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30年目を迎える美容師の過去、現在、そして未来 ⑬
そんなに引き出しのない状態なのに、他のスタイリストと同様の価格をいただくというのはものすごいプレッシャーである。
スタイリストになった以上、売上を上げなければならない。指名客を増やさねばならない。
がしかし、なにせ自信がないのだ。怖いのだ。
やらなければいけないという事はわかっていても、心のなかでは「できればやりたくない」のだ。
頼む、お客さん、来ないでくれ・・・。
とはいえ、指名客がいない私は新規やフリー客をとにかく入客しなければ指名客は増えない。
頼む、忙しいスタイリストのアシスタントをさせてくれ・・・、裏でタオルをたたませてくれ・・・、
こんなスタイリストに担当されたお客様は、かわいそうである。
スタイリストガチャ、はずれ。
そう、私はハズレくじなのだ。
ずっとタオルをたたみたい、だめなスタイリストなのだ。
「僕より先輩が担当したほうが再来しますよ!しっかりアシストします!」
アホだ。ドアホである。
何のために学校にいかせてもらい、何のために極寒の山中湖に入り、何のために遅くまで練習し街で声をかけたのだ。
いつしか私は、バックルームに潜む「妖怪・布たたみ」という称号をいただいた。
デビューは、早ければいいってもんじゃないですよ。
若いウチはコンフォートゾーンでぬくぬくしてはいけない。
未知の領域は経験・実践してこそ学びと成長がある!
わかってます、わかってますけど・・・。
楽をしたいのが人間の性なのよ。