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グリーン・グリーン

※この脚本はスリーカードプレイというルールで書いています。詳しくは上記の記事を参照。は

「グリーン・グリーン」

作・中村冬雪

人物

高山美月(16)・・・高校1年生。両親と事故で死別。

高山美遥(13)・・・中学1年生。美月の妹。

掛貝 華(48)・・・美月の叔母。有名雑誌の編集長。

津崎陽人(51)・・・アパレルブランド社長。

森山修司(38)・・・華のライバル誌の編集者。

小池裕香(23)・・・森山の部下。以前美月の家庭教師だった。

あらすじ

高山美月、美遥は両親が事故で亡くなって身寄りがなくなり、母の姉の掛貝華のところに身を寄せることに。しかし、有名雑誌の編集長を務める華はその交換条件として雑誌の編集として働くことに。そこで高校と両立させながら必死に雑務をこなす美月が、ようやく記事をまかされることになる。しかし、完成した原稿のデータがなくなって…。

本文

〇DITE編集室(夜)
  高山美月(16)は自分の机の周りにあったはずの完成原稿を探している。
美月「ない…」
  美月は自分の椅子に座りうなだれる。
美月「殺される…」

〇回想・編集長室(昼)
  美月は編集長室に入ってくる。掛貝華(48)はパソコンに向かっている。
美月「…お呼びでしょうか」
  華は仕事の手を止めて
華「仕事を頼もうと思って」
美月「…はい」
華「そこに資料が置いてある。その津崎という男のインタビュー記事を書いて」
美月「え?」
華「何?」
美月「いや、今までこんな仕事やらせてもらってなかったので…」
華「文句あるの?」
美月「いえ…!」
華「しっかりとした記事作らなかったらわかってるでしょうね?」
美月「…はい!」

〇回想・アパレルショップ(昼)
  美月がノートを抱えて店に入ると、津崎陽人(51)が待っている。
津崎「高山さん?」
美月「はい。DITE編集部の高山と申します。よろしくお願いします」
津崎「よろしく」
  二人は向かい合って座る。
津崎「そのノートに質問書いてきたの?」
美月「はい。沢山書いてきました」
津崎「(笑って)そう。できる限り答えるよ」
美月「では、早速質問させて頂きます」
津崎「ちなみにさ、そのネックレスは?」
美月「え?」
津崎「いや、なんとなく。君が着けるには、こう、少し古めかしいデザインだなって」
美月「あぁ…母の形見なんです」
津崎「…そうか。すまない」
美月「いえいえ!」
  美月がノートを開くと、大量に書かれた質問が見える。
津崎「(苦笑いして)…全部答えるよ」
   ×     ×     ×
美月「ありがとうございました!」
津崎「いい記事にしてね」
美月「はい。必ずします!」

〇DITE編集室
  美月は高山美遥(13)からのラインで「今日夜ご飯はいらない?」が来ているのが見える。美月は「ごめん、いらない」と返す。
美月「美遥、ごめん…」
   ×     ×     ×
  同じ編集室の別の机の下に、森山修司(38)と小池裕香(23)が隠れている。裕香は美月の書いた完成原稿を持っている。二人は小声で会話する。
裕香「これからどうするんですか」
森山「逃げるしかないだろ」
裕香「どうやってですか!?」
  裕香は机の隙間から顔を出し、美月の方を確認する。
裕香「えっ」
森山「どうした」
裕香「あそこにいる子、昔家庭教師をしてた時の教え子で…」
森山「どういうことだ?」
裕香「わかりませんよ! あの子、ご両親が事故でお亡くなりになってて、それで家庭教師の契約も無くなったんで…」
森山「え、じゃあまだ学生なの?」
裕香「高校生のはずです。あと確か妹さんがいて…」
森山「家族のために働いてるってやつか?」
裕香「…おそらく」
森山「おい森山、お前あの子と知り合いだったなら足止めできるよな?」
裕香「え?」
  森山は裕香が持っていた原稿を奪い、裕香を机の陰から押し出す。
裕香「うわっ!」
美月「なに!? …小池先生?」
裕香「…久しぶりね、美月ちゃん」
  裕香が森山を睨むと、森山は美月を部屋から出せというジェスチャーをする。
美月「…どうしたんですか?」
裕香「あ、いやえーと、今雑誌の編集の仕事をしてて」
美月「あ、…夢だって言ってましたもんね」
裕香「うん…それで今VUGIIの編集なんだけどさ」
美月「すごい、…けどなんでこの編集部に?ライバル誌なのに」
裕香「えっと…見学、に来てて。美月ちゃんは今何してるの?」
美月「今、ここで仕事してて。両親が―」
裕香「うん、知ってるよ」
美月「はい。実は編集長の掛貝さんは母の姉で、働くことを条件に住まわせてくれることになって」
裕香「…そうなんだ」
美月「ずっと雑務ばかりだったんですけど、段々編集の仕事してみたいと思ってきて。それで初めて必死に書いたんですけど、その原稿が見当たらなくて…」
裕香「そうなんだ」
美月「このままじゃ、美遥と追い出されちゃう…」
  裕香が森山の方を見ると、森山は相変わらず「美月をどこかへやれ」というジェスチャーをしている。
裕香「私もさ、編集の仕事が夢だったんだよね…」
美月「…はい」
裕香「森山さん、もうやめましょう」
森山「お前バカっ!」
美月「え、そこに誰かいるんですか?」
  森山が立ち上がり原稿を持って走り出す。
美月「あ、原稿!」
  美月が森山を追いかけて走り出す。

〇編集部・廊下
  森山を美月が追いかけているが、追いつけない。森山が笑って角を曲がると、華が立っていて森山の足をかける。森山は転んで原稿を落とす。
森山「いてぇ! (振り返り)…掛貝編集長…!?」
華「恥を知りなさい」
森山「…はい!」
  森山は逃げていく。
   ×     ×     ×
  美月が角を曲がると、原稿が落ちており、それを拾う。周囲を見るが誰もいない。
美月「…え?」
  美月は中身を確認して、編集長室へ向かう。

〇編集長室前
  美月は入ろうとするが、華が電話をしている声が聞こえて入るのをやめる。
華「今回はありがとうね」
津崎「いや、華さんの頼みならいくらでも」
華「調子がいいね」
津崎「あの子、良い子だったよ」
華「…そうでしょう?」
津崎「華さん、厳しくしすぎてたりしない?」
華「世間に出れば今後も理不尽なことが起こるでしょう? 一人でしっかりと生きていけるようになってほしいのよ」
津崎「…そう。華さんらしいね」
  それを聞いた美月は涙をぬぐいながら、編集室に戻っていく。

〈了〉

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