弱い生き物を苛めたい欲求:非モテ小学生ぼく
僕は非モテ小学生
唐突だが、私はイジメというものを狩猟本能の表出だと思っている。
はるか昔、爪も無ければ牙も無い人間がタンパク質を得るためには、木や石で武器を作ったり、集団で連携しながら獲物を追い詰める必要があり、そうやって生きてきた時代もあったことだろう。
つまり元々人間はそうやって集団で何かを袋叩きにすることが得意な生き物なのだ。
とはいえ現代人には狩りをする機会などほぼないし、練習する必要すらない。その代わりに狩猟本能が表出する結果として、イジメはある。
では狩猟の練習相手に相応しい存在として選ばれるのは何か?
それは例えば捨てられている子犬であったり、子猫であったり、あるいは非モテ小学生だったりするのだ。これもきっと暴力性だろう。
非モテ小学生とは?
ここでいう非モテ小学生とは、いわゆる優しくて真面目で、逆に言えばそれ以外にこれといった取り得のない小学生のことである。
前回の内容における「男子ウケがいい」や「見て分かること」などの魅力がない。いまいち持っている良さを周囲に実感させられないタイプの小学生、主に男子のことである。
さて、イジメ、暴力性と言えば、まず最初に男子を連想するだろうが、私はむしろ女子からイジメを受けたことのほうが多い。
理由は忘れたが、低学年の頃には女子からガチビンタされて泣いてしまったことがある。
「情けない。男なら殴り返せ」と思うだろうか? 私も殴り返せるものならば殴り返したかったのだが、それは当事の私にとってはあまりに難しいことだった。
なぜなら私の父親が、男子は如何なる理由があろうとも年下や女子を殴ってはならないと、殴りつけられながら叩き込まれていたからだ。
今思えば泣いてしまったのは、ビンタが痛いというよりは仕返しができない悔しさの方が大きかったのかもしれない。
イジメと言えば、他にも色々と経験がある。
キモいキモいと集団で寄って集って好き放題言われることもあるし、配ったプリントをまるで付着した汚物を払うかのように扱われたことすらある。
そんな感じで、なぜか女子から執拗に苛められたことのある当事の私だが、ではなぜ自分はここまで苛められるのかということについて長らく分からなかった。
試しに特徴を挙げてみよう。
小学生非モテぼく
・基本インドア派、外遊びが苦手。特にドッジボールは嫌い
・身体は低め細め
・性格は大人しめ
・成績は3と2
・男子の中では髪が長い(母親の傀儡)
これらの要素を総合しつつ、女子の目にはどのように映り、どのような印象を抱くだろうか?
恐らくは、弱弱しい生き物と。つまり子猫や子犬と同レベルの存在だと思われるだろう。
これが子猫や子犬ならばまだいいのだが、残念なことに同じ人間であるがゆえに、それが女子に嫌悪感を抱かせる一因となっている可能性があるらしいのだ。
弱者男性と不快な暴力性、そして非モテ小学生
ところでツイッターで以下のような話を見かけたことがある。
いわく、女性は弱い男性を嫌う
いわく、オタクコンテンツは弱者男性=キモオタを想起させる
いわく、いじめられる方にも原因がある
昨今萌え絵やオタクコンテンツがフェミニストにやたら叩かれているのも、恐らくはその存在自体が弱者男性の存在を肯定しているような、即ちゴキブリの住処のような印象をもたれているのだろう。
ひとつのオタクコンテンツや萌え絵につき、30匹は弱者男性がいるみたいな感じだ。
そんな弱者男性の住処たるオタクコンテンツを叩くことで、フェミ騎士はフェミニスト女性に対して暴力モテを得ようとしているのだろう。
あるいは弱者男性などその存在を想起させるコンテンツすら視界にも入らなければ相手にもされないのであろう。
しかし、小学校という閉鎖空間では不幸なことに同じクラスであったり、あろうことか席替えで隣同士になってしまったり、体育の授業で鬼ごっこなどすることになった際には、どうしても接してしまう機会が生まれてしまうのだった。
例えば体育の授業で男女混合の鬼ごっこをすることになったとしよう。
運動が苦手な男子が不運にも鬼の役になり、苦手な運動で誰かを捕まえなければならない。
こうなると、運動が苦手な男子はまず誰を捕まえるべきか?
そう、足の遅そうなクラスメイトである。例えば太っているとか、体が細いとか、あるいは女子だとか……そういう自分でもワンチャンスありそうな自分と同等、あるいは下の弱者を狙う。というかそれしか出来ることがない。
これは、恐らく暴力性と呼んでいい。もっと言うと、女子からのウケがすこぶる悪いタイプの、弱者男性的で不快な暴力性と私は見ている。
弱者を狙う時点でもう既にウケが悪そうなところを、数多くいるクラスメイトのうち同じ男子そっちのけで女子を狙うという男らしさの欠片もない、また当の女子が不快感を覚えるような行為をする男子は到底許されるものではない。
そうして女子が抱いた不快感や嫌悪感情は女子グループ内で共有され、イジメという名の狩猟の練習相手に指定される可能性がぐんと高くなってしまうことだろう。
それが集団によるキモい連呼や汚物扱いといった見事なチームプレイへと繋がっていく。女子グループによる暴力性への絶対応報である。この時点ですでに女子は嫌悪感情を抱かされた被害者なのだ。
また、席替えで新しく隣同士になった女子に露骨に嫌そうな反応をされるというケースがあるが、あれも女子は被害者である。
なぜならかつての快適であった環境が奪われた挙句、明らかにこれからの学生生活において以前のような面白味や楽しさを期待できない相手を掴まされてしまったのだ。
この時点で、女子は既に被害者である。非モテ小学生が直接何かをしたわけではないが、快適だった今までの環境が破壊されたばかりの女子にとって、失ったものを補填してくれない無力な存在はパーソナルスペースに無断で居座る不快な生き物でしかない。
これがクラスのなかで一定の人気を誇る男子であったり、見て分かるほどにウケを狙えたり、ノリがいいことで知られる男子なら違ったかもしれない。
しかし非モテ小学生は優しい、真面目くらいしか取り得が無い。それはどうにも他人の目には見えづらく、発揮しづらいものである。せいぜい教科書忘れた時に見せたり、消しゴム忘れた時に貸したりなど、発揮できる場面は限定的。
というかそれくらいのことは特別優しかったり真面目だったりしなくてもやるものだ。これといった魅力でもなんでもない。
暴力性で言葉遊びをするのはやめよう
暴力モテはあるかもしれない。しかしそれは加工されたエンターテイメントの範疇で、前回での「男子ウケが良さそう」を「女子ウケが良さそう」に変えただけのことでしかない。つまるところ、ウケが良ければ暴力モテ、逆にウケが悪ければ暴力非モテになってしまう
非モテ男性はくれぐれも「ナンパは暴力!」「暴力モテはない!」などとあまりに脳筋みたいな物言いに惑わされてはいけない。
じゃあ結局モテるにはどうすりゃいいのってところは、次回のモテ中学生の私がなんとかしてくれることでしょう。きっと。気が向いたら、たぶん。
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