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インバウンド復活

訪日客、急回復へ

2022年12月の訪日客は137万人まで戻った

出所:日本政府観光局

 コロナ禍で最も影響を受けたビジネスの一つが、観光・旅行業界である。日本も一時期は、実質的鎖国に近い状態になり、その後も様々なレベルの水際対策が実施され、海外からの訪日客は、極めて少ない状況が2年以上、継続してきた。
 2020年2月以降、インバウンド需要は激減し、その市場規模は、ほぼゼロに近い水準にまで落ち込んだ。ようやく2022年に入って、徐々に回復軌道に乗り始め、12月の訪日客数は、コロナ前のピーク時の半分に近い水準まで急回復を遂げている。12月の訪日客数は、137万人ということで、久々に100万人の大台に乗せている。
 コロナによる影響は、今後も低下していくものと考えられ、マスクの着用等についても、世界の多くの国々と同水準になっていくものと予想されている。現時点では、コロナによる影響は小さくないが、さほど遠くない将来において、コロナ禍は、過去の記憶となっていくだろう。

日本は観光先として魅力度が高い

 新型コロナパンデミック以前の日本は、海外からの観光客の受け入れを積極化していた。将来の大きな成長可能性を秘めた分野だと位置づけられ、積極的なアピールもされていたし、実際、訪日客数は、右肩上がりで推移していた。
 その流れが大きく変えられてしまったコロナ禍ではあったが、ようやくその影響も和らぎ、日本を訪問する人々が急増しているということになる。
 日本国内の人の動きも活発化しているが、国境を越えた人の行き来も急速に回復しつつある。訪日客数が、100万人を超えてきたことは、その流れを象徴する出来事でもあった。また、137万人という数字は、通過点に過ぎないとも言え、まだまだ拡大余地は大きいものと考えられる。
 その根拠としては、観光資源豊富さが指摘される。日本には、長い歴史を背景とした、隠れた観光資源が数多く存在しており、インバウンド受け入れという観点からは、未開発な観光地も残っている。

出所:世界経済フォーラム(WEF)2021年調査

 また、そもそも、安心、安全、清潔という点で、日本への評価は、国際的にも定評がある。実際、観光地としての魅力度については、各種調査でも、トップレベルに評価されている。
 ダボス会議で有名な、世界経済フォーラムが実施した、世界の国々の観光魅力度ランキングにおいて、日本は、表のように堂々の1位という評価になっている。総合的な魅力度が高いということであり、人の往来が自由になりつつある現在、いよいよ本格的な需要が顕在化しつつあると考えられよう。

今後の日本にとっては経済成長の柱の一つ

 インバウンド需要は、単に日本を訪問する人数が増加することだけではない。日本を訪問した人々は、旺盛な消費活動を行い、経済成長に貢献することになる。観光・ビジネス両面で、日本の経済成長に多大なる貢献が期待される。
 日本は、基本的に価格が割安なモノも多く、サービスレベルが相対的には高いこともあって、海外からの訪問者にとっては、消費意欲が刺激される面がある。
 政府の統計データによれば、コロナ前の2019年の訪日客数は約3,188万人で、一人当たりの消費額は16万円弱であったとされている。年間5兆円程度のインバウンド消費があった計算になる。そして、コロナ禍において、その消費額は、一旦、ほぼゼロになってしまった。
 現在の為替レートが円安に傾いていることもあり、仮に一人当たりの消費額が20万円程度まで増加すれば、単純計算ではあるが、年間3,000万人で6兆円、5,000万人であれば10兆円といった巨大な市場が生まれることが想定される。一気にそういった人数を受け入れることが難しいとしても、3年から5年程度をかけて、しっかりとした受け入れ態勢を整えれば、決して不可能な数字ではないと考えられる。
 日本の名目GDPは550兆円程度だが、今後の成長の一翼を担う存在として、インバウンド消費は位置付けられよう。もちろん、インバウンド消費の伸びだけで、日本経済が力強く成長するかと言えば、十分ではないかもしれないが、マクロ的視点で見ても、重要な位置付けになることは間違いない。

国別の訪日客数

出所:日本政府観光局

 表の通り、直近12月の訪問者数でいえば、韓国の伸びが突出している。韓国の観光業界で、訪日キャンペーン商品を拡販したことと、2019年の水準自体が低かったこともあって、単月ながら、2.8倍増となっている。12月の訪日客数全体の約3分の1は、韓国からであった。
 逆に、中国からの訪日客数は、激減している。単月では95%減、通年では98%減という大きな減少となっている。
 それ以外のアジア諸国からの訪日客数は、全般的に戻ってきている。通年では、まだ低水準にとどまっているが、全体的に急ピッチで戻ってきている印象である。
 オーストラリア、アメリカ、ヨーロッパからの訪日客も、かなり戻ってきている。ロシアは、ウクライナ侵攻の影響もあって、2019年対比で12月単月が8割減、通年が9割減となっている。やはり、世界の分断化の流れの影響は、ここでも見られる。
 中国、ロシアといった独裁国家との交流は、民間ベースでも低調に推移しており、今後も影響が出てくる可能性は考えておいた方が良いだろう。
 中国からの入国者数は、春節の影響もあって、ある程度回復するものと推定されるが、それでも、全体をけん引するような勢いはないだろう。もちろん、観光客が日本を訪問して、消費を積極化すること自体は、歓迎すべきことではあるが、長期的に安定的な関係性が維持できるか否かは、不透明なところである。
 仮に中国による台湾侵攻が現実のものとなれば、観光客を受け入れることも、難しくなるであろう。軍事行動の最中はもちろんのこと、それが収まったとしても、以前同様の活発な交流が再開できるかどうかは、疑問である。中国に関しては、一旦、訪日客が回復しても、継続可能性にリスクが存在すると認識すべきであろう。
 中国以外の国・地域からの訪日客が、長期的に増加していくように、観光地としての魅力度をさらに高め、世界にアピールを続けていくことが重要だと、私は考えている。

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