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自信が息を吹き返した時
「浜田さんは十分すごいのに、どうして誰かと比べるの?」
私を救ってくれた先輩の言葉です。
決して上から目線ではなく、優しい口調で話してくれたのを覚えています。
当時、私は行政の文化事業を担う組織でバックオフィスをしていました。
先輩は、地域で展開するアートプロジェクトに携わり、この組織にも長年在籍しキャリアを形成されていた方です。
毎日事業の現場に伴走しながら、チームメンバーに細やかな気配りをされていて、「私も◯◯さんのようになりたい!」と密かに目標にしていました。
2019年の年末、仕事を納めなきゃと残業していたら、憧れの先輩が「2人で忘年会しよう!」と誘ってくれたのです!
先輩とごはんに行けるだけで舞い上がっていた私……その時は、人生が救われる言葉をかけてもらうとは思ってもみませんでした。
「上手くいかないのは自分のせい」と自責する日々
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「どうして誰かと比べるの?」
先輩がかけてくれた言葉の意味を、パッと理解できませんでした。
振り返れば、小学校に入ってからずっと、誰かと比べるのが癖になっていたからです。
私は幼い頃から絵を描くのが好きでした。家族に絵を見せると「本当に絵が上手だね!」と褒めてもらえて嬉しく感じていました。
そして、「世界中で一番絵が上手だ」ととんでもない思い込みをしていたのです…。
小学1年生の時、図工の授業で「自由に絵を描きましょう」と画用紙が配られました。待ってましたとばかりに描き始め、出来上がりに満足したのを覚えています。
しかし、教室で注目を集めたのは、自分ではなくある男の子でした。
その子が描いたのは、手前に向かって走ってくる迫力満点の電車——ダイナミックな構図と、電車の構造を理解した精緻な表現に圧倒されました。
その時「その子のほうが自分よりも絵が上手だ」とはっきり認識したのです。
それから、誰かの絵と比較しては、「どうしてあの子のように上手く描けないんだろう?」と自信を失くしました。
そして、「自分は他の人より劣っている」と自分を責める癖がついてしまったようです。
その癖は絵を描くことだけでなく、勉強や仕事にも影響し、何かミスするたびに「上手くいかなかったのは自分のせいだ」と自分を追い込んでしまいました。
先輩のおかげで失われた自信を回復
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バックオフィスの仕事を始めてからも、「どうして他の人みたいに対応できないんだろう…」と落ち込むことが多かったです。
他の人はパッと判断できるのに自分はできない、作業に時間がかかってしまう…。
また、事務や経理は「ミスなく粛々と進めていく」のが目標なので、大きな評価を得る機会もほとんどありません。
チームメンバーから感謝してもらっても、「できて当然なんだから、しっかりしなきゃ」と気持ちが張り詰めていました。
「私の仕事は大したものじゃない」と勝手に過小評価していたのです。
しかし、憧れの先輩は、私が積み重ねてきた小さなことを見守っていてくれました。
「浜田さんはいつも丁寧にサポートしてくれて、十分すごいんだよ。誰かと比べる必要はないよ」と言ってくれました。
何でもできる先輩から見れば、自分なんか大したことないはずなのに。
自分のことをそんな風に見ていてくれたのか。
思わず涙がこぼれそうでした。
フリーランスになるきっかけを与えてくれた言葉
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バックオフィスの仕事をするうちに、「私もアーティストのサポートをしたい」と考えるようになりました。
私を見守っていてくれた先輩に、勇気を出して「もしサポートして欲しいと言ってくれる方がいたら、お手伝いしたいんです」と話してみました。
すると、「浜田さんのサポートを求めない人なんて、いないと思うよ!」と言ってくれたのです!
その言葉を聞いて「えっ、そうなの!?」と驚きました。
私なりに先輩を見習って、チームメンバーの状況を把握し作業を巻き取ったり、先回りして準備を整えたり…がむしゃらに仕事をしていました。
「やって当然のこと」だと思っていましたが、先輩はそれを「強力なサポート」だと評価してくれたのです。
「不恰好でも、精一杯やっていれば誰かの役に立てるかも」と思えた瞬間でした。
その日から、もっと自信を持って仕事に取り組もうと意識が変わりました。
・小さなことでもひとつずつ丁寧に向き合う
・達成したら自己評価する
という習慣が身についたと思います。
その後、本業の傍ら、アーティスト数名のお手伝いをするチャンスに恵まれました。
本業で身につけたスキルを活かし一生懸命サポートしたところ、アーティストの方々から
「丁寧に進めてもらえて助かった」
「作業を巻き取ってもらえたので、制作の時間を増やせた」
と喜んでいただきました。
「私なんか役に立たない」という後ろ向きな考えから、「私のサポートを必要としてくれる方がいるんだ」と前向きな思考に変わったのです。
そして、先輩やチームメンバー、お世話になったアーティストの方々に背中を押していただき、2022年にフリーランスとして独立。
フリーランスになろうと決意できたのは、先輩の言葉があったからです。
仕事が大変な時も、寝る間を惜しむくらい楽しい時も、先輩の言葉を思い出しています。
先輩に感謝の気持ちを伝えたことはありますが、「私の人生を変えた」とは思っていないかも…。
せっかくこの記事を書いたので、改めてお礼を伝えたいと思います。
こちらの記事は、「Webライターラボ」のコラム募集企画に参加するために書きました!7月のテーマは「仕事をしていて嬉しかったこと」です。
テーマを聞いて思い浮かんだのは、憧れの先輩にかけてもらった一言でした。フリーランスとして活動する原動力になっています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
Discord名:浜田夏実
#Webライターラボ2407コラム企画