現在、国際的にも非常に貴重な存在で、その影響力は、以前にも増して強くなっている。
国土と人口
カタールの国土面積は、11,427㎢で、秋田県より少し小さい程度になっている。また、人口は293万人となっていて、やはり小国ではある。ただ、人口のかなりの部分は、外国人が占めている。やや古いデータだが、2013年のデータでは、人口の87%が外国籍だった。現在も外国人労働者が多いため、人口の大半を外国籍の者が占めているものと推定される。
経済データ
カタールは、天然ガス等のエネルギー資源に恵まれていることもあって、経済的には、非常に裕福な国である。IMFによれば、2021年の名目GDP規模は、1795億ドル、一人当たり名目GDPは62000ドル程度と推定されている。一人当たりだと、日本の1.5倍程度の水準に達している。世界でも8位にランクされており、富裕国と位置付けられる。
その経済を支える天然ガスだが、2021年時点の輸出額で見ると、世界第5位の270憶ドルとなっている。ちなみに同年における世界第1位はロシアで、618億ドルであった。現在の天然ガス相場は、かなり上昇しているため、2022年のカタールの天然ガス輸出額は、かなり膨らんでいるものと考えられる。
日本もカタールから長期契約に基づいて、大量の天然ガスを輸入していたが、今回のエネルギー資源価格高騰の前に、その長期契約が期限切れとなり、再契約しないまま、現在に至っている。これは、非常にタイミングが悪い話で、再契約交渉の際、カタール側の提示価格が高いという判断であったが、現在となっては、契約しておくべきだったという意見も多い。今となっては、まさに後の祭りではある。
カタール政府は、天然ガスや原油等の資源収入が旺盛であるため、税率が非常に低い。法人税率は10%、個人所得税率は0%(非課税)となっている。
ワールドカップの準備に30兆円
カタールは、2010年に開催が決定してから、開催までの12年間に、およそ2200億ドル、日本円で30兆円程度の資金を準備に投下したとされている。
交通インフラを始め、多くの社会インフラを作り変えたとも言われており、2017年にはカタール政府の要人が、一週間にインフラ整備に5億ドルを支出していると発言していたほどである。
また、美しく整った7か所のサッカースタジアムの建設にも、100億ドル近い資金を投入したとされている。酷暑の中でもスタジアム全体が、涼しい温度を保つような空調システムの導入をするなど、これまでのサッカースタジアムの常識を覆すような豪華な作りになっているという。
ワールドカップを契機に、国造りを行ったと評価されるのかもしれない。