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基準範囲ってどうやって設定してるの?【基準範囲と臨床判断値】

健康診断などで基準範囲という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
この基準範囲はどのように設定されているかご存じですか?
また、臨床判断値と言う言葉はご存知でしょうか?

どちらも臨床検査技師にとって、データ管理をする上でとても重要になります!
是非覚えてみてください☺️

基準範囲とは

健常者から一定の条件で選んだ個体(基準個体)から測定された、検査値の分布中央95%の区間

簡単にいうと『100人の健康な人のデータから真ん中の95人のデータを基準範囲とする』と言うことです。

【基準個体の選定条件】
1、以下に該当しないこと
・BMI≧28.0     
・飲酒量≧75g/日
・喫煙>20本/日 
・定期的な薬物治療 
・妊娠中or分娩後1年以内
・術後および急性疾患で入院後2週間以内
・HBV・HCV・HIVキャリア

2、検体採取
・採血前3日以内に激しい運動・筋肉労作がない
・前夜の過労・ストレス・過度の飲食、飲酒がない
・採血前10時間以上の絶食、午前7~10時に20分以上座位安静後採血する

JSSLS共用基準範囲

多施設のデータを集め、一般的な臨床検査 40 項目を最新の統計手法を用いて設定された基準範囲

共用基準範囲-解説と利用の手引き-
20221001改訂版

前述した基準範囲に加え、基準個体の二次除外が設けられています。

【基準個体の二次除外】
①  潜在異常値除去法
対象項目に基準範囲外が2項目以上ある個体は除外する
②  BMI≧26.0、飲酒量≧25g/日
③  MCV<85fL
④①にCBCも加える

基準範囲の注意点

・基準を満たす健常者の95%区間より求めているため、その5%は異常となる
潜在病態(代謝症候群、軽症糖尿病、貧血、アルコール性肝障害、アレルギー性 疾患など)を除外しきれない。

つまり基準範囲は必ずしも
「正常」と「異常」を区別する値ではない

検査値を判断する“ものさし(目安)”である
基準範囲=正常値

臨床検査のガイドラインJSLM2012より引用

基準範囲の他にデータ管理する上で大事な値が臨床判断値です。
診断閾値、治療閾値、予防医学閾値に大別されます。

臨床判断値とは

疫学的調査研究により算出されたもの
特定の病態に関して, その診断、予防、治療、予後について判定を行う際の基準となる値

診断閾値(カットオフ値)

疾患群と非疾患群を判別するための目安となる判断値
例) 腫瘍マーカー(PSA、AFP)
  自己抗体検査(TRAb)
  感染症マーカー(HBsAg、HIV)

治療閾値

緊急検査などにおいて, 治療介入の必要性を示す限界値

予防医学閾値

特定の疾患を発症するリスクが高いと予測され, 予防医学の観点から一定の対応が必要とみなされる判定値。
例) 特定健診に含まれるALT, γ-GT, HDL-C, LDL-C, TG など

臨床判断値の注意点

・対象疾患に対しては有効だが、基準範囲のような 一般性を持たない。
・検査の変動要因 (年齢・性別、食事・体位、ストレスなど)が明確に示されていない点がある

まとめ

【今回のPOINT】
基準範囲
健常者の検査値の分布に基づき設定
検査値の''ものさし"で、正常と異常を区別するものではない
例)FPG (mg/dL):73-109(共用基準範囲)
臨床判断値
特定の疾患の診断基準、疾患の有無の判別、治療の目標に用いられるもの
例)FPG (mg/dL):126以上(糖尿病診療ガイドライン)

2つの判断値を基に日々検査データの管理を行っています。
それぞれの特徴を理解し、今後の検査に役立ててみてください😇
最後までお読みいただきありがとうございました!

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