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韓国経済:2023年は試練の年か

主要投資銀行の経済成長率見通しは低水準

サマリー

 2023年の韓国経済に対して、厳しい見方が広がっているようだ。中央日報の記事によれば、11月末時点で、2023年の韓国実質GDP成長率に関する世界の主要金融機関の予想値は、平均すると、1.1%になるという。これは、非常に低水準であって、2020年のコロナ禍によるマイナス成長から一旦は回復した韓国経済が、ここに来て再び失速している状況を反映しているようである。ただし、この平均値には、野村證券によるマイナス1.3%という予想値が影響していることには注意が必要である。野村證券の数値を除くと、平均1.4%程度となる。野村證券の予想の前提状況など詳細を知らないため、断言はできないが、コンセンサス予想としては、1%台の前半であるとは言えよう。
 いずれにしても、2023年が、韓国経済にとっては、試練の年となると予想されていることは間違いない。
金融機関名


最近の状況

 韓国の経済統計データについては、最近、あまり良い数字が出ていないのは事実である。韓国経済は、輸出主導型だと言われて久しいが、確かに輸出額などもここ数か月は、前年対比でマイナス成長となっている。10月の輸出額は前年比5.7%減、11月は前年比14.0%減となり、大幅な減少を記録した。実は、今年はそれでも過去最高の6800億ドルという輸出額になると見られているが、来年については、厳しいとの見方が台頭している。
 エネルギー資源の大半を輸入に頼る韓国経済は、御多分に漏れず、インフレ率が高止まりしている。7-9月期の消費者物価指数は、5.9%上昇したが、物価上昇に賃金上昇が追い付かず、実質賃金は、同期間において、5.0%も減少している。当然、内需には悪影響が出ており、来年は、内需・外需とも期待できないとの意見も見られる。

貿易依存度が高い経済構造

 韓国経済の特徴の一つとして、貿易依存度が相対的に高い水準であることが指摘される。韓国の貿易依存度は、2021年時点で68%だったが、日本は30%程度であり、韓国の貿易立国振りが伺える数字となっている。
 とりわけ、中国との経済的な関係性は強いため、来年以降も中国との取引が、同じようなペースで継続できるのかどうかという点が、非常に強く影響するものと見られる。長期的には、世界の分断化が進む中で、韓国の立ち位置は、やや微妙な面が目立っている。

2023年の世界経済展望

 2023年は、世界的に経済成長率が鈍化するものと見られる。まず、韓国にも影響が大きい中国だが、長らく続けてきたゼロコロナ政策の影響は甚大で、ようやくここにきて緩和策が取られているが、その影響から早期に完全脱却できるかどうかは、不透明感が残る。
 急激な規制緩和によって、感染者が急増し、医療システムが崩壊の危機にさらされるとの見方もあるため、再度、規制を強化するリスクも指摘されている。現段階では、中国経済がV字回復するという見方をするのは、時期尚早である。しばらくは、事態の推移を注視したい。
 欧州経済の状況は、深刻であり、早期の回復シナリオは描けていない。一番、問題なのは、エネルギー問題が解決できていないことである。現状は、エネルギー消費を落とすために、経済活動を犠牲にしている。ロシアのウクライナ戦争が終わらない限り、エネルギー不足が根本的に解消することはないと見られる。そして、ウクライナにおける戦争が、短期間で終わるという見通しはないのが実情である。
 アメリカ経済については、強弱感が分かれている。私自身は、ソフトランディングを期待しているが、FRBの引き締め姿勢が、どこまで続くのか、そしてピーク時の政策金利は、どの程度で収まるのかという点が、現時点では判然としない。
 12月14日にFOMCの結果が発表される。そして、その直後にパウエル議長の会見が予定されているが、その内容、トーンが注目されている。ここを通過しないと、アメリカ経済の不透明感は払しょくできないだろう。また、その先についても、常に金融政策と景気の実態の整合性が問われることになるであろう。まだ、深刻な不況になるリスクが完全にはなくなったわけではない。
 まとめると、2023年の世界経済は、減速感が明らかになり、下振れリスクも意識せざるを得ない状況が想定される。韓国経済にとっては、輸出などの面で、非常に厳しい環境と言える。ただし、世界的な大不況を想定するほどの状況ではない。

まとめ

 現時点においては、1997年のIMF危機に匹敵するような、経済危機とは言えないだろうというのが結論だ。かなり極端な意見を表明する人も少なからず存在しているが、感情的なものに影響されているのかもしれない。あまりそうした意見に誘導されて、韓国経済の現実を無視したような極論を信じ込むのは、間違いの元になるので気を付けたいものだと思う。
 ただし、決して油断することなく、きちんと監視しておく必要はあるとも考えている。韓国経済が、本格的な危機に陥るようなことがあれば、日本経済及び周辺国の経済にも少なからず影響があるものと考えられるからである。1997年当時よりは、世界経済への影響度は、上がってきていることも認識しておくべきであろう。また、経済面にとどまらず、地政学的リスクを高める可能性もあるので、そうした意味でも要注意ではある。

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