先日、ロシア海軍艦艇団が2月5日以降に宗谷海峡を通過して演習するみたいな話をアップしました。
今回は、少しだけ深掘りしたいと思います。
内容は
①演習海域からの考察(何をやる?)
②宗谷海峡の結氷からの考察(冬季航海能力)
③各種報道の隙間からの考察(宗谷海峡のドア)
です。
①演習海域からの考察(何をやる?)
先ず、海上保安庁のHPの水路警報航行警報HP(引用:https://www1.kaiho.mlit.go.jp/TUHO/vpage/mobile/visualpage.html)
を見ると、ありました。
宗谷海峡、オホーツク海、択捉島北部海岸、択捉島東部海岸、ウルップ島から歯舞諸島までの太平洋側海域で2月7~25日までの期間、ミサイル射撃が計画されているようですね。
例によって、北緯1度≒100kmで換算すると、オホーツク海の訓練海域のミサイルの射距離は最大300km位になり、射撃の際に発射艦から目標照準・着弾確認が出来ないので、航空機が支援します。あ、対艦ミサイル訓練ついでにこの航空機を目標にして対空ミサイル訓練もできたらやりたいですね。
択捉島・ウルップ島沿岸部の海域では、射距離10km程度なので、停泊時の警備訓練かもしれません。
面白そうなのは、太平洋側の弓型の海域です。オホーツク海や北方領土の防衛を訓練目的と考えれば、この海域は、敵の潜水艦あるいは上陸艦艇団の阻止訓練が行われそうです。この辺りは流氷も少ないようなので、これらの訓練はやり易いとも思います(対潜水艦訓練は、ソナーを使うため流氷のギシギシ音の無い環境でやりたいです)。やはり航空機も参加するハデな訓練になるのでしょうか。
②宗谷海峡の結氷からの考察(冬季航海能力)
宗谷海峡通過の準備をしていた5日頃の結氷状況は以下の通りです。同じく海上保安庁の海氷情報センターの報道発表によれば、宗谷海峡は、流氷で塞がれていました。(引用:https://www1.kaiho.mlit.go.jp/KAN1/1center.html)
赤色の濃さは氷域密接度を示しており、一番濃いの所は密接度9~10です。画像だとこんな感じだそうです。(引用:https://www1.kaiho.mlit.go.jp/KAN1/drift_ice/knowledge/concentration_n.html)
シロクマとかペンギン🐧乗ってないか思わず探すレベルの密接度ですね。氷の厚さは分からないのが残念ですが、例年2月は流氷が最も厚く、多い時期らしいので、この時期の流氷原通過はかなりのリスクがあると思います。 これだけでも、演習の成果があると評価出来そうです。
艦艇団の編制に砕氷船が参加しているのか不明(個人的には、やはり安全を考慮して随行していると思います)ですが、太平洋艦隊には流氷時期でもオホーツク海に進出する能力があると結論付けさられます。
③各種報道の隙間からの考察(宗谷海峡のドア)
ところで2月11日、艦艇団はすでにオホーツク海に入って訓練していると報じられました。
前回の記事アップ後、宗谷海峡通過の様子が、防衛省統合幕僚監部のHPで報道発表されるかなあと思っていたら、何にも無しでした(2月14日時点)。そして、上記のロシア側報道です。
変ですね。このHPは、宗谷海峡や対馬海峡等の日本近海における「いわゆる国際海峡」での外国艦艇の動向を発表している筈なんですけどね。
この理由は、ロシア艦艇団に空を飛ぶ能力があるのではなく、ロシア領海内、つまりサハリン沿岸部に近い航路を通過したからだと思います。動画にも陸地が映ってましたよね。
また、この記事の訓練内容に「敵の揚陸グループ」への射撃があったという事は、近くに敵が揚陸しそうな陸地があるという事なので、やはり、沿岸部に近い領海内航路を通過した公算が高いと思います。
以前、「2011年頃のロシアから見た日本の脅威について」の中で似たような事を書いたのですが、ウラジオストクとカムチャツカを繋ぐラインはロシアにとって戦略上重要なライン、つまり弱点です。
そのライン上でロシア以外の国と面した危険なポイントが宗谷海峡です。
つまり、ロシアに対し、日本やアメリカが牽制する、あるいは優位に立つためには、この海峡の「ドアの鍵」を持たなければならないのですが、どうやらロシアは、このドアをこじ開けようとして成功しているようです。しかも結氷期に…。
少し大袈裟かもしれませんが、ロシア海軍によるこの時期の宗谷海峡通過の戦略上の成果は、まさに「奇襲成功」なのかもしれません。
あ、すいませんでした。宗谷海峡通過の画像有りました。2月7日のロシア国防省発表です。