アイリッシュチャンピオンS2024 出走馬の個人的評価・予想

9月14日23時25分(日本時間)に発走する、GⅠ・アイリッシュチャンピオンステークス(レパーズタウン・芝2000m)に出走する馬の個人的な評価です。
馬券の参考になれば幸い、ですが馬券は自己責任

また、今回は「馬券を買うにあたって」という見方をしている都合上、どうしても歯に衣着せぬ表現が出てきてしまうところがありますので、ご注意下さい。

2023年アイリッシュチャンピオンS
(IFHA公式Xより)

出走馬一覧

※()内はゲート番

①(4) オーギュストロダン(Auguste Rodin)

騎手:R.ムーア
調教師:A.オブライエン(愛国)

《評価点》
昨年の英愛ダービー馬であり、GⅠ・6勝馬
ディープインパクトのラストクロップの1頭で、ディフェンディングチャンピオンとしての出走となる。

今回のメンバーの中では実績最上位。
昨年の覇者であることからレース適性は全く問題なく、今年も10ハロンGⅠを制した実績があるのが心強い。
また、今回4頭出しとなるエイダン・オブライエン厩舎のファーストジョッキーであるライアン・ムーア騎手はこの馬に騎乗することから、オブライエン厩舎の本命馬はオーギュストロダンだと見て間違いない。

現在のレパーズタウン競馬場の馬場状態はGood, Good to Yielding(良・ところにより稍重)
天気予報からしてもこれ以上悪化することはないと考えられるため、オーギュストロダンが得意とする馬場状態でレースを迎えることになるだろう。

《懸念点》
今年制したGⅠ・プリンスオブウェールズS(アスコット・芝1990m)はレーティング的には評価が高いレースとなっているが、相手関係及びレースレベルに関しては、個人的に疑問が残ると思う。
昨年と同じくGⅠ・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(アスコット・芝2390m)5着からの参戦で、昨年の全くレースをしなかったが故の10着とは違い、ちゃんと走った結果としての5着という印象を受ける。
そして、レース内容的には「完敗」と言えるものだった

良くも悪くも馬の能力は昨年とあまり変わっていない。身体能力が落ちてはいないものの、特に上積みも見られないという印象であり、昨年よりも斤量が増える今年はどこまで走れるか。

また、もはや言うまでもなく知れ渡っていると思うが、やる気を出さないと平然と最下位に惨敗する馬
今回やる気を出してくれるかが分からない。
ちゃんと走ってくれれば馬券内は外さないと思うのだが……。

②(6) ハンスアンデルセン(Hans Anderson)

騎手:C.ヘイズ
調教師:A.オブライエン(愛国)

《評価点》
自ら先頭に立ち、ペースを作り出すと考えられる点。

《懸念点》
単なるラビット(ペースメーカー)としての出走であり、この馬が勝つことをA.オブライエン厩舎的にはほとんど期待していないと考えられる。
重賞は制しているとはいえ、単純にGⅠレベルでは能力が足りていないという印象。だからこそのラビット役なのだが……。

③(7) ルクセンブルク(Luxembourg)

騎手:D.マクドノー
調教師:A.オブライエン(愛)

《評価点》
一昨年の覇者であり、昨年も僅差の2着。
このレースを非常に得意としている馬と言え、欧州のみならず香港遠征でも結果を出していることからも、世界のGⅠ戦線のトップレベルで戦う能力を持っていることは明らかである。

枠順からしてもハンスアンデルセンを行かせた上で、その後ろからスムーズに先行できそうであり、早め先頭からそのまま押し切るという展開も十分に考えられる。

《懸念点》
今年は欧州では12ハロンのGⅠしか走っておらず、10ハロンGⅠは久々となる
今年の前半の中東遠征では振るわず、かつ勝利した一昨年のアイリッシュチャンピオンSの馬場状態はSoft(重)であったことから、今年の馬場状態がどうか
(とはいえ、昨年のアイリッシュチャンピオンSも良馬場で行われ、そこで2着に残していることから、そこまで馬場状態を不安視する必要はないかもしれない)。

また、今回騎乗するデクラン・マクドノー騎手はテン乗りとなる。

④(1) ロイヤルライム(Royal Rhyme)

騎手:C.リー
調教師:K.バーク(英国)

《評価点》
10ハロンにこだわって使われている馬で、距離適性的には何ら問題ない。
また、GⅠでは常に5着前後を確保しており、安定感を持っていると言えるだろう。

《懸念点》
GⅠには過去3度挑戦しているが、5着2回・3着1回。
これより更に着順を上げる──GⅠレベルで馬券に絡むには、少なからず展開の助けが必要になると考えられ、地力的には他の出走馬に劣るという印象。

⑤(8) エコノミクス(Economics)

騎手:T.マーカンド
調教師:W.ハガス(英国)

《評価点》
トム・マーカンドをダービージョッキーにするはずだった漢

今回もトムが騎乗する。前トムにして今トム
多くのGⅠ馬を管理してきたウィリアム・ハガス調教師をして「スケールがとても大きい馬」と言わしめる素質馬であり、これまで走った2つの10ハロンのGⅡは圧勝と言える内容だった。
恐らくは今まで一度も本気で走ったことがなく、底が見えていない馬

現地のブックメーカーでのオッズを見ても、現在この馬が1番人気であり、現地のファンはこの馬を非常に高く評価していることが分かる。

6馬身差圧勝を果たしたGⅡ・ダンテS(ヨーク・芝2050m)と同じ舞台であるGⅠ・インターナショナルS(ヨーク・芝2050m)を使わず、わざわざフランスに遠征してGⅡ・ギヨーム・ドルナーノ賞(ドーヴィル・芝2000m)を使っての参戦ということからも、このアイリッシュチャンピオンSを目標として万全を期していると言えそう。
枠順的にも大外枠で、馬群に揉まれず自分のタイミングで仕掛けることができるはずだ。

もし今回のアイリッシュチャンピオンSで突き抜けて圧勝する馬がいるとすれば、それはエコノミクスだろう。

《懸念点》
トムをダービージョッキーにできなかったのは、体質の弱さから使い詰めをすべきでないと判断されたからと考えられる。
まだ素質だけで走っている状態であり、完成はまだ先
中3週というローテーションでの出走が若干不安なところはある。

また、これまでのキャリアはわずか4戦。
今回がGⅠ初挑戦となり、5戦目にしていきなり歴戦の古馬たちの中に放り込まれる
強い馬であることに間違いはないが、このメンバーの中でどこまで戦えるか。

脚質的には最後方待機の追込馬と、非常に極端。
オブライエン厩舎が先行馬のためのペースを作り出すと考えられる今回のレースにおいては、差し損ねてしまう可能性がありそう。

⑥(2) ゴーストライター(Ghostwriter)

騎手:R.キングスコート
調教師:C.コックス(英国)

《評価点》
10ハロンのGⅠレースを使われ続けており、先行脚質からかよく馬券に絡んでくる。
インターナショナルSで穴馬となり、高配当を演出したことを記憶している人もまだ多いだろう。
トップレベルで安定した成績を収めている馬で、今回のアイリッシュチャンピオンS出走も馬の状態を見極めての判断で、ここを使ってくるからには良い状態でパレードリングに登場すると考えられる

《懸念点》
GⅠで安定した走りを続けてこそいるが、裏を返せばGⅠレベルでは勝ちきれない馬であるとも言える。
今回も馬券に絡む可能性は少なからずある一方で、頭まで突き抜ける可能性は一体どれだけあるのだろうか。

⑦(5) ロスアンゼルス(Los Angels)

騎手:D.マクモナグル
調教師:A.オブライエン(愛)

《評価点》
今年のアイリッシュダービー馬。
これまで敗戦したのは英ダービー3着のみで、非常に安定感がある上、既にレパーズタウン競馬場の2000mでも重賞を勝っていることからコース適性も問題ないと言えそう。

元々は裏開催のGⅠ・セントレジャー(ドンカスター・芝2900m)を目標とする予定だったが、前走のGⅡ・グレートヴォルティジュールS(ヨーク・芝2370m)を勝った後、GⅠ・凱旋門賞(パリロンシャン・芝2400m)が最大目標となった。
この馬について「距離が伸びれば伸びるほど良い」と考えていたA.オブライエン調教師だが、こうした方針転換をした辺りから、この馬に少なからず色気を持っていそうなことが窺える

ここで4着以上に入れば凱旋門賞に出走する、とオブライエン師は明言しており、今回はスピード能力を図る一戦になると考えられる。
鞍上にディラン・マクモナグル騎手を据えてきた辺りからも、オブライエン師の期待値の高さが感じられる。

《懸念点》
あくまでも凱旋門賞に向けてどのくらい走れるか、という意図を持っての出走であり、状態をどこまで上げてくるかが未知数。
この後に凱旋門賞を見据えていることから、100%メイチの仕上がりで出てくるとは考えにくい

D.マクモナグル騎手はテン乗りとなる上、これまで戦ってきたレースよりもメンバーレベルは上がっている印象で、この中でどこまでやれるか。
また、追われてからの反応が若干鈍いところがあり、良馬場の10ハロンのGⅠでは置いていかれてしまうのではないかという不安がある。

⑧(3) シンエンペラー(Shin Emperor)

騎手:坂井 瑠星
調教師:矢作 芳人(日本)

《評価点》
日本馬としては2019年のディアドラ以来、史上2頭目となるアイリッシュチャンピオンS出走。
10ハロンで重賞を制している馬で、GⅠ・東京優駿(日本ダービー)(東京・芝2400m)3着から左回りも問題ないと考えて良さそうである。

また、血統的に欧州適性が期待でき、公開調教においても調教助手から「上手く欧州の馬場をこなした」というコメントが出ている。
休み明けのフレッシュな状態で出走することができ、坂井瑠星騎手の継続騎乗も評価したい。

枠順的にもオーギュストロダンの隣で、R.ムーアの後ろにつけてレースを運ぶことができそうなのは好印象。

《懸念点》
血統的な裏付けがあるとはいえ、実際に欧州のレース、しかもこのメンバーの中でどこまでやれるかは未知数。
また、この馬も最大目標を凱旋門賞としており、あくまでもアイリッシュチャンピオンSは叩きとしての出走となるため、メイチ仕上げで出てくる可能性は低そう

また、シンエンペラーの兄のソットサス(Sottsass)はアイリッシュチャンピオンSで4着に敗れており、馬券には絡めていない。
とはいえソットサスはそこから凱旋門賞を勝ったので、シンエンペラーも着順よりも内容が重要にはなりそう。
逆に言えば、馬券に絡まなくても仕方がない馬

予想印・総評

◎ ⑤(8) エコノミクス(Economics)
◯ ①(4) オーギュストロダン(Auguste Rodin)
▲ ⑦(5) ロスアンゼルス(Los Angels)
△ ③(7) ルクセンブルク(Luxembourg)
  ⑥(2) ゴーストライター(Ghostwriter)
☆ ⑧(3) シンエンペラー(Shin Emperor)

8頭立てながらも、良いメンバーが揃った。
個人的に最も期待したいのは、やはりトム・マーカンドとエコノミクス
GⅠの壁に跳ね返されるか、それともGⅠをすら容易く勝利してしまうのか。
エコノミクスにとっては試金石となる一戦だが、ここを容易く突破してしまった場合、この馬の将来への期待は更に大きく膨らむこととなるだろう。

上述した通り、まだ素質だけで走っているような馬。
完成は来年以降となるだろうが、素質だけでもGⅠを勝てるだけの能力を秘めている馬ではなかろうか。

エコノミクスを見ていると、3歳のイクイノックスを見ている感覚になる。
ここで大外から歴戦の古馬をまとめて撫できって突き抜けたら、最高にカッコいいぞトム。
分かるだろ? やれ、トム。

そして、もはや何度目かも分からん復活勝利を期すオーギュストロダンも、やはりこれまでの実績と能力から無視できない。
A.オブライエン厩舎はアイリッシュチャンピオンSを5連覇中であり、通算では12勝を挙げている
もうオブライエンのためにあるとさえ言えるレースで、名手ライアン・ムーアがディープインパクト産駒最終世代のオーギュストロダンを選んでくれたことは日本の一競馬ファンとして嬉しく、その期待に応える連覇にも大きな期待を寄せざるを得ない。

ロスアンゼルスルクセンブルク、ウェスターバーグの2頭も確実に押さえなければならないと感じる。
どちらもしぶとく脚を伸ばしてくる馬で、特にコース適性が間違いないはずのルクセンブルクは現地の下馬評だと若干ナメられているという印象。
馬券の買い目の組み方次第では美味しくなる可能性もあるのではなかろうか。
日本のオッズでどうなるかは分からんけれども。

ヒモを考えるときはゴーストライターも外せない。
とはいえ、日本の競馬ファンからするとインターナショナルSの印象が強いであろうことから、オッズが全然付かなさそうでもある。
あんまり配当が不味いなら買わずにおきつつ、この馬が来ても当たるような馬券を検討したいところ。

シンエンペラーは未知だからこそ怖い1頭。
ここで馬券に絡めずとも、そこそこ走れれば凱旋門賞でも悲観する必要はないと思うが、馬券内に来れれば期待は膨らむだろう。
とはいえ、日本ではオッズが付かない可能性が高いので、連系でシンエンペラー絡みの買い目のオッズがどれだけになるかは注視しておきたいところだ。

──なーんて、8頭中6頭に印を付けてると印の意味が無い気もするネ!
この予想印で買い目を組むなら馬連か馬単、頭は⑤エコノミクスと①オーギュストロダン、ヒモに⑦ロスアンゼルスと③ルクセンブルクを入れる感じかな?

繰り返しになるが、アイリッシュチャンピオンSは9月14日の23時25分(日本時間)に発走する。

また、シンエンペラーの帯同馬であるラファミリアは、同日24時のGⅢ・キルターナンS(レパーズタウン・芝2400m)に出走予定で、こちらの鞍上も坂井瑠星騎手となる。
今週末の夜は、是非アイルランド平地競馬でお楽しみ頂きたい。

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