Omniverseのご紹介
業務でOmniverseに携わることがありました。
まだまだOmniverseの技術者が少ないということで、Omniverseに興味をもってもらい、Omniverse技術者のとっかかりとなることを期待して、紹介記事を記載します。
本記事は、紹介記事の前編として、Omniverseの概要を紹介します。
Omniverseの概要
NVIDIA Omniverseは、3Dコンテンツ制作者や開発者が仮想環境で共同作業できるように設計されたオープンプラットフォームです。
このプラットフォームは、物理演算に基づくシミュレーション、リアリスティックな3Dモデル、AIなどを活用して大規模でリアルな仮想世界を作成でき、異なるアプリケーション間でのコラボレーションが可能です。
Omniverseの主な特徴
Omniverseには、以下のような主な機能があります。
リアルタイムレンダリング
物理シミュレーション
AI機能
共同作業機能
3Dコンテンツの互換性と相互運用性の向上
拡張性
各機能の概要は下記のとおり。
リアルタイムレンダリング
リアルタイムレイトレーシング(NVIDIAのRTXレンダリング技術)を使用して、リアルタイムで非常にリアルなレンダリングを実現しています。これは、デザインの反復を迅速に行ったり、リアルタイムでのフィードバックを得たりするのに非常に有用です。
リアルタイムレイトレーシング参考URL)
『リアルタイムレイトレーシング』って結局何なの?分かりやすく纏めてみた (endstart.net)
物理シミュレーション
現実世界の物理法則に基づいた動きや相互作用を再現するためのリアルタイムの物理シミュレーションが提供されています。
これにより、ユーザーは自然な動きを持つリアリスティックなシーンを作成することができます。
下記は、ロケットがキューブに衝突し、重力、摩擦などの物理現象を考慮してキューブが拡散しているサンプルシミュレーションです。
AI機能
Omniverseは、AIを活用してさまざまなタスクを自動化します。
例えば、アニメーションの生成やシーンの理解などをAIで行うことができます。
これにより、ユーザーはより効率的に作業を行うことができ、よりクリエイティブな作業に集中することが可能になります。
下記は、右側の人が踊っている動画をAIを活用してスケルタルの動きを推定し、左側のスケルタルに反映しています。
ポーズ トラッカー — Omniverse Extensions 最新ドキュメント (nvidia.com)
共同作業機能
Omniverse Nucleusに接続することで、複数のユーザーが同時に同じシーンで作業することが可能です。これにより、メンバー間でのコラボレーションが容易になり、効率性と品質の向上が見込めます。
下記は、左側がUsd Composerで右側がIsaac Simです。同じシーンをそれぞれで開いており、一方のオブジェクトを変更するともう一方のアプリにもリアルタイムで反映されています。
OmniLive — Omniverse Extensions latest documentation (nvidia.com)
3Dコンテンツの互換性と相互運用性の向上
Omniverseは、PixarのUniversal Scene Description (USD)をサポートしています。
USDは、3Dシーンデータを効率的に表現し、複数のアプリケーション間で共有するための業界標準のフォーマットです。
これにより、異なる3Dツール間でのデータの互換性と相互運用性が大幅に向上します。
拡張性
Omniverse Kit SDK(後述)を使用することで、Omniverseプラットフォームを活用して、自分たちのニーズに合わせたカスタムアプリケーションやツールを開発することができます。
下記は、USD ComposerやIsaac Sim等で見られる、Extensionというウインドウです。左側に様々な機能(拡張機能)がリストされており、ユーザーは、これらから必要な機能を選択して使用できます。また、リストの上部にTHIRD PARTYとあるように自分たちで作成した機能をExtensionとして登録することも可能です。
Omniverseのアーキテクチャ
Omniverseのアーキテクチャは、以下の主要なコンポーネントで構成されています。
Connect
Nucleus
Kit
Simulation
RTX Renderer
各コンポーネントの概要は下記のとおり。
Omniverse Connect
さまざまなコンテンツ作成ツールとOmniverseを接続するためのライブラリです。これにより、ユーザーは他のツールとOmniverseのデータを相互に取り込むことができます。
ただし、Connectによって、サポート範囲があるため、使用しているオブジェクトなどによって、調整が必要になる場合があります。
USD Connections の概要 — Omniverse Connect 最新ドキュメンタリー (nvidia.com)
Omniverse Nucleus
Omniversのデータベースであり、ユーザーが共同作業を行うためのサーバー機能を提供します。Nucleusは、異なるアプリケーションやユーザー間でのデータの共有と同期を可能にします。
Nucleus Overview — Omniverse Nucleus latest documentation (nvidia.com)
Omniverse Kit
Omniverseの基盤となるフレームワークであり、カスタムアプリケーションやツールを開発するためのSDKです。また、次項のOmniverse RTX Renderer、Omniverseシミュレーションなどのコア技術も統合されており、これにより、開発者はOmniverseプラットフォームを活用して、自分たちのニーズに合わせたソリューションを作成することができます。
さらに、Omniverse Kitは、すべてが拡張機能であることを目指し、高度にモジュール化された設計を採用しているため、Omniverse Kitで提供されている各拡張機能がモジュールのように追加や削除が可能となっています。
アーキテクチャ — Omniverse Kit 106.0.1 ドキュメント (nvidia.com)
これにより、開発者は必要な機能を選択し、それらを組み合わせて新たなアプリケーションを構築することが可能です。また、必要に応じて独自の拡張機能を開発し、それを組み込むことも可能です。
例えば、USD ComposerやIsaac SimもOmniverse Kitの上に構築されたアプリケーションで、それぞれが特定の目的を達成するための一連の拡張機能を組み合わせています。
また、Isaac Simで独自の機能を使用したい場合は、独自の拡張機能を作成して、組み込むことができます。
図にすると下記のようなイメージです。
Omniverse RTX Renderer
NVIDIA RTX GPU 向けに構築された、Omniverseの高品質なリアルタイムレンダリングを提供するコンポーネントです。NVIDIAのRTXレンダリング技術を活用して、リアルタイムでの高品質なレンダリングを可能にします。
Omniverse RTX レンダラー — Omniverse マテリアルとレンダリングの最新ドキュメント (nvidia.com)
Omniverse Simulation
物理シミュレーション、AI、アニメーション、行動制御など、シミュレーションに特化したコンポーネントです。リアルタイムで高精度なシミュレーションを可能にします。Omniverse Kitの一部として統合されているため、開発者は高度なシミュレーション機能を持つアプリケーションを効率的に作成することができます。
Omniverseアプリケーション
Omniverseには、さまざまなアプリケーションがあります。
全てご紹介することは困難ですので、一例としてOmniverseの概要項で使用したアプリケーションをご紹介します。
USD Composer
3D環境作成向けのOmniverseアプリです。
大規模なシーンの組み立て、ライティング、シミュレーション、レンダリングが可能で、リアルな環境の作成が可能です。
USD Composer の概要 — Omniverse USD Composer 最新ドキュメント (nvidia.com)
Isaac Sim
ロボットシミュレーション向けのOmniverseアプリです。
物理的に現実に近いシミュレーションを行うことで、ロボットや自動運転車両、ドローンなどのAIシステムの設計、トレーニング、検証などにも利用可能です。
また、ROS/ROS2環境を設定することにより、ROS/ROS2連携も可能です。
アイザック・シムとは?— Omniverse IsaacSim 最新ドキュメント (nvidia.com)
Machinima
アニメーションストーリーテリングに最適化されたOmniverseアプリです。
キャラクター、プロップ、カメラなどのアニメーションクリップを組み立てることができます。また、AIベースのポーズ推定やAudio2Faceにより、キャラクターの表情や動きをよりスムーズにアニメーション化することが可能です。
Machinima Overview — Omniverse Machinima latest documentation (nvidia.com)
まとめ
今回は、Omniverseの概要をご紹介しました。
Omniverseは、リアルタイムレンダリング、物理シミュレーション、AI機能、共同作業機能、3Dコンテンツの互換性と相互運用性の向上、そして拡張性といった主要な機能を提供することで、クリエイティブなプロジェクトの質や効率の向上が期待できます。これらの機能により、映画制作、建築設計、ゲーム開発など、さまざまな業界でその力を発揮しています。
今後もOmniverseは、さらなる機能拡張やアップデートを通じて、更なる進化が期待できます。
本記事を通じて、Omniverseに興味を持っていただけると幸いです。
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