ロシアは崩壊し中国の属国に成り下がるのか
ウクライナ戦争に敗北したらロシアはどうなる?
ロシア連邦は崩壊の可能性がある
旧ソ連が急激に崩壊に向かった歴史を振り返れば、今後、ロシア連邦が現状を維持できなくても不思議ではない。もちろん、何事もなく、国家崩壊の危機に至るわけではない。ウクライナ戦争の行方次第で、その可能性が否定できないということだ。
具体的に言えば、ウクライナで敗北し、ロシアが何ら領土的成果を上げることなく撤退するというような事態に至った場合、現在のロシア連邦を維持できなくなり、事実上、国家が分裂するような状況が考えられるということである。
ロシアは、これまで長年、プーチン大統領を中心とした事実上の独裁体制で統治されてきた。プーチン大統領は、絶対的な権力者であり、その意向に表立って逆らう人物は、ロシア国内では非常に少ない。しかしながら、その権力基盤は、盤石というわけでもない。
ウクライナ戦争に敗北するような状況になれば、権力基盤自体が、失われる可能性も指摘される。
ロシアは以前から内部問題を抱えている
まず、ロシア政府の内政について見てみよう。ロシアでは、プーチン政権によって長期化された政権が続いている。その一方で、政治的な不安定要因が存在する。
一つは、ロシアの経済についてである。ロシア経済は、主要な収入源がエネルギー産業に偏っており、国際的な状況の変化によって大きな影響を受けやすい。例えば、新型コロナウイルスの影響により、2020年には、石油価格が下落し、ロシアの財政が大きく悪化した。2020年、ロシアのGDPは前年比で3.1%減少し、2014年以来初めてのマイナス成長となった。
前年の反動もあって、2021年は、実質GDP成長率がプラス1.3%となり、プラス成長に回帰した。しかしながら、2022年、ウクライナ戦争に伴う民主主義陣営(西側諸国)からの経済制裁があって、信頼性が高くないとされる公式統計ベースでも、実質GDP成長率は、マイナス2.1%となり、再びマイナス成長に陥った。
石油や天然ガスなどの資源エネルギー依存度が高いことは、ロシアの強みであると同時に、経済的なリスク要因でもある。
さらに、ロシア政府は、人権問題においても、強い批判を受けている。ロシアでは、メディアの規制が強まり、表現の自由が制限されている。2019年には、Telegramが禁止されるなど、インターネット利用に関する自由も制限されている(実際には、禁止後もTelegramを使っている人は多い)。また、反政府的な意見を持つ人々や野党活動家などが、拘束や抑圧を受けることも少なくない。世界の人権団体等は、ロシア政府が自由で公正な選挙を実施していないとして、継続的に強く批判している。
ロシアは「脱ドル・ユーロ」の動きを見せる
図に示すように、ロシアは、2022年中に、輸出決済における通貨別構成比を大きく変化させた。ウクライナ侵攻以前は、ドルとユーロで、全体の9割近くを占めていたが、2022年9月時点では、5割程度まで低下させている。その分、中国の人民元と自国通貨ルーブル建ての比率が高まっている。中国との政治・経済両面の関係性は、元々強いものがあったが、ウクライナ侵攻後は、輸出決済についても、人民元建ての比率を高めている。経済制裁の一環として、SWIFTからのロシア大手行の排除が実施されたが、その結果、資金決済方法として人民元も活用し、中国の主導する外国送金の仕組みを利用する比率が高まっているものと推定される。中国としては、人民元を国際決済通貨として普及させたいという思惑があり、両国の利害が一致した面もある。
貿易決済通貨の面でも、世界の分断化は進んでいると考えるべきであろう。ロシアだけでなく、世界的に人民元を使った決済の比率が、どの程度になるのかという点は、引き続き注目される。
ロシアが敗北した場合の影響
ウクライナ戦争において、ロシアが敗北した場合、その結果としてロシアの内部的な政治的・社会的不安定化が進むことが予想される。これは、ロシア政府がウクライナ侵攻を行っていることが国民によって全面的には支持されておらず、国内の政治的反発が増加する可能性があるためである。
ロシアにおいては、ウクライナ侵攻以前から政治的不安定化が進行しており、それが加速することで、ロシアの政治システムに深刻な影響を与える可能性がある。そのため、ウクライナ戦争で敗北した場合、内政的な混乱がさらに進み、国家の強さと統一性が低下すると考えられる。
このような内政的な混乱の進展は、ロシアの地域的分断を引き起こす可能性がある。現在、ロシアは大きな国土面積を占める連邦制国家であり、内部には多数の共和国等の行政単位が存在している。しかし、内政的な混乱が続くことで、これらの地域が独立を求めるようになる可能性がある。その場合、ロシアは分裂して、国家の強さが、政治、経済両面で低下することが予想される。もちろん、軍事力も例外ではない。
このような分裂の結果、中国がロシアの一部を支配することが可能になるという見方がある。中国は、ロシアの資源や技術力、地政学的な影響力を利用し、影響力を強めることができるとされている。特に、ロシアの東部地域は中国との国境に接しており、ロシアが分裂することで、中国はその地域を支配することができる可能性が指摘される。
また、ロシアと中国は国際的な関係が密接であり、軍事的・経済的な協力も進めている。そのため、ロシアが分裂して弱体化した場合、中国はロシアに対してより強い影響力を持つことができる可能性がある。部分的ではなく、ロシアという国家が、事実上、中国の属国化する可能性すら否定できない。
ただし、この予想は、多くの仮定に基づいており、ロシアや中国の国内政治状況の変化、国際情勢の変化によって大きく変わる可能性がある。
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