(タイトル画像の引用先: https://rgazeta.by/ru/society/boi-bez-pravil-informacionnaya-vojna-vyshla-na-novyj-uroven-cinizma.html)
お久しぶりです。毎日毎日アップデートされるウクライナ情勢に複雑な気持ちになる方も多いと思います。
大韓航空撃墜事件以来のバッシングを受けているロシア関係者の方も居るかもしれませんね。当時、ロシア語を勉強していただけで、「何て酷い事をする人達なんだろう。民間機を撃墜するなんて!」と白い目で見られた世代も居たようです。
私も、世間様からそれなりに嫌われるロケンロールな生活を送っています。
さて、ウクライナ侵攻の最中、
①3月25日にロシアのインタファクス通信社、
②4月1日にイタルタス通信社が北方領土での軍事演習に関する報道をしました。
また、
③1日に北海道のローカルテレビ局UHB等が以下の報道をしました。
今回は、これらの内容から、ロシア側の狙い、つまり演習を通じたメッセージを考えたいと思います。
①3月25日の報道
主な特徴は訳文の後で紹介します。
海上保安庁のHPを見ると、いつもの海域にいつもの大きさの航行警報が出ています。記事には有りませんけど、いつもの水上目標射撃もしたのでしょうか。
今訓練の主な内容とそれから考えられるロシア側のメッセージを列挙してみます。
◯3,000人が参加
→ まとめ(3.3)で紹介したように、師団が3,500人なので、ほぼ師団全員が参加
◯空挺部隊が搭乗した輸送機への対空攻撃を含む対着上陸訓練
→空母や揚陸艦から旅客機並みの大きさの輸送機は離陸出来ないので、仮想敵は作戦の起点を海上ではなく自軍の基地としている
◯火砲の夜間射撃
→24時間の戦闘態勢を強調
◯北方領土支配の正統性、最近の軍事力強化を強調
→日本に対する演習である事を示唆
◯国後島では1ヶ月前から計画された訓練だが、択捉島ではそうとは言えない
→急に師団全員で訓練する事が決まった可能性、あるいは海保HPの誤植
以前からここで紹介してきた北方領土での軍事演習の想定上の敵は、海からの上陸作戦のため揚陸艦を中心とした艦艇団を擁する敵でした。
しかし、今回は空挺降下作戦のため輸送機航空部隊を擁する敵に変わったようです。
つまり、今回の敵は、アメリカのようにわざわざ艦艇団を編成して北方領土周辺まで遠洋航海する必要がなく、輸送機やその掩護用戦闘機の航続距離内に飛行場等の自軍の基地を持っている国だと思います。
ちょっと回りくどくなりましたが、これ等のメッセージから考えると、今回の演習は、18師団が総力を挙げて日本に対する抑止力を示しているものである可能性が大きいと思います。
②4月1日の報道
結論をいえば、①の報道の実態、実際の中味が②の報道のようです。報道の中にある演習参加人数の規模(1,000人以上)と、訓練内容(中隊・班単位)を深掘りすると面白い結果が出ました。
◯演習参加人数の規模について
そう言えば以前、18師団の砲兵部隊の編制をまとめたことが有りましたよね。(遠い目)
師団の砲兵数は、1,020人+「ブクM-1」高射ミサイル大隊×2(投稿者注:多く見積もっても200人位でしょうか?)となるので、報道の演習参加人数「1,000人以上」と近く、ほぼほぼ、演習は師団砲兵全員が参加する規模だった事になります。
◯訓練内容について
今演習は「中隊・班の一員として」正しく行動できるか?、つまりこれら部隊単位内での連携が訓練されているようです。従って、指導者は中隊長で、指導対象は小隊長や班長と言うことになります。
部隊訓練の進め方を考えれば、小隊→中隊→大隊→連隊→師団となるはずなので今回の訓練は内容的に見れば中隊レベルと言えます。
今年2月頃にアップした「北方領土駐留部隊、小部隊の訓練終了」の記事の中で、「次は、中隊長が小隊長を指導する訓練になると思います」と書きました。
以前の記事がビンゴしたのは、嬉しいですけど、2月初旬から2ヶ月間でこの訓練進捗度はゆっくりし過ぎ、つまり訓練が遅れている様子が窺えますね。
一方で、演習参加人数の規模は、師団全員のレベルと報道されています。サッカーで例えれば、あるチームの5~6人でのパス回し練習を国立競技場でやるようなものですね。
訓練内容と訓練規模がアンバランスなので、
実際の訓練では、報道よりも参加人数はもっと少なく、内容も初歩的なレベルだった可能性があります。
③そして、1日のUHBの報道
ざっくり言うと、①の結論「18師団が総力を挙げて日本に対する抑止力を示している」+②の結論「実際の訓練では、報道よりも参加人数はもっと少なく、内容も初歩的なレベル」=③の結論です。
③の結論は、内容の低い訓練であるにせよ日本に対して効果的に恐れさせるため、
◯暗視装置を使う時代にわざわざ旧式の照明弾を使い
◯射撃している事を確認しやすいように、航行警報海域より日本に近い国後島南端で夜間射撃をした、と言えます。
詰まるところ、今回の演習は、その中味より
対日情報戦の要素が大きいと思います。
それゆえ過大評価してはならないのは当然です。
しかし、この夜間射撃で使用された可能性がある「152㎜自走砲『ギアツィント-S』」の射距離は、以前紹介したように照準可能な最大射程28.5km、最大射程33.5kmであり、国後島南端から北海道の標津海岸までの距離24㎞を越えてます。
実際に射撃するかどうかは別として、能力的には北海道に射撃可能である事も忘れるべきではないと思います。