昨今のサイバー犯罪の整理(ゲームのチート事例を参考に)
1 はじめに APEXのチート付与
先日、北米のeスポーツ大会においてハッキング被害が発生し、参加選手が意図せずチートを付与されるというトラブルが生じました。被害を受けた選手は、チート利用を理由に誤BANされるという事態に陥り、大会も中止、延期とされています。
原因はまだ不明であり、そのゲームタイトルAPEXだけの問題なのか、アンチチートプログラム(easy anti cheat)の問題で他のタイトルも影響がある問題なのか、あるいは選手の利用したPCやネット環境の問題なのか、情報が錯綜している状況です。
こちらは選手視点の映像。バトルロワイヤル形式のゲームなのですが、突然、遠くにいる敵を含めて敵の位置が分かるという事態が生じています。
運営公式の声明。調査中と。
アンチチートプログラム側の公表。うちが原因ではない、と。
最近はサイバー犯罪が目まぐるしく発生・進化しており、また国際案件のため警察や運営も迅速な対応ができていないように思われますが、しかし犯罪犯罪であることは変わりません。
今回は、昨今の刑法改正等を踏まえたサイバー犯罪を整理したいと思います。
2 犯罪の整理
過去の事例をざっくりまとめると、以下の犯罪が適用されることが多いです。拘禁刑の年数だけを見れば、いわゆる電算詐欺がとびぬけて量刑が重く、著作権法違反は罰金刑の上限がかなり高いです。他方、いわゆるウイルスやチートを作成すること自体は、まだまだ量刑が低いと言えるかなと思います。
※懲役刑は今後の法改正を踏まえ拘禁刑にしています。
各行為がどれにあたるか、という整理や視点はとても大事ですが、割とどれにも当てはまることが多いです。
たとえばウイルスやチートを作成すればその時点で不正指令電磁的記録の作成罪になりますが、これは電子計算機損壊等業務妨害罪の未遂行為にもあたります(観念的競合)。その後に実際に金銭的利益を得れば詐欺になりますし、団体のために行われれば組織犯罪処罰法が適用対象になり得ます。
以下、過去の事例をご紹介。
3 サドンアタック(2014年)
電子計算損壊等業務妨害の疑いで書類送検された事案。
この件で、運営会社は県警と連携してかなり積極的にチート摘発に取り組まれました。
4 パズドラ
著作権法違反の事案。ガンホーさんは割と著作権法違反で告訴などをされることが多い印象です。
ガンホーさんの過去の公表文。かなり強めの警告を出していますが、パズドラは大人気ゲームということもあってかチート利用・販売者は後を絶ちません。
こちらは、逮捕まではいかなくとも、アプリのサービス終了に至った事案も
5 モンハン
私電磁的記録作出罪の事案。電子計算機損壊等業務妨害罪にもなり得る旨が記事には記載されています。
6 会社ぐるみでチート販売事例 ゴーストルーター
チートツールの販売が偽計業務妨害罪のほう助、不正指令電磁的記録作成罪に問われた事案です。これまで紹介したチートは、未成年による悪戯的犯行が多かったですが、これは完全に会社ぐるみの確信犯の事案といえます。
判決文と思われるのでご紹介
追記
不正競争防止法違反2条1項17号・18号、21条2項4号(5年以下の拘禁刑、500万円以下の罰金。技術的制限手段回避装置提供)もあり得ますので、また整理します。ドラクエのゲームで、時間をかけなければ取得できないアイテムを容易に手に入れられるようなチート行為をした事案のようです。