Threads開示命令、実はウチの方が先なんです!ー実際に採用された目録等をご紹介ー
1 はじめに
先日、以下のニュースが話題となりました。
FacebookやInstagramを運営するMeta社ですが、Instagramに関連してThreadsというSNSサービスも提供しています。これは、いわゆるTwitterのようなSNSですが、Instagramのアカウントがあれば容易にアカウントを作ることが出来て、非常に好評なSNSの一つとなっています。
先日、Threadsにおいてとある誹謗中傷事案が発生したため、私は依頼を受けて開示命令等を申し立てました。Instagramと同様のやり方で進められるかと思ったら、Threads独自のログはあるのか、Instagramとの関係はどうなっているのか、等々様々な論点が生じ、発令に至るまで議論が紛糾したところです。私が申立てをしてから数日後、東京地裁民事9部の裁判官からお電話を頂き、「どうもThreadsの開示請求はこれまで1,2件程しかなく、Meta社側もどうやって開示に応じれば良いか分からないようで、時間がかかりそう」という情報提供を頂きました。
今となっては、この1,2件というのが、おそらく、清水先生の案件だったのかな、と思います。
清水先生は、東京で開示手続に積極的に携わっている著名な先生方のお一人です(私も同先生の文献を裁判に利用させていただくことがあります)。こうした形で世間に発信していただくことは、誹謗中傷をなくしていく上でも非常に素晴らしいことだと思います。
2 私の依頼者の方が先では・・・?
さて、私の対応している案件について話を戻しますが、以下の通り、アカウント情報に関する開示命令の決定書、及び、侵害関連通信部分に関する提供命令の決定書を添付させていただきます。
目録は、是非参考にしていただけたら幸いです。
○アカウント情報 ※メールアドレス不保有、電話番号保有の事案でした。
○侵害関連通信情報
皆さんお気づきになられたでしょうか。上記ニュースによれば、同ニュースの案件の決定書は12月4日付けとのことです。他方、私の案件は11月26日に提供命令発令、11月27日に開示命令発令となっています。つまり、時系列で言えば、私の依頼者の方の案件が「先」ないし「初」になります!
3 目録の説明や苦労したことについて補足
目録についてですが、発令に至るまでは、本当に手間がかかりました。
Meta社の代理人弁護士の話では、Threadsは登録にあたってInstagramのアカウントを用いるので、Threads固有の、アカウント作成時に登録した電話番号・メールアドレスはないとのことでした(アカウント情報)。
また、侵害投稿にかかわるIPアドレス・タイムスタンプ等についても、どの段階でログが残るかは未確定なところが多く、しかもそのログがInstagramのものなのかThreadsのものなのかも明確には分からないというようなお話がありました(侵害関連通信部分の情報)。
アカウント情報については比較的早く発令を進めていただけそうでしたが、侵害関連通信部分については、上記の話を踏まえてどのように目録を特定すれば良いのかというのが目下話題となり、すぐに回答が出ないことになりました。
なにより、これは裁判官から指摘された疑問でしたが、InstagramとThreadsとはあくまで別のSNSであるにもかかわらず、Threadsの投稿についてInstagramのログやアカウント情報を開示するよう認めて良いのかという問題提起がされました。(「侵害関連通信」の関連性や「特定電気通信役務」の該当性・文言解釈で引っかかるところがあるようでした)
私は、当初、両者の情報をまとめて1つの目録・申立てで開示請求しましたが、侵害関連通信部分をまとめてやると審理が停滞してしまう恐れがあると思い、また、裁判所の傾向として部分的な発令を嫌がることが多いため(※これは案件管理の観点からだと思います)、侵害関連通信の部分を取り下げ、改めて同じ申立てをすることにしました。
改めて申立てをしても、同じ裁判官で審理してもらうよう上申をしたのですが、裁判官は新しい方になり、そして、その新しい裁判官と最初の裁判官とで意見が分かれ、この案件は一体どういう方向で話が進むのだろうか、と心配の日々が続きました。
※実際には、私の案件は、同一の紛争について、誹謗中傷のThreads投稿が3,4件されており、いずれについても同じタイミングで複数申立てをしましたし、しかも、削除の仮処分申立てもしていたため、頭の中で整理するのもやっとの事でした。いろいろと裁判官や書記官にもご迷惑をおかけしたな、と思うところです。
途中経過は省きますが、最終的には、Meta社の代理人から、こういう内容であれば発令に応じる、という言質を期日でもらうことができて、裁判所もやっと動いてくれて、発令に至った、というところです。
4 その他(依頼者の方からのコメント)
以下は、私の依頼者の方のコメントです。
(Q:本件、noteに記載しても良いですか?)
「全然大丈夫です!むしろ紹介してください。社会的問題の抑止力になった方がいいとも思いますし、同様の案件で悩んでいる人も沢山いると思いますので、諦めなければちゃんと救われるということを知って欲しいです。池袋の事件の件もそうですが、本当、顔が見えなければ何でもしていい世の中になって欲しくないので、世直しのためにもぜひ公表してください。」
今回こうしてnoteに投稿できたのも、依頼者の方の寛大なお心によるものです。改めて、深く感謝申し上げます。
5 参考資料
実際に裁判所に提出したThreadsの利用規約等についての資料です。
Instagramとの密接な関連を示す部分を黄色マーカーにしています。
※その他、Meta社側の答弁書で、本件記事に関わる部分があるのですが、勝手に公開して良いのかと言う問題があるため、これはいったん保留にしたいと思います。
その他、以下の投稿もご参考下さい。
(※私の案件を担当されたMeta社代理人の先生の説明だと、InstagramとThreadsのログイン記録が別なのかどうかも分からない、というような回答でした)