見出し画像

悲しいことばかりを積み上げて、、、名盤"CASTLE"について語る

たなか(故ぼくりり)、Ichika Nito、ササノマリイからなるバンドDiosの記念すべき1stアルバムは、ざらついて綺麗な僕らの人生を描写し、額縁で飾ったかのようなものだった。

しんみりとしたようで痛烈に、冷たく響くIchikaのギターから全ては始まる。

M1ダークルーム

"美しいけど小さな針が無数に生えている世界に
あなたを放り出すなんてできないよ"

ダークルーム/Dios

刺激とは恐れてしまうものである反面、ないとやはり寂しいものでもある。

なにもない狭い部屋を抜け出し、羽ばたくことでしか世界は開かれない。

「飛んじゃう」ことで救われるのだろうか。

M2 Virtual Castle

"Listen! Clap clap clap まぼろしの国
答えなんて出せずに踊りましょう"

Virtual Castle/Dios

架空の城という拠り所でだけ魅せれる本当の自分

きっと誰しもに必要なものではあるが、そこはあくまでヴァーチャルの世界。

M3 天国

"愛を叫べ ざらついた 声で世界で"

天国/Dios

ゴリゴリのギター 砂漠感あるMVや歌詞もあってなんだか喉が渇く曲だ。

めちゃくちゃライブ化けする曲なのでぜひ会場に足を運んでもらいたい。

M4 試作機

"悲しいことばかりを積み上げて どこまでいけるか試しているのね"

試作機/Dios

筆者がDiosで1番好きな曲である。

自分はぼくりり経由でDiosを知ったのだが、そのぼくりりの中で1番好きな曲で"曙光"という曲がある。

試作機の歌詞のサビの部分で"曙光"というワードがたびたび登場するので、つい亡き彼とあの曲を連想してしまう。

しかし、なんかの配信でぼくりりとの繋がりとかは特に意識していない的なことを言っていたのでこれ以上はここについては触れないでおく。

でも曙光も試作機もラスサビ前の静寂とか海とか、雰囲気とかを考えるとどうしても想い起こしてしまうよね。

ちゃんと歌詞を考えていくと

歌詞中に何度も出てくる"君"を振り払い、はじめて自分だけで考え行動し、ぼろぼろの試作機に乗り込み、僕も君も知らない海を僕ひとりで見に行くというのが大まかなストーリーのようだ。

"飛んでいこう 君の知らない海へと 狭い試作機の中で 曙光 見つめた日を僕は 忘れられない
ひとりきりの 世界がそこにあった 君を失ったことも忘れられそうな 朝だった"

試作機/Dios

サビのこのラインが全てを表しているように思える。

個人的にこの曲で言いたいことはダークルームとも似てると感じていて

「刺激がないのは安心だけどそれでは世界は開かれない」っていうのがダークルーム

「今まで一緒にいた"君"を失うのはとても辛いことだけど、ひとりで見た曙光は、そんなこと忘れるくらい素晴らしいものだった」っていうのが試作機

自分のコンフォートゾーンを抜け出すことで己を飛躍させようとしている点で似ていると感じる。

本当に最高の一曲


M5 残像

"なんて豊かな森に わたしは火をつけてしまったんだ"

残像/Dios


ハープ曲! Ichika氏は本当にバケモン

それでいてサビはEDM味があるってなんなんだもう

個人的には試作機とは対をなして閉塞感が漂う曲だなと思う

勝手に試作機の"君"側なのかなとか思ったりしてます


M6 Bloom

"鮮やかな黒は 呼吸している 君がぜんぜん気づいていないだけ"

Bloom/Dios


ジャケ写もあって夏感じるよね〜

歌詞見てると冬が舞台なのかもと考えられるけど。

ササマリのザ EDMな部分すこ


M7 断面

"積分しようよ 未来ごと愛しましょう"

断面/Dios

人間のシステム上、知覚することができるのは"今"以外の何物でもなく、過去は思い起こすことしか、未来は想像することしかできない。

つまり人間が世界全体を長い時間をかけてまるまる理解(認識)する術は存在しないということになる。

それでも未来も含めて愛していきたい。とたなか氏がどこかのインタビューで語っていた。

歌詞にあるような"積分"とは数学の積分であり、積分とは、図形に対して様々な計算をして体積が出てくるものである。

その"様々"の部分の不透明感というか、そのよくわからない部分からいきなり体積という解がでてくるところ。

要するに、見ることはできないけどただ確実にそこに答えだけは存在している。ということ。

これが人間の愛や営みに似ていると考えた、たなか氏らしさ全開のとんでもない歌詞である。

なんとなく楽しかった記憶とか、辛かった記憶とかって普通に覚えてはいるんだけど、自分がそのとき繊細に何を考えていたとかはもちろん、その周りの人が何を考えていたかなんか当然分かるはずもないんだけど、確実にあの頃、自分は楽しかったし辛かったっていう記憶を想起することは可能なんだよな。

「長く添い遂げた老夫婦が、過去を振り返ったときに、その数十年の時間を正確に描写することってできないじゃないですか。でも、愛として蓄積してきたものは、なんとなく残っているし、「これは確かにあるものなんだ」と実感できる。その実感と過程にあるブラックボックスが、体積を求める積分という行為に似ているような気がしたんです。」

たなか



M8 鬼よ

"自分だけが 合言葉を 知らないとき みたいな暮らしで"

鬼よ/Dios

自分の中の呪縛 すなわち鬼

もっと楽に進めるはずなのに、邪魔するのはいつだって鬼なんだ。

でも...

たなか氏のYouTubeに上がっている"駄目な完璧主義"もここに集約される気がする。

M9 Misery

"誰にも届かない 拘りに縛られている
捨てたら 楽になれる気もするけど
自分が自分でなくなってしまうような"

Misery/Dios

でも...  鬼がいなくては自分が自分でなくなってしまうような...


生きた証かどうかは分からないけど積み上げた空き缶と脱ぎ捨てたシャツは僕の部屋にもあります


M10 逃避行

"震えたままで走れよ たったひとつを
抱きしめて逃げること それこそが命だろう"

逃避行/Dios

戦う? 逃げる?

逃げていいんだよ〜 そんな曲

逃げることは次への祈り


M11 紙飛行機

"祈りでは 重い扉は開かない"

紙飛行機/Dios

祈ることしかできない。

でも祈りでは扉は開かない。


元々ラップバトル用のトラックとして作られたこともあり、バチバチな感じなのだが、そこにIchikaがメタル感強めのギターを載せてるからもうとんでもないことになってるよね。

そこからあの転調よ。

Diosのパワーを感じる一曲


M12 劇場

"どこかにある天国に 思いを馳せる ことすらもう 何かの罪に問われそうで"

劇場/Dios

うーーーーんたまらん

この諦観してる感じがいい

Diosはササノの貢献もあり打ち込みが多いんだけど、生ドラムもやっぱいいよねえ

Ichikaのギターもたなかの歌唱も流れるような感じがあって、すごく生音と合うんだよな。

美しいの一言に尽きる


本当に、自分の中学生時代をこのアルバム1個に捧げたと言っても過言ではない。


最高のアルバム10枚挙げてって言われたらもう、CASTLEと没落と、ホロワと、、、、ってなる。

とにかく確実に人生で1番好きなアルバムです

たなか氏はライブのMCでよく、その時聴いていた音楽をまたいつか聴いたとき、その時の思い出まで思い出すことがあると語る。

そんな音楽を作れたらな。とも

"CASTLE"は自分にとって確実にそういう音楽になっているし、これからもそういう一枚が聴けると思ってます!


&疾走とかガソリンについてもあとで書くかも

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?