【日本馬出走】コックスプレート2024 有力馬解説・展望
アイルランドのアイリッシュチャンピオンズウィークエンド、フランスの凱旋門賞ウィークエンド、そして英国のチャンピオンズデー──欧州の主要競馬開催国のビッグイベントが次々と消化され、今年の欧州平地競馬シーズンが終了を迎える時期となった。
ヨーロッパは障害競馬シーズンに突入していき、平地競馬のビッグレースの舞台は海の向こうへ移っていく。
世界最大規模の競馬大国アメリカでは、各路線の今年の最強馬決定戦と言えるブリーダーズカップの開催を来週に控え、国内外からトップホースが集結する。
秋のGⅠシーズンに突入した日本では今週、10ハロン路線の頂上決戦たるGⅠ・天皇賞(秋)が行われる。
久々に海外の強豪が複数頭参戦しそうなGⅠ・ジャパンカップが終わると、香港の地では香港国際競走──と、これから冬にかけて、世界の競馬サークルの注目は太平洋の沿岸に集まることとなる。
日本と同じようにGⅠシーズンに突入しているのが、南太平洋に浮かぶ大陸・オーストラリアの競馬である。
南半球の国であるオーストラリアは、日本とは季節が逆転しているため、現在は秋ではなく春となる。
そんな春のオーストラリアで行われる伝統的なレースの1つが、天皇賞(秋)の前日に発走するGⅠ・コックスプレートだ。
今年は日本馬の参戦もあり、国内馬券発売が行われる。
今回はオーストラリア中距離戦線の大一番と言えるコックスプレートの有力馬解説・展望をお届けしたい。
コックスプレート(Ladbrokes Cox Plate)
2024/10/26 15:10(日本時間)発走
格付け:GⅠ
開催地:オーストラリア・ヴィクトリア州
ムーニーバレー競馬場
条件:3歳以上・芝2040m(左)
斤量:馬齢
フルゲート:14頭(補欠馬4頭)
総賞金:505万オーストラリアドル(約5億500万円)
さて、周知の事実だとは思うが、このコックスプレートは過去に日本馬が優勝したことのあるレースである。
2019年には、GⅠ・宝塚記念(阪神・芝2200m)を制してからコックスプレートに参戦した矢作芳人厩舎のハーツクライ産駒、リスグラシューが優勝した。
鞍上は日本でもお馴染み、ダミアン・レーン騎手。
短い直線の入口で外からまくり、異次元の末脚で他馬をまとめて差し切る鮮烈な勝ちっぷりは、オーストラリアの競馬ファンにGⅠ・25勝を挙げた伝説的名牝ウィンクス(Winx)の走りを彷彿とさせるものであったという。
コックスプレートを4連覇している当のウィンクスほどではないにせよ、このときのリスグラシューのパフォーマンスは高く評価され、この一戦だけでオーストラリアの年度表彰にノミネートされたほどだった。
ともあれ、「伝説が生まれるレース」と言われるコックスプレートは、オーストラリア中距離路線の最強馬決定戦と呼ぶべきレースである。
2011年からは国際招待競走となっており、オーストラリア国外にもコックスプレートの優先出走権が与えられるレースがいくつか存在している。
オーストラリア国内も含め、勝ち馬にコックスプレートへの優先出走権が与えられる指定競走と、各レースの勝ち馬は以下の通りだ。
GⅡ フィーハンステークス(2024)
条件:オーストラリア・ムーニーバレー・芝1600m
優勝馬:プライドオブジェニ(Pride Of Jenni)
GⅠ ジャパンカップ(2023)
条件:日本・東京・芝2400m
優勝馬:イクイノックス(Equinox)
GⅠ 宝塚記念(2024)
条件:日本・阪神京都(代替開催)・芝2200m
優勝馬:ブローザホーン(Blow The Hone)
GⅠ サラトガダービー招待ステークス(2024)
条件:アメリカ・サラトガ・3歳・芝1900m
優勝馬:カーソンズラン(Carson's Run)
GⅠ インターナショナルステークス(2024)
条件:英国・ヨーク・芝2050m
優勝馬:シティオブトロイ(City Of Troy)
今年はフィーハンS以外の勝ち馬は参戦しない予定であるが、日本ともつながりの深いレースだということがお分かり頂けるだろう。
とはいえ、国際招待競走としての海外からの有力馬の誘致については、コックスプレートはかなり苦戦している。
オーストラリア競馬関連のニュースを見ていると、毎年主催者が熱意をもって他国の有力馬を勧誘している様子が分かるのだが、招待が上手くいかない原因としては以下のことが考えられよう。
ブリティッシュチャンピオンズデーやブリーダーズカップ、天皇賞(秋)など各国の主要レースと完全に時期が被っていること。
他の大陸から離れているオーストラリアへの輸送には時間がかかること。
ヴィクトリア州の検疫や獣医検査が異様に厳しいことなどから、コックスプレート遠征のハードルはかなり高いものになってしまっている。
余談にはなるが、そうしたスケジュール的な困難を鑑みてか、コックスプレートは2026年から開催時期が変更される予定だ。
現在のコックスプレートはGⅠ・コーフィールドカップ(コーフィールド・芝2400m)の翌週、GⅠ・メルボルンカップ(フレミントン・芝3200m)の前々週というスケジュールであるが、これをメルボルンカップの2週間後にズレ込ませるのだという。
既に100回以上開催されている、伝統ある格式高いレースであるコックスプレートの開催時期を約1ヶ月も後ろ倒しにするというのは、オーストラリア競馬界にとって非常に大きな番組変更になると言える。
要するに10月下旬から11月中旬に開催時期が変更されるわけだが、こうなると今度はGⅠ・香港カップ(沙田・芝2000m)と競合することになる。
前はGⅠ・ブリーダーズカップターフ(芝2400m)、後ろはGⅠ・香港ヴァーズ(沙田・芝2400m)に挟まれているジャパンカップと同じジレンマを、コックスプレートは抱えているわけである。
コース解説
次に、コックスプレートが行われるムーニーバレー競馬場のコースについて記そう。
何はともあれ、まずはコース図を見てほしい。
なんか……縦長じゃね?
そして、今回はGoogle Mapの航空写真も見ていただきたい。
なんか……スタンドの位置、おかしくね?
ご存知の方も多いと思うが、このムーニーバレー競馬場、直線が異様に短い。
具体的に言うと、最終直線は173m。
各馬は4コーナー前にはラストスパートに入り、トップスピードでカーブし直線を向く。
加速しながらでも曲がりやすいよう、コーナーには7.5°のバンクが付けられているが、当然コーナリング性能は非常に重要になってくる。
高低差は約5mあり、バックストレッチ側が低く、ホームストレッチ側が高い。
コースは1周1805mで、周回方向は左回り。
馬場は日本ほどではないにせよ比較的高速であり、芝2040mのコースレコードは2:02.94となっている。
雨が降りまくったりしない限りは、日本馬が力を発揮しやすいコースだと言える。
短い最終直線、5mの高低差、コーナーの攻略が勝敗を分けるポイントになるだろう。
なお、来年のコックスプレート終了後、ムーニーバレー競馬場は大規模な改修工事に着手する。
この工事でスタンドとゴール板の位置が今の3・4コーナー中間に移動するようで、最終直線173mのコックスプレートは残りわずかということになる。
加えて、上述の通り2026年にはコックスプレートの開催時期が変更となる。
来年を最後に、コックスプレートは全く違うレースに変化すると言えそうだ。
出走予定馬・オッズ
《出馬表》
①(2) ミスターブライトサイド(Mr Brightside)
騎手:C.ウィリアムズ(59.0kg) 調教師:B, W&JD.ヘイズ(豪)
②(5) プログノーシス(Prognosis)
騎手:D.レーン(59.0kg) 調教師:中内田 充正(日)
③(9) コヴァリカ(Kovalica)
騎手:M.ザーラ(59.0kg) 調教師:C.ウォーラー(豪)
④(3) ロイヤルパトロネージ(Royal Patronage)
騎手:M.ディー(59.0kg) 調教師:G.ウォーターハウス&A.ボット(豪)
⑤(1) ドックランズ(Docklands)
騎手:B.シン(59.0kg) 調教師:H.ユースタス(英)
⑥(7) プライドオブジェニ(Pride Of Jenni)
騎手:D.ベイツ(57.0kg) 調教師:C.マー(豪)
⑦(4) ヴィアシスティーナ(Via Sistina)
騎手:J.マクドナルド(57.0kg) 調教師:C.ウォーラー(豪)
⑧(8) ブロードサイディング(Broadsiding)
騎手:J.カー(49.5kg) 調教師:J.カミングス(豪)
⑨(6) エヴァポレイト(Evaporate)
騎手:K.ティータン(49.5kg) 調教師:B, W&JD.ヘイズ(豪)
※()内はゲート番
《オッズ》
② プログノーシス 3.0
⑦ ヴィアシスティーナ 4.2
⑥ プライドオブジェニ 5.0
⑧ ブロードサイディング 8.0
① ミスターブライトサイド 8.5
⑤ ドックランズ 14.0
④ ロイヤルパトロネージ 26.0
③ コヴァリカ 31.0
⑨ エヴァポレイト 31.0
※10/22現在、ブックメーカー「Ladbrokes」より
有力馬解説・展望
どんな馬がいるか、という話をする前に、前提知識として「オーストラリアにおいて中・長距離戦線はどのように捉えられているのか」という点を押さえておこう。
まず大前提として、現在のオーストラリアは短距離が主戦場である。
世界一の短距離王国はオーストラリア、そう断言しても差し支えないはずだ。
かつては欧州などと同じく中・長距離路線がメインとされ、今もダービーなどは他国と同じように12ハロン付近の距離で行われている。
「国を止めるレース」と言われるGⅠ・メルボルンカップが3200mという距離に設定されており、先週行なわれたコーフィールドカップも2400mで、このコックスプレートも10ハロン戦──と、中・長距離の番組自体は充実しており、歴史の長いレースも多い。
オーストラリアの中・長距離のレースには、100年前から変わらない伝統と格式が備わっていると言える。
しかし、今のオーストラリアの馬産は中・長距離戦に比重を置いていない。
オーストラリアの生産界が何よりも重視している、目標としているレースはGⅠ・ゴールデンスリッパーS(ローズヒルガーデンズ・2歳・芝1200m)だ。
過去の記事でも昨シーズン(※オーストラリアは南半球のため、8/1〜7/31を1シーズンと数える)のゴールデンスリッパーを取り扱っているが、オーストラリアの生産界はゴールデンスリッパーの結果を中心として動いていると言っても過言ではない。
コーフィールドカップ・コックスプレート・メルボルンカップなど、オーストラリアのビッグレースとなっている中・長距離戦には歴史と格式・名誉が存在する一方、勝てば繁殖馬として安泰、というレベルの馬産的な価値までは付随していない印象である。
勿論、メルボルンカップを勝ったりすればその馬は国の英雄として一生安泰なのだが、それは繁殖価値とはまた違うベクトルの話だろう。
2歳のスプリント戦を中心に馬産をやっている都合上、オーストラリア産馬からは強い中・長距離馬が生まれにくい。
そのため、現在のオーストラリアの中・長距離路線で活躍している馬は、その多くが欧州からの輸入馬である。
2000mくらいまではオーストラリア産馬もよく活躍するが、2400m、3200mと距離が伸びるほど、その割合は減っていく印象だ。
オーストラリアの馬主が中・長距離の伝統ある格式高いレースで名誉を得たいときは、欧州から馬を買いつけてきて走らせるというのが王道かつ早道となる。
欧州平地競馬シーズンの終わりが近づく今くらいの時期になると、欧州馬がオーストラリアに売却されたというニュースを目にすることが増える。
売る側となる欧州においても、所有馬をオーストラリアに売却したり移籍させたりすることはさほど珍しいことではなく、一般的に行われていることである。
さて、今年のコックスプレートは比較的少頭数での競馬となった。
日曜日時点だと現地メディアの出走想定馬の数は6頭だったのだが、結局は9頭立てで枠順が確定。
何とかフルゲートの半数は超えたことになり、レーシング・ヴィクトリアの面目も何とか保たれた──と言えるだろう。
少頭数ではあるが、メンバーとしては非常に良い馬たちが揃ったという印象を私はもっている。
オーストラリアのシーズン前半(※オーストラリアは南半球のため、8/1〜7/31を1シーズンとする)における10ハロン最強馬決定戦、そう呼ぶに相応しいレースになることが期待できよう。
そんな中、スポンサーを務めるブックメーカー「Ladbrokes(ラドブロークス)」において、前売り1番人気に設定されているのはアサルトライフルXM7プログノーシスである。
この馬のプロフィールの紹介はするまでもないと思うので、オーストラリア現地におけるプログノーシスの評価についての話をしてみよう。
現地ブックメーカーにおける前売り1番人気、ということからして分かる通り、オーストラリアにおいてもプログノーシスは非常に高く評価されており、今年のコックスプレートにおいても本命級の馬だと捉えられている。
この高評価の根底にあるのは、昨年のコックスプレート優勝馬ロマンチックウォリアー(Romantic Warrior)との比較だ。
ロマンチックウォリアーのことも日本の競馬ファンの皆様はよくご存知であろうと思うので、今回は説明を省略するが、プログノーシスはたびたびロマンチックウォリアーと対戦している。
香港遠征が多い馬、かつ10ハロンを戦場としている馬なのでロマンチックウォリアーとぶつかるのは至極当然のことなのだが、そこでプログノーシスは3回、ロマンチックウォリアーの2着となっている。
プログノーシスからすればロマンチックウォリアーはまさしく目の上のたんこぶ、宿敵と言える馬であるが、特に今年のGⅠ・クイーンエリザベスⅡ世カップ(シャティン・芝2000m)は非常に僅差であった。
昨年のコックスプレート覇者であり、世界の10ハロン路線のトップホースであるロマンチックウォリアーと差のない競馬をしている馬──というのが、オーストラリアにおけるプログノーシスの大まかな評価である。
勿論、人によって捉え方は異なっているだろうが。
今年のコックスプレートにロマンチックウォリアーは不在とあらば、彼と何度も戦い肉薄しているプログノーシスが最有力候補として支持されることは自然な流れである、と言えるだろう。
そして、今回の鞍上にはダミアン・レーン騎手を迎えることも、現地での高評価につながっていそうである。
主戦を務める川田将雅騎手が、コックスプレートの翌日に行われるGⅠ・天皇賞(秋)(東京・芝2000m)において、プログノーシスと同じ中内田充正厩舎の三冠牝馬リバティアイランドに騎乗するが故の乗り替わりであるが、レーン騎手は昨シーズンのヴィクトリア州のリーディングジョッキー。
ヴィクトリア州での開催となるコックスプレートで、リーディングジョッキーたるレーン騎手に手綱を握ってもらえることは非常に心強い。
ちなみに、オーストラリアではリーディングのことを「プレミアシップ」と呼称する。
だが、本記事では日本の競馬ファンの皆様に分かりやすいよう、リーディングと表現させていただいている。
話を戻すが、現地での前売り1番人気だからといって、プログノーシスVやねん! と気安く言える状況でもないということも、日本の競馬ファンの皆様は分かっておられるだろう。
最大の懸念材料としては、やはり前走のGⅡ・札幌記念(札幌・芝2000m)の内容が良くなかったということが挙げられる。
ハッキリ言ってしまえば、プログノーシスの良くないところが全て出てしまったレースだった。
コックスプレートの舞台となるムーニーバレー競馬場の直線は異様に短い、というのは上述の通りである。
芝2040mのスタート地点は4コーナーに置かれ、先行争いはホームストレッチをまるまる使って行われるが、そもそもの直線が173mしかないので、ポジション争いは熾烈なものになる。
出遅れると、良いポジションを確保するのは当然厳しくなる。
そして、オーストラリアは日本とは比較にならないほどポジション争いが苛烈で、その厳しさは世界でもトップクラスと言えるだろう。
具体的に言うと「内を取れない騎手は三流」とされ、大外枠からのスタートであろうと内のポジションを取れなかった時点で、レース後に騎手は調教師にボロクソ言われる──なんて話もあるくらいだ。
オーストラリアの騎手は日本の騎手以上にポジションにこだわる。
できれば先行したいが、出遅れてしまうとそうも行かない。
気性的にも非常に難しいところがある馬なので、上手いとはいえテン乗りになるダミアン・レーン騎手が、どこまで彼を手の内に入れられるか。
プログノーシスがコックスプレートに挑むにあたり、理想的なのは今年のGⅡ・金鯱賞(中京・芝2000m)のような競馬だ。
しかし、札幌記念を見た後だと、やはり不安が残ると言わざるを得ないだろう。
直線が極端に短い故に、プログノーシスの脚質的にも逆風──というのは、もはや言うまでもないことだ。
長く厳しい検疫を経たプログノーシスの当日の状態がどうかと、ダミアン・レーン騎手がどんな騎乗をするか。
プログノーシスが勝ちきるためには、この2点がポイントになるだろう。
オーストラリアの若き名手が、コックスプレートという大舞台において、良いプログノーシスを見せてくれることに期待したい。
2番人気は6歳牝馬ヴィアシスティーナ(Via Sistina)。
鞍上はニューサウスウェールズ州のリーディングジョッキーにして、オーストラリア最強の男ことジェームズ・マクドナルド騎手が務める。
ここでまた余談なのだが、先ほどから記事内では「ヴィクトリア州の」「ニューサウスウェールズ州の」という表現を多用している。
オーストラリアの競馬は州ごとに開催されているため、オーストラリア競馬について考えるときは「州」が1つの基準となることを覚えておくと、少し分かりやすくなるのではないだろうか。
また、州ごとに競馬場の周回方向も決定されている。
オーストラリア競馬の大レースはほぼヴィクトリア州とニューサウスウェールズ州に集中しているわけだが、今回コックスプレートが行われるヴィクトリア州は左回り、ニューサウスウェールズ州は右回りとなる。
ヴィアシスティーナの話に戻ろう。
オーストラリアの中・長距離戦線はヨーロッパからの移籍馬が中心である、と上述したが、このヴィアシスティーナはまさしくそのパターンに該当する。
ファストネットロック(Fastnet Rock)産駒の本馬は元々英国調教馬であり、ヨーロッパで走っていた頃には2023年のGⅠ・プリティポリーS(カラ・芝2100m)を優勝している。
そして、昨年のGⅠ・チャンピオンS(アスコット・芝2000m)で3着に好走した後、ユーロングループに売却されてオーストラリアに移籍した。
昨シーズン後半、オーストラリアでの初戦をGⅠ・ランヴェットS(ローズヒルガーデンズ・芝2000m)で迎え、マクドナルド騎手を鞍上にこれを快勝。
オーストラリア移籍初戦にしてGⅠ勝利を挙げた。
圧倒的1番人気で迎えた秋の10ハロン決戦、GⅠ・クイーンエリザベスS(ロイヤルランドウィック・芝2000m)こそ2着に敗れたものの、こちらは勝ち馬を褒め称えるべきレースであり、本馬の評価が下がる内容ではなかった。
今シーズンは8月末のGⅠ・ウィンクスS(ロイヤルランドウィック・芝1400m)から始動し、ここを勝ち切ったものの、オーストラリア移籍後初めての左回りとなったGⅠ・マカイビーディーヴァS(フレミントン・芝1600m)は不良馬場に苦しんだか5着に敗戦。
これで一旦コックスプレートにおける現地での評価は下がったものの、続くGⅠ・ターンブルS(フレミントン・芝2000m)は後にコーフィールドカップで2着となるバッカルー(Buckaroo)を競り落として優勝、懸念を払拭した。
コックスプレートには中2週での参戦となるが、今シーズンは初めから前半の最大目標をコックスプレートに設定して調整されているため、このローテーションに関しては全く問題ない。
ただ、この馬に関しては今週火曜日の最終追い切りにおいて、大きなアクシデントが発生している。
既にムーニーバレー競馬場に入り、最終調整を行っているヴィアシスティーナだが、火曜日早朝の調教時に放馬した。
脚に巻いていたバンテージが解けてしまったことが原因らしく、騎乗していたマクドナルド騎手を振り落とし、空馬の状態でムーニーバレー競馬場の芝コースを約2周半したのである。
幸い、引き上げた後に行われた馬体検査ではヴィアシスティーナに異常は認められず、振り落とされたマクドナルド騎手にも怪我はなかった。
管理するクリス・ウォーラー調教師は「土曜日まで様子を見て、当日の朝にコックスプレートへの出走の是非を判断する」としており、このまま何事もなければコックスプレートには出走する見込みだ。
しかし、ヴィアシスティーナに関しては当日出走取消となる可能性が残されていることと、レース当週にアクシデントがあったことを考慮する必要があるだろう。
特にアクシデントに関しては、レースへの影響がどれくらいあると考えるか──それは個人の尺度次第、ということにはなると思うが。
前売り3番人気に設定されているのが、プライドオブジェニ(Pride Of Jenni)。
その名の通りプライドオブドバイ(Pride Of Dubai)産駒の7歳牝馬で、昨シーズンのオーストラリア年度代表馬である。
この馬については、まずこちらの映像を是非ともご覧いただきたい。
とにかく一度見てほしい。
何ならこの動画を見てくれさえするのなら、このページを閉じてくれても構わないくらいなので、とにかく見てほしい。
絶対に無駄な時間にはならないとお約束しよう。
こちらは昨シーズン──つまり今年4月に行われたGⅠ・クイーンエリザベスS(ロイヤルランドウィック・芝2000m)の映像だ。
もしかすればまだ映像をご覧いただけていない方がいるかもしれないので、念のためスクリーンショットも貼っておく。
ということで、お分かりいただけただろうか。
このプライドオブジェニ、 大 逃 げ 馬 である。
昨シーズンはこのクイーンエリザベスSも合わせ、マイルから10ハロンまでの距離でGⅠを3つ持っていっているプライドオブジェニ。
この馬がオーストラリア年度代表馬・最優秀中距離馬に選ばれたのは、このクイーンエリザベスSがオーストラリア人の脳を焼き尽くしたからだと考えられる。
クイーンエリザベスSにおいて、最内枠からスタートしたプライドオブジェニは、他馬をみるみる突き放して大逃げを敢行。
道中は実に30馬身以上もの差を後続につけ、20馬身近くのリードを持って直線に向き、まんまと逃げ切った。
実のところ、プライドオブジェニはそこまで速いラップを刻んでいたわけではなく、途中でしっかりとペースを落としている。
言わばこれは後ろのバカども案件であり、2番手を追走していたミスターブライトサイド(Mr Brightside)に騎乗していたクレイグ・ウィリアムズ騎手などはレース後のインタビューで長々と敗戦の弁を述べたりしていたわけだが、結局のところ他馬のレース運びに関しては一言──2着馬ヴィアシスティーナに騎乗していたジェームズ・マクドナルド騎手のコメントが全てであろう。
「Embarrassing(恥ずかしい)」
と、他馬の騎手にとっては悔いの残るレースであったと思うが、それはともかく。
秋のオーストラリア中距離王者決定戦の舞台で大逃げを果たしたプライドオブジェニは、昨シーズンのオーストラリア最優秀中距離馬・年度代表馬の称号を手にした。
そして、今シーズンの始動戦を8月末のGⅠ・メムジーS(コーフィールド・芝1400m)で迎えたわけである。
では、ここで余談コーナー。
先ほどから有力馬たちの臨戦過程についてご紹介しているわけだが、何かお気づきではないだろうか。
こう思わないだろうか──「なんで2000mのGⅠに出てくる馬が、1400mとか1600mとかで復帰してんの?」と。
実はこれ、オーストラリア競馬あるあるなのだ。
オーストラリアでは基本的にレースで馬を叩いて状態を上げていくのだが、その復帰戦としては全力疾走する時間が短く、馬の消耗が少ないとされる短距離戦が選ばれることが多い。
例え3200m戦のメルボルンカップに出る馬でも、普通に1200mのレースからシーズンを開始したりする。
そして、本番に向けてだんだん距離が伸びていく。
馬券を買う側の視点に立ってみると、「当然、強い馬であるのは分かるが、この距離や復帰戦というところでどうか」──と、考えることになる。
こうしてオーストラリア競馬民は苦悩し、馬券の取捨選択を迫られるということだ。がんばれ。
プライドオブジェニの今シーズンの話に戻そう。
1400mは流石に短かったか、あるいは復帰戦であることが堪えたか、メムジーSは5着に敗戦した。
しかし、続くGⅠ・マカイビーディーヴァS(フレミントン・芝1600m)では2着となり、コックスプレートの前哨戦と言えるGⅡ・フィーハンS(ムーニーバレー・芝1600m)ではミスターブライトサイドを抑え1着。
そして、先週末のGⅠ・キングチャールズⅢ世S(ロイヤルランドウィック・芝1600m)を2着として、コックスプレートに駒を進めてきた。
先週末の、というところで察した方もいると思うが、コックスプレートには連闘での参戦となる。
しかし、叩いて仕上げるのが基本のオーストラリアにおいて中1週・連闘は当たり前なので、このローテーションを理由に割り引く必要はない。
特にプライドオブジェニに関しては、今シーズン前半の最大目標をコックスプレートに定め、そこから逆算する形でレースを使っている。
言わば、4回叩いてきっちり仕上がった状態。
先週末のレース後の回復も極めて順調であり、レース翌日の日曜日には「彼女をコックスプレートに向かわせない理由はどこにもない」と調教師がコメントしている。
枠順が7番ゲートになってしまったのが気になるところだが、そもそも少頭数。
先週1600mのレースを使ったばかりであるし、そこでもスムーズに逃げられたことから、ハナを取るのは容易いと考えられる。
先頭で1コーナーをカーブしてしまえば、後は後ろの馬がどれだけくっついてくるか。
流石にクイーンエリザベスSほどの極端な大逃げは打たせてもらえないだろうが、大体5〜6馬身くらいのリードを保ったまま逃げ、バテずに短い直線でまんまと逃げ切ってしまうというのが理想的な展開となるだろう。
もう1つ、この馬の魅力としては何だかんだ安定感があるというところ。
昨シーズンの初めまでは惨敗もあったが、2023年11月のGⅠ・エンパイアローズS(フレミントン・芝1600m)でGⅠ初制覇を飾って以降、メムジーSの5着以外は連対率100パーセントなのである。
大逃げという極端な脚質を持ってこそいるが、最後まできっちり脚を残して粘り込む馬で、最後にかわされるにせよ、何だかんだ2着は外さないことがほとんど。
ロマンに満ちた脚質を持ち、それでいて安定感があり、もちろん能力が非常に高いことは言うまでもない。
173mという極端に短い直線も、間違いなく彼女に味方するはずだ。
ということで、私の本命馬はこのプライドオブジェニ。
まあ私の予想はアテにならないのでどうでm(ry
前売り4番人気ブロードサイディング(Broadsiding)は、ゴドルフィンが所有する3歳牡馬だ。
父は昨シーズンのオーストラリア2歳リーディングサイアーとなったトゥーダーンホット(Too Darn Hot)。トゥー↑ダーン↑ホッ!!!
昨シーズンは2歳戦を戦い、L・ファーンヒルマイル(ロイヤルランドウィック・芝1600m)を勝った勢いでオーストラリア2歳三冠の最終戦たるGⅠ・シャンパンS(ロイヤルランドウィック・芝1600m)に参戦。
初コンビとなったジェームズ・マクドナルド騎手に導かれてこれを優勝、GⅠ初制覇を果たした。
その後はGⅡ・サイアーズプロデュースS(イーグルファーム・芝1600m)の1着を経て、続くGⅠ・J.J.アトキンス(イーグルファーム・芝1600m)では2着に4と1/4馬身差をつける大楽勝。
昨シーズンのオーストラリアにおける、2歳チャンピオンの座に輝いた。
今シーズンの復帰戦は9月末、3歳限定のGⅠ・ゴールデンローズS(ローズヒルガーデンズ・芝1400m)。
圧倒的1番人気に応えてこれを勝ち切ると、またも圧倒的1番人気を背負って、GⅠ・コーフィールドギニー(コーフィールド・芝1600m)に出走した。
しかし、初のヴィクトリア州、すなわち初の左回りでのレースとなったこのコーフィールドギニーで、ブロードサイディングは4着に敗戦。
道中はインの後方を追走し、4コーナーで進出していくも外に膨れ、かつ内にササって進路の確保が遅れてしまい、最後に伸び脚を見せるも間に合わず──という内容であった。
ファーンヒルマイルから続く連勝は5でストップしてしまったが、陣営は自信を失わず、予定通り古馬との初対戦となるこのコックスプレートに進んできた。
また、10ハロンという距離も今回が初挑戦となる。
3歳馬とあって初めて尽くしの本馬だが、ゴールデンローズSからコーフィールドギニーを経てのコックスプレート──というローテーションは、2021年にコックスプレートで僅差の2着となった同馬主・同厩舎のアナモー(Anamoe)を想起させるものだ。
また、私の主観であるが、距離は問題ないと思う。
元々後方からレースを進める馬であり、最後の末脚を見る限り距離延長にはしっかり対応してくるだろう。
懸念点は初の左回りとなったコーフィールドギニーの内容が、左回りへの不安を払拭できないものであったことと、歴戦の古馬が集うこの舞台でどこまでやれるかというところ。
そして、本馬の主戦騎手を務めているジェームズ・マクドナルド騎手が、今回はヴィアシスティーナに騎乗するということか。
とはいえ、コックスプレートでブロードサイディングの手綱を取るジェイミー・カー騎手もオーストラリアのトップジョッキーであり、昨シーズンは死ぬほどビッグレースを勝っていたオーストラリア最強の女。
また、ブロードサイディングにはクイーンズランド州のサイアーズプロデュースSで既に騎乗経験があり、テン乗りではないということも心強い要素である。
直線の短いムーニーバレー競馬場でのコックスプレートは彼にとって最適の舞台ではないと思うが、能力は間違いなくオーストラリア3歳世代のトップクラスにある馬。
3歳馬であるが故に、49.5kgという軽ハンデも大きな魅力と言える。
左回りへの対応という点をアジャストできるか、またカー騎手のレース運びがポイントとなるだろう。
古豪ミスターブライトサイド(Mr Brightside)は前売り5番人気に設定された。
今シーズンで7歳、主戦騎手も47歳のクレイグ・ウィリアムズ騎手という、まさしく歴戦の猛者と呼ぶべき馬である。
既にGⅠ・6勝を挙げており、オーストラリアのGⅠ戦線で善戦を続ける本馬は、昨年のコックスプレートでもロマンチックウォリアーと写真判定の2着に健闘している。
また、ここ丸2年ほどで20戦を戦い、一度たりとも掲示板を外していないという安定感も非常に魅力的だ。
昨シーズンはGⅠ・4勝の活躍を見せたミスターブライトサイドは、今シーズンの復帰戦にGⅠ・メムジーS(コーフィールド・芝1400m)を選び、ここは2着。
続くGⅠ・マカイビーディーヴァS(フレミントン・芝1600m)で、プライドオブジェニを外から差し切ったのが6度目のGⅠ制覇。
同レースの連覇ともなる勝利であった。
GⅡ・フィーハンS(ムーニーバレー・芝1600m)は逆にプライドオブジェニの逃げ切りを許す2着、前走のGⅠ・マイトアンドパワー(コーフィールド・芝2000m)は末脚勝負に屈し2着、という臨戦過程をたどっている。
GⅠ・6勝馬だというのに差し損ねてるイメージが結構あり、何となくブエナビスタ感があるのだが、2年間GⅠ戦線で戦い続けながら一度も掲示板を外さず、これだけGⅠを勝つというのは並大抵のものではない。
最後は確実に伸びてくるという信頼を置ける馬である。
そして、プライドオブジェニとはライバル関係と言われている。
今シーズンだけでも既にメムジーS・マカイビーディーヴァS・フィーハンSと3度、プライドオブジェニとミスターブライトサイドは対戦している。
昨シーズンも幾度となく戦い、差したり逃げ切られたりの一進一退の攻防を繰り広げており、プライドオブジェニとミスターブライトサイドの宿命のライバル対決もコックスプレートの見どころの1つだと言えるだろう。
プライドオブジェニとミスターブライトサイド、同い年の2頭は非常に気ぶり甲斐のあるカップリング(※個人の感想)なのだが、ミスターブライトサイドはセン馬なので、この2頭のロマンスは実現しないというのが若干悲しいところである。
と、ここまでブックメーカーの前売りにおいて10倍を切るオッズの5頭をご紹介した。
火曜日時点のオッズなので、本番までに人気順の入れ替わりやオッズの変動はあるだろうが、中心がこの5頭であるということは変わりないだろう。
コックスプレートはトリッキーなコースながらも例年固く決まる傾向にあり、この上位5頭で決まるのではないかと個人的には考えているところだ。
まあ私の予想はアテにならn(ry
展開予想・予想印
《展開予想》
参考レースなどを踏まえながら、各馬の脚質をまとめると以下の通りになる。
逃げ
プライドオブジェニ
ロイヤルパトロネージ
先行
ロイヤルパトロネージ
ミスターブライトサイド
プログノーシス
差し
ミスターブライトサイド
エヴァポレイト
コヴァリカ
ヴィアシスティーナ
ブロードサイディング
プログノーシス
追込
ロイヤルパトロネージ
ブロードサイディング
コヴァリカ
ドックランズ
プログノーシス
最終直線173mというコースでありながら、出走メンバーを見ると後方脚質の馬ばかりだと分かる。
ハナを切るのはまず間違いなくプライドオブジェニになるだろう。
ロイヤルパトロネージも逃げたことがあるが、2番手からの競馬もこなしているので、絶対に逃げなければならないという馬ではない。
ここまで今シーズンはマイル戦を使っている馬で、スタートも速くテンも速い。
7番枠と外目の枠に入ったことは気になるが、前に行く馬が少ないことから、好発を決めさえすれば1コーナーまでにスムーズにハナを取り切れる公算が大きい。
1コーナーをカーブし、プライドオブジェニは徐々にそのリードを広げていき、後続を最低でも5〜6馬身離しての単騎逃げを打つと考えられる。
離れた2番手にロイヤルパトロネージ、3番手にミスターブライトサイドが追走する。
その後にエヴァポレイト、コヴァリカ、ヴィアシスティーナ、ブロードサイディングとこの辺りが一団になり、ドックランズ、プログノーシスは後方から──という隊列を筆者は想定している。
プライドオブジェニのリードは3コーナー過ぎから少しずつ詰まっていき、3・4コーナー中間からミスターブライトサイドが仕掛けて、プライドオブジェニを捕まえに動くはずだ。
ミスターブライトサイドが4コーナー手前まで動かなければ、もうプライドオブジェニの逃げ切り展開に突入している。
4コーナー時点で5馬身以上の差が残っているなら、もうプライドオブジェニは捕まらないと思った方がいい。
ミスターブライトサイドが押し上げるのに合わせ、エヴァポレイト、ヴィアシスティーナ、ブロードサイディング、プログノーシスも動いていく。
もしミスターブライトサイドがギリギリまで動かないようなら、ヴィアシスティーナやブロードサイディング、プログノーシス辺りの馬が外から捲って、馬群全体がプライドオブジェニを追いかけていくという展開も考えられよう。
最終直線では、粘り込むプライドオブジェニを外からミスターブライトサイド、ヴィアシスティーナ、ブロードサイディング、プログノーシスが猛追する。
そして、最後にゴール板を駆け抜けるとき、抜け出しているのは誰か──といったところか。
道中のペースはプライドオブジェニはハイペース寄りのミドルペース、という感じになるだろうが、ミスターブライトサイドより後ろの馬のペースはかなり落ち着くのではないだろうか。
全馬がプライドオブジェニを執拗に追いかけたりしたら別だが、ミスターブライトサイドのクレイグ・ウィリアムズ騎手がそこまでガンガンに攻めた騎乗をするかというと、多分しないと思う。
後方脚質の有力馬が多いため、プライドオブジェニを捕まえに行くにせよ、早めに動くと自分より後ろの馬に捕まってしまう可能性もある。
そうして睨み合った結果、プライドオブジェニがセーフティリードを取ってしまう──というのもあり得そうだが、トップジョッキーたちが秋の二の舞になることは無いと思いたいところだ。
プログノーシスは最後方もあり得るが、テン乗りのダミアン・レーン騎手がどのようなアプローチをするか読めないところはある。
もしかしたら出していくかもしれないが、そうなると折り合いをつけられるかがカギになりそうだ。
《筆者のアテにならない予想印》
♡ プライドオブジェニ(Pride Of Jenni)
◎ プライドオブジェニ(Pride Of Jenni)
◯ ミスターブライトサイド(Mr Brightside)
▲ ヴィアシスティーナ(Via Sistina)
△ プログノーシス(Prognosis)
△ ブロードサイディング(Broadsiding)
☆ エヴァポレイト(Evaporate)
イクイノックスに一度たりとも◎を付けず、ルメールを疑い続ける男こと筆者のアテにならない予想印はご覧の通りである。
まず心の本命と本命はプライドオブジェニ。
告白すると、私はプライドオブジェニに脳を焼かれている。
クイーンエリザベスSでああいう走りをしてしまった以上、後ろの騎手も今回は楽に行かせてくれないと思うのだが、ムーニーバレーのコースは最終直線の距離からして、ロイヤルランドウィックよりも逃げ切りが決まりやすい。
後方の馬たちが睨み合えば、思った以上に楽に逃げることができ、そのまま──というのに期待している。
というかもう、この馬の大逃げが見れれば結果がどうなろうが私はニッコリしていることだろう。
大逃げ馬はみんなを幸せにする。
一緒に走る馬以外のみんなを。
2番手はかなり迷ったのだが、直線が短いことと番手以降のペースが速くならなさそうなこと、調教過程の差からミスターブライトサイドを選択した。
昨年もロマンチックウォリアーと僅差の2着、写真判定の結果が出るまではこちらが勝ったのではと思えるほどの素晴らしい走りを見せており、1年経った今も能力の衰えは全く感じられない。
昨年と同じような走りをすれば、プライドオブジェニを差し切っての1着も十分あり得るだろう。
ヴィアシスティーナは元々対抗にする予定だったのだが、調教過程の不安が大きいため1ランク印を下げた。
本当はもう1段階印を下げようかとも思ったのだが、レース当週に放馬してGⅠを勝った前例があることが分かったため、1ランクダウンで据え置くことにした。
ちなみに、この前例というのは2015年、GⅠ・サウスオーストラリアンダービー(モーフェットビル・芝2500m)を制したデリカシー(Delicacy)のことである。
GⅠ・オーストララシアンオークス(モーフェットビル・芝2000m)を優勝した当時3歳牝馬のデリカシーは、サウスオーストラリアンダービー当週の早朝の追い切りで騎手を振り落として放馬し、モーフェットビル競馬場の周りを何周も走っていたのだという。
しかし、レース本番ではオッズ1.9倍の圧倒的人気に応え優勝、放馬の影響は全く無かったらしい。
勿論、このデリカシーとヴィアシスティーナは別の馬であり、ヴィアシスティーナに火曜日朝のアクシデントがどのような影響を与えたかは分からないと言わざるを得ない。
よって印は1ランク下げたが、能力を十分に発揮できる状態ならば1着も想定される馬の1頭である。
連下の2頭は、能力的に印を回さずにおくのは怖い。
プログノーシスはこのトリッキーなコースを攻略できるかがポイントだが、気性面とスタートの悪さから割り引いてこの印に留めた。
ブロードサイディングは上述の通り古馬との力関係が不明瞭だが、通用することに期待しつつ、左回りも2度目で対応してきたなら──というところ。
穴としてはエヴァポレイトが面白いか。
まだGⅠの実績はない3歳馬だが、ムーニーバレー競馬場は過去3戦3勝で、唯一の重賞勝ち鞍であるGⅡ・ストゥットS(芝1600m)もムーニーバレーでのもの。
前走のGⅠ・コーフィールドギニー(コーフィールド・芝1600m)ではブロードサイディングを抑えての3着に健闘しており、コース適性が高そうかつ、能力もGⅠで戦えるレベルにはありそうな馬だと考える。
放送・配信情報
10月26日の15時10分(日本時間)に発走するコックスプレートは、グリーンチャンネルの「中央競馬全レース中継」内でレースが放映される。
また、レーシング・ヴィクトリアの公式サイトである「Racing.com」でも、レース中継を見ることができる(会員登録が必要になるが、Googleアカウントや他SNSアカウントでのログインが可能)。
オーストラリア春の大一番、コックスプレートにぜひご注目いただくとともに、オーストラリア競馬の馬券を買える貴重な機会をぜひお楽しみいただきたい。
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