【日本馬出走】バーレーンインターナショナルトロフィー2024 有力馬解説・展望
ブリーダーズカップ・メルボルンカップが終了し、世界の競馬サークルの注目はジャパンカップに集まる時期となった。
今年は何年かぶりに欧州12ハロンのトップホースが多数参戦するとあり、イクイノックスが出走した昨年と同等以上の関心を世界から持たれるレースとなるはずだ。
一方、中東の競馬シーズンが始まる頃合でもある。
中東における競馬開催国の1つであるバーレーンでは、今週「バーレーンインターナショナルトロフィー」が行われる。
バーレーン競馬における最も大きなレースと言え、国際招待レースでもあるこのレースに、今年は日本からキラーアビリティとヤマニンサンパが参戦する。
今回はこのバーレーンインターナショナルトロフィーについて、コース解説を混じえつつ、有力馬たちについて見ていきたい。
バーレーンインターナショナルトロフィー(Bahrain International Trophy)
2024/11/15 25:35(日本時間)発走
格付け:GⅡ
開催地:バーレーン・サヒール競馬場
条件:3歳以上・芝2000m(右)
斤量:3歳56.5kg・4歳以上58kg・牝馬2kg減
フルゲート:14頭
総賞金:100万ドル(約1億5000万円)
青すぎねぇ?
と、この写真を見て思った方もいることだろう。
去年はなんとゴドルフィンが5頭出し、加えてシャドウェルの馬も出走していたので、全面ロイヤルブルー写真もさもありなん。
なお、勝ったスピリットダンサー(Spirit Dancer)は真ん中、赤の勝負服である。
フランケル(Frankel)産駒で、手綱を取ったのはオイシン・オーア騎手。
今年のGⅡ・ネオムターフカップ(キングアブドゥルアジーズ・芝2100m)の勝ち馬でもあり、その後はGⅠ・ドバイシーマクラシック(メイダン・芝2410m)にも出走したので、記憶にある方も多いのではないだろうか。多頭出しは負けフラグ(?)
オブライエン師「勝てなかった……」
コース解説
舞台となるのはサヒール競馬場。
現時点ではバーレーン唯一の競馬場であるためか、欧州の競馬メディアにおけるレースカードなどでは競馬場の名前が書かれず、単に「バーレーン競馬場」と表記されることもある。
バーレーンの競馬は全て芝コースで行われる。
サヒール競馬場の芝コースは「アウタートラック」と「インナートラック」、即ち外回りコースと内回りコースの2つがあり、この2つのコースを切り替えて使うことで、シーズンを通して良い状態の芝でレースを行われるようになっている。
なお、インナーコースの更に内側には調教用のサンドコース、要するに日本のダートと同じ砂のトラックが敷設されている。
こちらは調教用のコースとなっており、レースでは使用されていない模様だ。
バーレーンインターナショナルトロフィーで使用するのは外回りコース、2000m。
グランドスタンド左側、2コーナーからスタートし、右回りにコーナーを2つ経てゴールへと走っていく。
形状としては英国のアスコット競馬場に似ているが、アスコットのような極端な坂はなく、高低差は5〜6メートルほど。
気候的にも馬場が渋ることはほぼないこともあり、タイムもある程度出るようになっている。
サウジやドバイ、カタールなど他の中東競馬開催国の芝コースと似たような感じ、と考えていいのではと思う。
日本馬の参戦は2020年のバーレーンインターナショナルトロフィーに出走したディアドラ以来。
ディアドラはホリー・ドイル騎手とのコンビで出走するも8着に敗れ、これをラストランとしてクールモアスタッドで繁殖入りとなった。
出走予定馬・前売りオッズ
《出走予定馬》
①(10) アルフレイラ(Alflaira)
騎手:J.クローリー 調教師:O.バローズ(英)
②(06) カリフ(Calif)
騎手:A.デフリース 調教師:C&Y.レルネール(仏)
③(01) ゴエモン(Goemon)
騎手:E.ネイダー 調教師:H.イブラヒム(巴)
④(09) キラーアビリティ(Killer Ability)
騎手:O.マーフィー 調教師:斉藤 崇史(日)
⑤(08) ネーションズプライド(Nations Pride)
騎手:W.ビュイック 調教師:C.アップルビー(英)
⑥(05) ポイントロンズデール(Point Lonsdale)
騎手:R.ムーア 調教師:A.オブライエン(愛)
⑦(12) ソヴリンスプリント(Sovereign Sprint)
騎手:S.サーディ 調教師:J.ラマダン(巴)
⑧(11) スピリットダンサー(Spirit Dancer)
騎手:O.オーア 調教師:R.ファヒー(英)
⑨(04) ヤマニンサンパ(Yamanin Sampa)
騎手:団野 大成 調教師:斉藤 崇史(日)
⑩(07) ヤングアイルランド(Young Ireland)
騎手:D.リスカ 調教師:J.ラマダン(巴)
⑪(02) リードアーティスト(Lead Artist)
騎手:K.シューマーク 調教師:J&T.ゴスデン(英)
⑫(03) アンドロメデ(Andromede)
騎手:C.スミヨン 調教師:F.グラファール(仏)
※()内はゲート番
《前売りオッズ》
⑤ ネーションズプライド 3/1(4.0倍)
⑪ リードアーティスト 3/1(4.0倍)
① アルフレイラ 9/2(5.5倍)
⑧ スピリットダンサー 10/1(11.0倍)
② カリフ 12/1(13.0倍)
④ キラーアビリティ 12/1(13.0倍)
⑥ ポイントロンズデール 12/1(13.0倍)
⑨ ヤマニンサンパ 16/1(17.0倍)
⑫ アンドロメデ 16/1(17.0倍)
③ ゴエモン 33/1(34.0倍)
⑦ ソヴリンスプリント 40/1(41.0倍)
⑩ ヤングアイルランド 50/1(51.0倍)
※11/13現在、ブックメーカー「bet365」より
有力馬解説・展望
芝2000mのレースとあり、中心となるのはやはりここでもヨーロッパ勢である。
中でも最有力はネーションズプライド(Nations Pride)。
ゴドルフィンの所有馬であり、父はテオフィロ(Teofilo)の5歳牡馬だ。
2022年、3歳時にアメリカのGⅠ・サラトガダービー招待S(サラトガ・3歳・芝1900m)を勝ってGⅠ初制覇。
その後は2023年にドイツでGⅠ・ダルマイヤー大賞(ミュンヘン・芝2000m)、カナダでGⅠ・カナディアンインターナショナルS(ウッドバイン・芝2400m)を制し、今年もGⅠ・アーリントンミリオン(コロニアルダウンズ・芝2000m)を優勝している。
3ヶ国でGⅠ・4勝、という実績は、間違いなく今年のメンバーの中で頭1つ抜けていると言える。
勝っているGⅠはGⅠとしてはメンバーレベルが高くないものではあるが、18戦10勝・重賞6勝という戦績は素晴らしいものだ。
様々な国で勝利していることから馬場も不問であり、生涯掲示板を外したのは2回のみ、という安定した走りも魅力的である。
ただ、問題は昨年のバーレーンインターナショナルトロフィーが、その2回のうちの1回であるということ。
ネーションズプライドは昨年もウィリアム・ビュイック騎手とのコンビで出走するも、7着に敗戦している。
実績的に見れば最上位な一方で、この昨年の振るわなさはどうにも気にかかる。
また、アメリカ・ドイツを中心としたローテーションが組まれていることから、ゴドルフィンの芝馬の中ではランクは本当のトップ層から1段落ちる馬、という印象は否めないところか。
とはいえ、能力を十分に発揮すれば、ここでも頭まで突き抜ける可能性が最も高い馬であると言えるだろう。
これに続くのが、ジョン&シェイディ・ゴスデン厩舎が送り込むリードアーティスト(Lead Artist)だ。
父ドバウィ(Dubawi)、母父フランケル(Frankel)という欧州二大血統を兼ね備えた本馬は、ジャドモントファームの自家生産馬。
3歳馬であり、デビューは今年の4月と遅れたものの、8月にグロリアス・グッドウッド開催のGⅢ・サラブレッドS(グッドウッド・芝1600m)で重賞初制覇。
前走、10月のGⅢ・ダーレーS(ニューマーケット・芝1800m)で重賞2勝目を挙げ、勢いをつけての初の英国外への遠征となる。
デビューからずっとキーラン・シューマーク騎手とコンビを組み続けており、今回も彼が手綱を取る。
懸念点は初の海外遠征だということに加え、2000m戦の経験がないという点。
前走から200mの距離延長に、初めての海外で対応できるかというのが焦点となるだろう。
アルフレイラ(Alflaira)については、記憶にある方もいらっしゃるのではなかろうか。
†Dark Angel†産駒の5歳牡馬で、シャドウェルファームの自家生産馬。
8月に英国で行われたGⅠ・インターナショナルS(ヨーク・芝2050m)12着以来のレースとなる。
インターナショナルSは流石に相手関係の強化が著しすぎたという印象だが、重賞4勝の実績を持つ馬である。
今年もGⅠ・プリンスオブウェールズS(アスコット・芝1990m)で不利を受けながらも4着に入るなど、ヨーロッパのトップホース達を相手に戦ってきた。
バーレーンインターナショナルトロフィーは2022年に出走予定だったものの直前回避となっており、今回はそのリベンジと言える。
この馬は10ハロンがベストな上、比較的馬場が軽いヨーク競馬場での好走歴や、パンパンの良馬場で行われた今年のプリンスオブウェールズSでの好走を鑑みるに、バーレーンの芝には高い適性が期待されるだろう。
昨年の覇者スピリットダンサー(Spirit Dancer)は、英国ブックメーカーの前売りでは4番人気に設定された。
元々は英国のGⅢ・ストレンソールS(ヨーク・芝1760m)での重賞勝ちがあり、去年のバーレーンインターナショナルトロフィーで国際重賞2勝目を挙げた。
そこからも中東を転戦しており、1月にUAEで行われたGⅠ・ジェベルハッタ(メイダン・芝1800m)4着の後、サウジアラビアのGⅡ・ネオムターフカップ(キングアブドゥルアジーズ・芝2100m)でキラーアビリティを振り切り優勝。
これで重賞3勝目となったが、初の12ハロンとなったGⅠ・ドバイシーマクラシック(メイダン・芝2410m)は11着に敗れ、10月に復帰戦としたGⅢ・ダーレーSはリードアーティストの7着と惨敗した。
そこから連覇を狙っての出走となるが、一度使って状態がどれだけ上がってくるか。
昨年の栄光を取り戻してほしいところである。
カリフ(Calif)は2年連続の参戦だが、昨年は9位入線も失格となっている。
今年の初戦はGⅡ・ネオムターフカップで、スピリットダンサー・キラーアビリティに次ぐ3着に好走。
GⅠ・ドバイターフ(メイダン・芝1800m)は7着とし、ヨーロッパに戻ってからはGⅢ・ラ・クープ(パリロンシャン・芝2000m)を優勝して重賞3勝目。
その後、GⅠ・ダルマイヤー大賞を優勝してGⅠウィナーとなった。
このダルマイヤー大賞は昨年のドイチェスダービー馬ファンタスティックムーン(Fantastic Moon)を下しての優勝であり、ファンタスティックムーンのベストが12ハロンだということを考えても、一定の価値がある勝利だったと言えるだろう。
そこからはGⅡ・ドラール賞(パリロンシャン・芝1950m)で4着となり、再びのバーレーン遠征。
ドラール賞ではその2週間後にGⅠ・チャンピオンS(アスコット・芝1990m)で大穴をぶち開け優勝したアンマート(Anmaat)に先着を果たしており、強豪たちと戦ってきたことは評価したいところだ。
ポイントロンズデール(Point Lonsdale)は、エイダン・オブライエン厩舎の社畜枠である。
オーストラリア(Australia)産駒で、血統としてはブルーム(Bloome)の全弟、ディエゴヴェラスケス(Diego Verasquez)の半兄にあたる。
バーレーンインターナショナルトロフィーは昨年3着に続き、2年連続での参戦となる。
今年は2月のGⅢ・カタールアミールトロフィー(アルライヤン・芝2400m)から始動して11着に敗れるも、転戦したGⅠ・ドバイシーマクラシックは6着と健闘。
一応はオーギュストロダン(Auguste Rodin)のラビット(ペースメーカー)としての出走だったはずなのだが、当のオーギュストロダンは全くやる気を見せず最下位、なんとこちらの方が好走してしまったというオチである。
ヨーロッパに戻ったポイントロンズデールは、ズブさがあるということで距離延長する方向へシフト。
5月のGⅢ・オーモンドS(チェスター・芝2680m)で1年ぶりの勝利を挙げると、GⅠ・サンクルー大賞(サンクルー・芝2400m)でも3着に好走してみせた。
その後は遂に3000mを突破し、GⅡ・ロンズデールカップ(ヨーク・芝3250m)5着、GⅡ・ドンカスターカップ(ドンカスター・芝3580m)3着と掲示板は外さない走りを見せている。
そして、欧州競馬がオフシーズンに入る中、今年も休ませてもらえずにバーレーン遠征と相成った。
ズブい逃げ馬という矛盾した存在である本馬だが、それに加えて今回は1600m近い距離短縮。
彼は今回、どのような走りを見せてくれるのだろうか。
個人的に応援せずにはいられない馬の1頭である。
以上が、日本馬キラーアビリティ・ヤマニンサンパよりも前売りオッズが高く設定されている馬たちだ。
バーレーン調教馬の3頭も全てがヨーロッパからの移籍馬であり、実質的には欧州馬対日本馬という構図になっている。
遠征の輸送距離としては、ヨーロッパからの遠征馬よりも日本馬の方が長く、既にサヒール競馬場を経験している馬が多いので、日本馬2頭はそうしたハンデを克服する必要があるだろう。
レース中継・配信情報
バーレーンインターナショナルトロフィーは現地時間19時35分、日本時間25時35分に発走する予定である。
当日のサヒール競馬場のレースの模様はバーレーンターフクラブ公式YouTubeライブで生配信される他、NetKeibaにおいても無料での中継配信が行われる。
バーレーンターフクラブ公式YouTubeチャンネル
NetKeiba配信ページ
今週末は、バーレーン競馬とともに過ごす金曜日の夜を迎えてみてはいかがだろうか。
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