水色のスカジャン
小学生のとき好きだった男の子がよく夢に出てくる。
背が低くて陶器みたいな白い肌に金髪の長い髪がサラサラと揺れる女の子みたいにかわいい男の子。小学五年生。
いつだったか、お母さんに塗られたって見せてくれた黒いネイルがあどけない笑顔と裏腹にいたく妖艶だった。
彼はいつも水色のスカジャンを着ていた。
クラスの中でもヤンチャで悪ガキという言葉が似合う男子小学生だった。クラスの女の子はその可愛さに群がりお人形扱いで寵愛を受け、男の子にも甘えておんぶをさせては自分で歩こうとしないお姫様だった。
彼とわたしは特別なにがあったわけでもない。中学生からは離れたし、今はどこで何をしているかも全く知らない。だけど、彼は今も小学生の姿のまま私の夢に何度も何度も何度も登場してくる。そして私はずっと恋をしている、小学生の彼に。それはもう気持ち悪いぐらいに。
でも、もう世界中どこを探してもどうしたっても会えない。私のこの拗らせた想いが大人になった彼に会って終わるわけではない。なぜなら私が恋い焦がれているのは少女の顔も娼婦の顔もする水色のスカジャンを着た小学生の彼だから。
その諦めか絶望からか恋は次第に憧れへと変わり、わたしは彼になりたいと思うようになった。金髪のショートヘアに憧れ、水色のスカジャンに憧れ、黒いネイルに憧れる。好きだった相手を自分に落とし込んで満足する、最高のオナニズムであり最愛のナルシズムだ。
そしてわたしは彼の名を名乗り、鏡を見て満足するだろうか。かの神話のようにそのまま鏡の泉に落ちて彼は死に、この恋に終わりが来てはくれないだろうか。