会務活動について
38歳のときに弁理士業界に入ってから、13年間途絶えずになんらかの会務活動をしています。会務活動はほぼボランティアなので、多くの方は「業務が忙しい」「所属先の会社が許可してくれない」などと敬遠しがちです。
私が会務活動を始めた理由は、人脈を増やしたかった事でしたが、今では途絶えずに続けてよかったと感じてます。
それは単なる利益追求型の弁理士ではなく、付加価値の高い仕事をするプロ意識が身につくと考えているからです。
なぜ会務活動が付加価値を高めるのか
端的に答えると、"視野が広がる"からです。知的財産に関すること全てにおいてプロフェッショナルでなければ、弁理士の資格を取る意味がありません。
実務に追われる日々では偏りが生じますので、プロフェッショナルであるために、情報のアンテナを張り巡らせ、時代に即した変化を続け、迅速な対応力を強化することが求められます。
会務活動をすることで、新しい情報が自然と入って来ますし、同業者と切磋琢磨も図れます。会務活動を通じて弁理士としての資質向上に努め、自分の成長が顧客の利益となり、その結果、日本の国際競争力の強化に繋がると考えています。
関西特許研究会(KTK)
初めに(弁理士として登録が必要な日本弁理士会を除いて)自発的に入会したのは、関西特許研究会(KTK)と西日本弁理士クラブ若手会でした。
KTKは、外国実務を勉強するために外国特許研究班に入りました。企業内弁理士の方も多くおられ、事務所弁理士と企業内弁理士が利害関係なく外国実務について学びます。勉強の仕方は1冊の本を1年かけて発表し合う形式でして、あらゆる人のまとめ方を見ていると、多角的な視点が身につきました。
西日本弁理士クラブ若手会は、若手弁理士同士の交流がメインです。38歳の私は世間では若手でありませんが、合格年次では若手です。年下の弁理士の方が多いですが、事務所を経営されてる方もおられ、色々な事を教えてもらいました。
西日本弁理士クラブ
西日本弁理士クラブは、日本弁理士会に対して関西弁理士の意見をまとめて上申し、関西の知財活性化を図る任意団体です。
何か新しい事を始めるには、数の力が大切です。西日本弁理士クラブは、日本弁理士会に役員を輩出するための団体と思われがちですが、日本弁理士会を民主的なものにするために西日本弁理士クラブの存在は重要です。
「誰かが西日本弁理士クラブを運営すればよい」と一歩引くのではなく、積極的に関わってみようと思い、若手会から始めました。その後、新人担当副幹事長、親睦担当副幹事長、地域担当副幹事長、研修担当副幹事長、渉外担当副幹事長と、怒涛の如く運営に携わりました。おかげで東京の会派を運営しておられる沢山の弁理士の知り合いも増えました。
西日本弁理士クラブは、楽しみながら組織の運営手法を学びことができ、関西の弁理士が、関東の弁理士や地方の弁理士と交流を図ることができる貴重な任意団体です。忙しいからやらないではなく、将来の自分への投資だと思って時間を作ることも大切だと身をもって体感しています。
日本弁理士会
日本弁理士会は、本会と9つの地域会(北海道、東北、関東、東海、北陸、関西、四国、中国、九州)があり、私は現在、本会と関東会と関西会に所属しています。
本会は知的財産に関する様々な委員会がありますが、まず特許委員会に所属しました。
特許委員会では、所属弁理士が各部会に分かれ、特許制度に関する提言をまとめたり、判例を分析したりします。私は、特許制度の提言をまとめる第1部会に所属しました。ここでは、諸外国と比較し、日本の特許制度が不十分である点を整理しました。
特に印象に残っているのは、新規性喪失の例外期間が出願日前6カ月だったのを、韓国や米国と同様に1年にすべきであると提言を纏めていたところ、特許法改正が行われたことです。
会務活動特集の最後の締めくくりとして、日本弁理士会が積極的な知財普及活動について説明します。私は現在、本会の知的財産支援センターと関西会の知財普及・支援委員会に所属しています。
知的財産支援センターでは、小中学生、高校生、高専生、大学生を対象に知的財産制度を説明するセミナーを実施したり、高校生、高専生、大学生を対象にパテントコンテスト/デザインパテントコンテストを運営したりしています。関西会の知財支援・普及委員会では、関西の小中学生、高校生を対象に知財授業や工作授業を行っています。
パテントコンテスト/デザインパテントコンテストでは、授業の一環として取り組んでいる学校もあり、高校生、高専生、大学生のアイデアを募集し、入賞者には特許出願又は意匠出願を無料で体験してもらうというものです。3月には表彰式が東京で開催され、入賞者は招待されますので、地方の学生にとっては貴重な東京旅行の機会が得られます。
このように、日本の将来を担う若者に難解な知的財産について学び、弁理士を「将来なりたい職業」の候補に入れてもらいたい気持ちで草の根活動をしています。また、私にとっても若者の考え方や柔軟な発想力に触れ、日々刺激を受けています。