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MIU404 第4話「ミリオンダラー・ガール」の脚本が完璧すぎて感動したのでワンカットごとに分解してみた

こんばんは。中村冬雪と申します。

MIU404 第4話 「ミリオンダラー・ガール」の脚本が完璧すぎて、素晴らしくて金曜の放送から何度も見返してしまっている。すごい。よくできてる、できすぎている!! 

そこで、脚本家を目指すものとしてこれは分析・分解せねば…と思い、ワンカット毎に止めてはメモし、止めてはメモし…を繰り返したものをまとめとして書いてみます。めちゃめちゃネタバレするので、未見の方はTver等でぜひご覧下さい。別に1話から見ていなくても楽しめると思います(リンク貼っておきます)

MIU404
第4話
https://tver.jp/corner/f0054352/share

□ワンカット毎分解してみた!(ネタバレ有)

○居酒屋 3話の続き 伊吹と志摩と陣馬

 桔梗の家族について 桔梗はシングルマザーで子供は妹みたいな人が見てる

○桔梗家 妹みたいな人=麦(ハム)が出てくる。

 どこか変だが平和な家庭

○事件の通報 数多く起こる事件

○路地 青池透子が撃たれる

○404車 志摩 伊吹

 「子供かわいいなぁ」→メロンの歌を流す

 タイガーマスクの話。自分はいいことだと思ってやったのに、迷惑だった。

 いいことをしても世界は良くならない。「金」によって事件は起こる。

○薬局 「金」が大きく写る。透子「治療して!」

○404   薬局へ向かう

○薬局 透子が1億円を持っていることを知る。透子「賭けてみます。勝ったことないけど…」 透子の目が気になる伊吹

○ニュース映像

○目撃者の事情聴取

○鑑識? 指紋から逃げているのは青池透子とわかる。

○回想 2年前の裏カジノ事件

○401   今回の事件は住之江組の内部抗争? 機捜はここまで

○分駐所 志摩と伊吹と桔梗

 裏カジノのオーナーは「エトリ」(辰井組)で、桔梗の因縁? 青池透子は暴力団に落とされてカジノで働いていた被害者でもある。伊吹は監視カメラに写った透子の目が気になり、話がしたい。桔梗の指示もあり、404は青池透子を追うことに

○MIU404 タイトルロゴ

○逃げる透子 タイトル「ミリオンダラー・ガール」

○法律事務所 404  青池の就職先を知る。

○パソコンショップACE(=就職先)404  店員から「警察待ってた!」

○回想 ACEにヤクザが来る。「青池は!?」透子は引き出しに隠していた1億円をスーツケースに詰めて逃走した。

○パソコンショップACE   「透子の印象は?」→地味な人。手芸でウサギのぬいぐるみを作っていた。 「何で通報しなかった?」→社長がするな、と。

○刑事部長我孫子と桔梗 2人の過去の因縁。2年前の裏カジノ事件。

○桔梗家で窓の中の羽野麦

○分駐所での会話 404、401  →羽野麦とは

○2年前の裏カジノ事件 エトリを捕まえられず、狙われた羽野麦。保護する桔梗。麦「警察は私を騙したんですか?」

○分駐所 麦を保護したのは桔梗なりの責任の取り方。

 ACEの社長は怪しい。桔梗が調べる→それを止めて陣馬が動くことに。志摩「2年前の事件とは関係ないのでは?」 

○回想 カジノ事件の時。我孫子と桔梗。我孫子「我々は数の多い方を助けるしかない」

○分駐所 桔梗「助けたと思っていた透子が道を踏み外したなら、私には知る義務がある」

○404車 伊吹「隊長も青池も肝が据わってる」「(透子のウサギの人形を持って)ウサギは追い詰められるとすごいキックをする。本性を知るには生死がかかった瞬間を見ればいい」「透子にとってはそれが今」

○路地 青池透子がとある看板を見つける

○401車 組対の刑事に話を聞く。桔梗と組対のトップは仲が悪い?

○分駐所 桔梗と陣馬の通話

○401車 暴力団の手口は巧妙化。ACEは暴力団のフロント企業の可能性

○我孫子が桔梗の下へ ACEの口座は疑わしい取引口座に指定。マネーロンダリングに使われていた。青池透子はその口座から横領していたことがわかる。

○404車 ACE前 志摩が横領の事実を知る。ACE社長が店舗に戻ってくる。社長は電話口で「青池が見つかった?」と話す。404車はACE社長の車を追う。

○桔梗の部屋 透子が飛行機の予約をしたという情報が

○リムジンバス乗り場 バスに乗る透子。

○401車 住之江組が動き出す。401車も追跡。

○404車 青池のところへ! 羽田へ向かう。

○リムジンバス 瀕死で窓の外を見る透子

○分駐所 桔梗と我孫子 そこに糸巻「透子の乗ったリムジンバスがわかりました!」「しかし透子を撃った男も乗っています」 我孫子「高速でドンパチやられるよりバスの中の方がいい」桔梗「また数の理論ですか…」

○404車 伊吹「透子のリムジンバスに追いつきました!」

○分駐所 桔梗「高速を下ろす。銃を持った男が乗っている。気づかれる前に確保を!」

○404車 志摩「安全第一。防弾ベスト着用して」伊吹「合点承知の助〜」志摩「お前がそういう時は合点してない時だ!」

○リムジンバス バスは高速を降りる

○古びた整備場? 伊吹が修理工を装って入ってくる。

○404車 志摩がメロンの音を流す

○リムジンバス 伊吹はメロンの音で目を離したすきに銃を持った男を確保

○404車を降りる志摩 「伊吹!もう1人銃を持ってる!」

○リムジンバス 格闘する伊吹。拳銃が窓からバスの外へ。もう1人の男を倒す。志摩と協力して男を外に運び出すと、ACEの社長が外に落ちた銃を拾っていて、志摩に銃口を向ける。志摩は銃口を指で押さえる。志摩「今撃てば暴発してお互いに死ぬな」「じゃあ撃てば」「いいよ、俺は」 伊吹は撃とうとする社長を蹴り飛ばして助ける。401車も到着。男たちは確保。伊吹は志摩に「死にたいのか」とつかみかかるが志摩はかわす。

青池を見に行くため車内へ戻るが青池は息絶えていた。

○リムジンバス車外 透子に心臓マッサージをする伊吹。

○リムジンバス内 透子のキャリーバックには1億円はなかった。

○分駐所 エトリは関係なかった。透子は失血死。1億円はどこへ…?

○回想 透子の足取り。4時間の間に1億円をどこかにやった。

○分駐所 糸巻が入ってきて、透子のツイートのデータを見せる。

○回想(ツイート) 透子は普通に働けたと思ったのに、また暴力団の下で働いていたことに絶望する。手取り14万円で働いているのに。警察はロンダリングの事実を密告しても次の仕事を斡旋してはくれない。政治家や役人は悪いことをしても逮捕されない。→横領をすることに。汚い金なのだから、汚い私が使ってもいい。→どこならキレイに生きられるのか…

○回想 薬局 透子「賭けてみます。勝ったことないけど」

○分駐所屋上 志摩と桔梗 桔梗「透子が最後にみた景色は絶望だった」「私たちはいつも間に合わない…」 伊吹がきて、透子が宝石店に通っていた情報を知らせる。

○宝石店 志摩と伊吹と宝石店店長。透子は1億の宝石を買って、ウサギのぬいぐるみの目にしていた。

○分駐所 ウサギのぬいぐるみの行方を追う。九重が透子のツイートの読み方の違いを(結果的に)指摘。→募金をしていた?

○回想 看板を見る透子。

○募金事務所 海外の本部の住所の問合せがありました。

○海外メール便・宅配場 志摩と伊吹。そこに透子が来たことを店員から聞く。

○回想・海外メール便 透子が嬉しそうに宅配便にぬいぐるみを詰めて送る。19時の便に宅配が乗ることがわかり、それまで自分が逃げれば送られることがわかる→透子の最期の賭け。(『感電』がかかる)

○回想 リムジンバス 外を見る青池。バスの隣を走る海外メール便のトラック。絶命する青池透子。「最後にひとつだけ…」

○飛んで行く飛行機

○404車 公衆トイレ前 志摩「彼女の人生は何だったんだろうな」伊吹「そんなの俺たちが決めることじゃないっしょ」

○桔梗家 羽野麦を見て 桔梗「…必ずあなたを自由にする」

○404車 伊吹「お前の本性が死にたい奴だったとはなぁ」志摩「何でもねぇよ」伊吹「あんな真似、二度とすんじゃねぇぞ」志摩「(笑って)合点承知の助」伊吹「全然響いてないんだけど」

ー了ー

□分析した結果

分析してみてこの脚本のすごいところは、やはり無駄がないところだと思う。全てのシーンがその第4話ないしは連続ドラマとして意味を持っているのだ。そしてかつ面白い。すごい。語彙力が欲しい。

ここからは個人的に思うすごいところを列挙してみようと思う。

①シーンの繋がりがスムーズ(特に序盤)

 刑事ドラマにしても何にしてもドラマの最初の数分は視聴者を離さないために重要…だと思う。その中でもワンカットの中で、重要なセリフを置いた後にそのセリフの中身を次のカットで出すことで場面転換をスムーズにし、視聴者の没入感を高めている。

 例えば「妹みたいな存在が桔梗の子供を育てている」のセリフの後に羽野麦のカットを入れる。

 「金によって事件は起こる」のセリフの後、透子の金の入ったスーツケースのカットに移行する、などである。

②刑事ドラマ+ヒューマンドラマの巧みさ

 刑事ドラマは基本的に、事件が起こり、その謎を解くというところにカタルシスがあり、それを1話の中で最終ゴールとすることが多い。さらに連続ドラマの中でストーリーを組み立てる場合、12話の中で主人公たちの最大の敵と、主人公たちの弱点を作り、それを克服・成長させながら最終的に最大の敵を倒す必要がある。

 そのため、刑事ドラマという1話の中で事件を解決させる枠組みに、連続ドラマとして主人公たちのキャラクターを描き、弱点を表し、そして成長させるためのイベントを同時に組み込まなければならない。

 そして一番ここが難しい。1話の中で事件とその解決を面白くすることが得意な脚本家もいれば、連続の中でストーリーを作るのが得意な脚本家もいると思う。しかし、本質的には1話に起こる事件は連続の中で意味を持つ事件にしなければならないので、そこでジレンマが生まれるのだ。

 その点で今回の事件は志摩と桔梗の弱点を描きながら、それでいて1話として素晴らしい出来という点で無駄が全くない。すごい。すごい。語彙力。

③心理的な伏線と事件的な伏線

 刑事ドラマは伏線とその回収がカタルシスを生むので、そこを丁寧に描いてご都合的にならないように考える必要がある。今回の話でいくと、事件としての伏線は

 ・ウサギのぬいぐるみ

 ・募金の看板についた血痕

 などが事件そのものの解決に結びついていた。しかし、巧みなのはその事件のキーとなる存在を、心理的なキーと結びつけているところだと思う。

 例えばウサギのぬいぐるみは青池透子にとっての逃亡のための重要なアイテム(事件解決のキー)であると同時に、「生死がかかった時、本性が見える」→志摩の弱点「死にたい奴」という話に繋がる心理的なキーとなっている。これは②で話したことと重なるが、これによって事件と主人公たちのドラマが意味を持って繋がってくる。

 また伏線、というかシーン毎のつながりで言うと、冒頭、404の車内で桔梗の子供について志摩と伊吹が話すシーンはその前の桔梗がシングルマザーであるというところからつながり、目の前で子供が道を渡っているところから伊吹がメロンの歌を流し(→拳銃男確保時の伏線)、子供から伊吹はタイガーマスクの時の話をし(→最後の透子の寄付の伏線)、そこから志摩が「金が事件を起こす」という物語全体のテーマを話し、そのまま透子のキャリーバッグに入ったお金のカットに移る、という伏線(つながり)しかない会話なのである。伏線しかない会話ながら、そこにご都合的な違和感がなくシームレスに話が移行するその手際にはもう感服するしかない。できるようになりたい。

④コメディ性

 そんな練られた構成ながら、コメディ要素も忘れない。メロンパンの音楽に反応する子供に不服そうながら一応手を振る志摩や、ACEの社長が青池の居場所を知ったことを知るや適当な会話をして誤魔化す404コンビなど、こちらがクスッとなる要素も残している。何だよ無敵かよ…。

⑤結論は出していない

 今回の話の主軸である青池透子は、悲惨な人生であるように見える。シンプルな勧善懲悪なお話なのであれば、青池透子を善として生き延びる手もあったと思う。しかしこの脚本のすごいところは、結論や何が正しいのかを明示せず終わるところだと思う。

 青池透子はお金によって狂わされ、そして最後、そのお金(を寄付すること)によって救われたのだと思う。手取り14万円や、暴力団のフロント企業で働いているという現実の中で彼女は苦しみながら生きていた訳で。これは政治批判ではなく、そこにある現実に近いリアルなのだと思う。透子の寄付は別に正しいことをしたわけでなく、透子自身が救われるために行った行動でもあるのだ。そしてそれを志摩は「彼女の人生は何だったのだろう」と自問するように考えるが、伊吹は「そんなの俺たちが決めることじゃないっしょ」と促す。

 確かに人の人生の価値は決められない。でもそれをはっきりとドラマの中で言う事はなかなかすごい事だと思う。善悪はっきりとしたほうが作りやすいのだから。

□まとめ

 だいぶ長くなってしまったけれど、この脚本は本当に素晴らしいと思ったので、ただ見て欲しいと思っただけなのです。ほんとは「合点承知の助」というフレーズを志摩と伊吹で別のニュアンスで言いあってるー!とか、志摩の「安全第一、防弾ベストを着ろ」とかっていう命を守る行動をしていてその後と矛盾したことを志摩がしている(実に人間!)とか、いろいろあるのですが、後はもう見て感じて欲しい!

 この後も楽しみに僕は見ます。おやすみなさい。

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