(タイトル画像はhttps://tia-ostrova.ru/news/obschestvo/179932/の引用)
ロシア国防省HPが閉鎖になって以来、しばらくサハリンと北方領土に所在する第68軍団の訓練動向を見失っていましたが、やっと、この動向を継続的に追える通信社を見付ける事ができました。
「オストロヴァ(島々)」というサハリンローカルの通信社です。
報道によれば、5月下旬から夏期訓練期という訓練期間が始まっているようです。
分隊(10人程度の部隊)がライフルや装甲車搭載装備で射撃するフェーズの様で、訓練自体は、全く初歩的な各個訓練に近いレベルです。
ただ、第68軍団の任務である対着上陸とは異なる訓練である市街戦が重視されているようです。この事は、軍団の任務の変化(付加の方が正確だと思いますが)の兆候であり、また、専用訓練スペースを建設するほど大掛かりなことから、近い将来のウクライナへの増援、あるいは部隊交代の準備と見ることが可能です。
ここで、「対着上陸作戦に市街戦能力は、全く必要ないのか?」「敵は、都市を占領しないのか?」と思う方も居ると思うので、その疑問について考えてみたいと思います。
先ず、敵(この場合、日米軍)が北方領土の都市を占領する事は、有り得ます。
しかし、それは港湾、飛行場、重要インフラ等の占領(ロシアがウクライナでやっていること)のためです。なぜなら、日米の作戦や増援を有利にし、ロシアのそれらを不利にしたいからです。
だから、それら重要インフラの方が都市より占領の優先順位は高い訳です。
但し、残りの都市から重要インフラ等に向けて危害が加えられる可能性があるので、これら都市内での治安維持(イスラエルがパレスチナでやっていること)は、必要になるでしょう。
今回の市街戦訓練が、日米の治安維持部隊に対する訓練とは、考えられません。
何故なら、ロシア側から見ると、ほぼ島の重要インフラが占領された段階での訓練を重視しても無意味だからです。
日米が最も無防備になる段階、つまり海や空から上陸してくる段階で叩く(最初の一歩の所に落し穴掘っておくだけでもかなり有効ですよね)訓練をするのが軍事的に合理的だと思います。
今回は、5月19日、25日、6月15日の報道をソースにしました。最後に、色んな「?」の答なのかもしれない「気になる話」を加えました。
①5月19日
訓練に向けて、各種標的が準備されました。軍団の戦闘射撃規定に則った(後の報道で市街戦用と明かになる)標的や施設も準備されました。
②5月25日
北方領土所在の第18機関銃・砲兵師団のスナイパー部隊が訓練を開始しました。
2人一組で、市街地での偵察やトラップの捜索、陣地の選定とカモフラージュ、偽陣地構築、射撃修正等を訓練しています。
ここに到るまでに技量の積み上げが必要な訓練なので、高度な専門性のある部隊が参加していると見られます。
5月9日の択捉島での対独戦勝記念日式典でイズムィコさんが確認した、GRUの特殊部隊だろうと思います。
同日、「サハリンインフォ」で報じられた画像には、スナイパーがこんな感じで映っていました。
③6月15日
19日に準備された市街戦訓練がより実戦的になりました。
GRUのスナイパー部隊ではない一般の部隊(自動車化狙撃部隊)が訓練対象のようですが、戦闘射撃は、夜間に、より遠距離で、速く移動する標的を使用する事になりました。
いわゆる、今後必要になる能力の底上げだろうと見られます。
④気になる話
昨日、例の「サハリンインフォ」のサハリン住民の戦死者のニュースを探していたら、上のニュースに関連するSNSを見付けました。
もし、本当ならば、今回の市街戦訓練の目的は、やはりウクライナ派遣の準備の様です(最近、イギリス国防省は、近々ロシア軍が大規模援軍を派遣すると発表してます)。
また、18師団からのウクライナ派遣、ロシア軍の弱さの原因なんかも窺えますね。