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Ryoji Ikeda, ∈Y∋ "ultratronics"tour @Zepp Fukuoka
2022年の10月に渋谷のWWWXでRyoji Ikedaの"ultratronics"を見たが、今度はこの福岡で全国ツアーの一環としてもう一度演ってくれるらしく、しかもゲストアクトは∈Y∋!!これは行かねばならんでしょう!
結論としては、とにかく∈Y∋が凄かったです。"ultratronics"はnoteで2022年10月に感想を書いたので、よければそちらをご参照下さい。
会場のZepp Fukuokaには新しくなってから初めて行きましたが、広くて天井も高くて良い箱ですね。2階の座席指定と1階フロアのスタンディングがありましたが、私はフロアのスタンディングで。入りは7割といったところか。いらぬ世話だろうがこんなに大きな箱で採算取れるのかなとちょっと心配な入り具合でした。
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まずは∈Y∋の登場。ステージのDJブース様のセットの前に立ち、何やら機械をいじり出すと、暗い会場はマグマやプレートのうねりを思わせるような会場全体がブルブル震える唸り音で包まれ、スクリーンにはぼんやりとした紋様が浮かんでは消え、原初の地球のエネルギーみたいなイメージ。とそこに、宇宙からの怪光線みたいなバキバキに尖った音が降り注ぎ、スクリーンにはフラクタルな幾何学模様が何パターンも展開されていて、この時点でかなり生理的に心地良い。
地球上で唸っていた大きなエネルギーは怪光線といつしか混ざり合い、一体化し、現在の地球のような生命進化の樹形図を離れて、地上は怪思念のような存在が蠢くエネルギー場に!そしてそこから始まるパラノイアチックな祝祭!!
(あくまで私のイメージです。)
相変わらずどこから取ってきた何の音なのか分からない音が次から次にコラージュのように乱れ打ちになるが、それらが何故か我々の裡にある無意識下のエネルギーを強烈に喚起して、無茶苦茶に踊れるんだから本当に凄い!
一体∈Y∋は何をコントロールしているのか?これは誰が誰のためにやってることなのか?以前に見たのは2018年の福岡での野外フェスだったと思うが、その時の彼は謎の棒を振り回して宇宙のエネルギーをコントロールしてました。しかし今回は棒を振り回す∈Y∋という主体すらも消え去ってしまって、フロアには莫大なエネルギーと奇妙な架空の生物史だけが壮大に展開していくような感じ。
スクリーンに投影される映像も、ここ数年で発展した生成AIの作る悪夢的なイメージとの相性が非常に良く、本当にドラッギーでした。肥満の目玉の親父とでも言うか、全裸の太っちょボディに目玉がついた人達(レジデンツの"constantinople"のPVを一人にした感じ)が舞い踊り、そこに絡む幾何学模様、或いはAIで生成された架空のアジアっぽいレコードジャケ、はたまた無意味に雄大な自然が物理法則を超えてうねりたくる様や舞い狂うアラビア文字?など、観ているだけで発狂しそうな素晴らしい映像群。巨大なスピーカーセットを積んだバギーがレーザーをびゅんびゅん煌めかせながらジャングルを爆走するチープなCGなんかもあって、マジで一貫して何を見ているのか分からなかったが、無茶苦茶に踊れる音と合わせると最高に気持ち良い経験でした。
これは是非DVDかBlu-rayで持っておきたいが、色んなところからエッセンスを拝借してるだろうから、ソフト化は難しいのかなぁ。
Ryoji Ikedaはやはり音の照射を受けることで身体の細胞が整っていくような、よく分からないがこうでしかあり得ないんだろうなという「正しさ」を思わせるノイズ音。やっぱり自分はこの"ultratronics"を聴くと、プログラムが人間の営みを学んでビッグバンを起こすようなイメージが浮かぶなぁ。今回は特に、楳図かずおの『わたしは真悟』で真悟が■から▲、そして●になっていく過程が思い浮かびました。2次元的な0と1の羅列としてのビートでしかなかったものが、地形や文字情報を解析してどんどん有機的な音像を組み上げていく様子。
しかし、我々の身体や思考、所謂有機的なものとされているものがどんどん分子の動きやニューロンの伝達に還元されていって、一方でPC上のプログラムが昨今のように自己学習や自己修復をできるようになっていくとしたら、その両者の境目はどこにあることになるんだろうか?そんな疑問が頭の中をぐるぐるしだしたところで、最後のビッグバン!
![](https://assets.st-note.com/img/1736729510-wDm37yarn1RGpOPfgtFEod4L.png?width=1200)
WWWXで聴いた時はこのビッグバンでほんとに頭がおかしくなるかと思ったので、音圧としてはこちらのZepp Fukuokaの方がややマイルドラだったかも。それと前回に比べて、踊ってるというかビートに乗ってる人が多いのも気になりました。やはり西方の人間の方が、お祭り好きが多いのだろうか。
帰りはドームでのジャニーズのコンサート帰りのギャル達と、∈Y∋とRyoji Ikedaで目がバキバキになったおじさん達が一緒に歩道をそぞろ歩いて満員の地下鉄に乗り込むという珍しい体験もすることができました。
是非お二人とも、また福岡での公演をお願いしたく存じます。