TAMA Starphonic BRAVURA所感
一年経ってようやく…
小太鼓なんていうのは皮二枚に響き線、胴、その他諸々のハードウェアという非常にシンプルな作りをしているものだけど、その分その構成パーツが一つ変わることによる音への影響が大きい。そしてこだわり出すとチューニングからバチとの相性から本当きりが無いのでしばらく使ってみて色々試す必要がある。
自分の小太鼓を新調してから約一年、ようやく何となく最近いい音が出るようになってきたかな?と思えたので、これまでのあれやこれや使って自分好みに仕立てようと試行錯誤した後のちょっとした個人的な感想をまとめてみようかと思う。
現在の装備
「やっぱりコンサートスネアって言ったら本皮よねー!」みたいなところはまぁあるっちゃあるのだけれども、住んでる場所が雨期でちょっとメンテがキツすぎて涙が出ちゃうのでしばらくプラヘッド。
表はREMOのSkyntoneで裏は同じく普通のREMO、Hazy Diplomat。Skyndeepやら王道のRenaissanceとかASPRのTE-000Cとか載せてみたけど、今のところバランスが良くて落ち着いているのはこの組み合わせ。まだEvansに手を出してないのでそのうち試す予定。
響き線はBravuraの標準装備から変えておらず、チューニングは打面がだいたいB♭、裏がF。ドラムダイアルで言うと表はだいたい90、裏は80ぐらい(もっと締めたかもしれない)。
ついでにというか何と言うか、出身校や現在の周りの関係でアメリカのジュリアード系の影響が強いので音の嗜好もそっちに引っ張られてる可能性大です。
叩いてみろよ…”飛ぶ”ぜ…?
みたいなセリフ言いたくなるぐらい発音が良いです。音はまぁどうしても主観になるので文字だけでこうだよ、というのは非常に説明し辛いのですが、まずアルミの特徴的な音の厚みみたいなのが凄い。高次倍音は少なめで、基音の周りに音がギュッとまとまっていて更にアタックが良い意味で「ドスン」と来る。TAMAでは無いけど、ちょうどLudwigのコンサートスネアの比較動画があるので見てみるとアルミのこの「ドスン」という感じが分かる…かも?
TAMA Starphonic BRAVURAはこの上さらにエアヴェントが3つ付いていて、当初は「何が違うんだ…?」と不思議に思っていたのだけども、これ多分、強奏時に太鼓の中で一瞬空気の行き場がなくなって破裂音というか炸裂音みたいなのが鳴るのを防いでるように思える。もちろんそれが良い、という好みの人もいるだろうし胴の素材によっては空気、というよりは衝撃波がそうそう簡単に抜けられちゃ困るよ、なんていう場合もあるとは思う。アルミは上でも書いたこの「ドスン」というアタックが変に強調されすぎないバランスになっているのかな、と個人的には思う。
響き線のシステムも、後述する難しさはあるにしてもバチッとハマったときのパリパリでドライな感じはとても良い。しかもこのパリパリ感を出すために無理に裏面に響き線を押し付ける必要がないので太鼓そのものの音とのバランスが良いと感じる。これは最近のハイテク系スネア全般に対して大きなアドバンテージではないかと思う。響き線多過ぎて裏面死んじゃってるスネア、よく見るからね…
もちろん「後もうちょい…」なポイントも多々
どんな良い物であろうと不満が全く無い、なんてことは残念ながら有り得ないんです。使っていればもちろん「うーん、ここ、こうしたらどうだろうか?」というのはたくさん出てくる。TAMAさん、僕をR&Dにどうですか!駄目ですか!駄目ですよね!自分でフープ間違った角度で締めたくせにパニクってカスタマーサービスに連絡するようなヤツですもんね!
まずはベアリングエッジ…
Bravuraのベアリングエッジはシェルそのまま削ってあるタイプで、皮に接する面積が少ない上にシェルの真上にいわゆる「山」の部分が来るので振動する皮の面積がとことん広い。結果として非常にオープンな音で端っこまでらくらく叩けるセンシティブさも併せ持っている…のだが、それはどういうことかと言うとつまり「キンコンカンコン倍音が鳴りやすい」のとトレードオフなのである。特にコンサートスネアはキットスネアよりかなりキツめに皮を張るため、この倍音はより多く大きく鳴る。これを解消するために様々な種類のミュートがあったり、本皮が好まれたりとするのがこの界隈。
もしかしてEvansのStrata Staccatoのように元から端っこにマッフルリングが内蔵されてるタイプと非常に相性が良いのでは、と睨んでいて現在お取り寄せ中。
こればかりは好みの問題なので「改善して欲しい」とかは口が裂けても言えない…のではあるが、TAMAの他製品に既にメタルシェルをロールしてベアリングエッジを作ってあるシリーズがあるので、Bravuraにも使ってみたらどうだろうかという興味はある。
レゾサイドフープの注意点
これは全く、不満というか自分が悪かったというか相性問題なだけなのだが一応気をつけたい事として書いておきたい。
フープそのものに響き線用のカットインが施されているのは割とよく見るが、気をつけたいのはこのスネアが全面当たりの響き線システムを使っている点だ。レゾナンスサイドのヘッドを十分に締めてあげる=つまりフープを下げてあげないと、この赤線でなぞったあたりがスネアベッドより上のままになり、響き線がヘッドではなくフープに乗っかってパカパカ浮いてしまう、という事態に陥る。
そしてこの世にはレゾヘッドでもフレッシュフープから山の部分の距離(いわゆるカラーとか呼ばれてる部分)が異常に短いヘッドが存在する。バターサイドには超ハイテンション用としてこのカラーが短く、少ない締め具合でも音をとんでもない高さにしてくれる特殊なヘッドがあるのは知っていたが、レゾサイドのは知らなかった。残念なことにASPRのTE-01Sがこのタイプに該当していたようで、「あれ、響き線がフープに干渉してるぞ…?でもこれ以上締めたら欲しい音から外れちゃうな…?」という状況に陥って結局元に戻したことがあった。やはり色々相性というものはあるもんです。
Bravuraたる所以、響き線システム
TAMAにはStarphonicというシリーズがもともと存在していて、それをコンサート向けにしたシリーズがまずStarphonic Concertという名前で存在するんですね。そのStarphonic concertの響き線部分を凄いものに換装したのがこのStarphonic Bravuraというシリーズになるのでこの響き線機構に文句つけちゃったら「いやじゃあもうConcertで良かったんじゃん」と言われかねないんですが、別に全体的に不満があるわけではないんですよ!(言い訳)
本当に、きっちりハマってくれてる時はすごい良い働きをしてくれるんです。ハマってくれてる時は。
問題なのはこの「ハマってる」状態の幅が非常に狭いところ。マジで許しがありません。以前に書いた記事でこのダイナソニックっぽいパラレル機構の特殊さについては触れたんですが、普通のコンサートスネアの響き線機構は響き線の種類ごとにつまみが付いているとは言え調整の仕方は「引っ張る」「引っ張らない」の二択なんです。ところがどっこいBravuraくん、ここにさらに「押し付ける」「押し付けない」の二択が出てくる。しかも二箇所。
1年弄り続けて、個人的にはなるべく響き線が裏面に触れるか触れないかのところで調整するのが一番良いか、とか思ってたんですが最近(ていうか昨日!)出てきた動画で、TAMAのエンドーサーであるEric Willieさんは「奥側の上下つまみを上いっぱいまで締めるよ!」とか言っててまるっきり違うアプローチなのでビビりました。
本当にちょっとのつまみのひねりでユルユルからチョークまで飛んでしまうので「ちょっと調整分からないんで助けて…」と大先輩に頼んだものの、その大先輩までもが「あれ?あれ?」と大混乱して「お前が買う楽器はいつも使いづらい。お前使いづらい」と文句言われたなんて事も…最後は単純に悪口言われただけな気がしますが。これもうちょーっとだけベッド深くしてくれてたら「許し」が増えてた、なんてこと無いです…?
それでも調整をきちんと保存してくれるなら良いんだけど…
散々苦労して時間をかけて「よし!これで完璧!」とした響き線の調整、どのくらい保って欲しいですかね?ぶっちゃけ一度調整したらしばらくもう触りたくないですよね。僕もそうです。ただ実際には本皮なら言わずもがな、プラ皮でもその日の調子によって普段より張ってたり逆に緩かったりでちょっとした調整は必ず要ります。
が、Bravura、それ以上のペースで調整気になります。家で練習する前に調整、練習終わってリハ会場に行って調整、リハの休憩中に確認…みたいな感じ。上述したようにこのハマってる状態がかなりシビアなせいでちょっとした変化ですぐ「ん?」となります。
そして多分ここ、これがBravura一番の弱点…ヒモ!!
こいつがやはり若干伸縮してるのではないかと思わざるを得ない。
さらにこの紐のフック部分がこんな響き線フレーム中央に近いのも怖い。小太鼓を水平にしてストレイナーをON/OFFする分には良いのだが、トラディショナルグリップ勢みたく太鼓を傾けて使うと、この紐があわや響き線と裏面の間に入り込んでしまう危険性がある。というか実際にあった。「あれ!調整してスイッチON/OFFしただけで狂った?!」と驚いて裏面チェックしたら響き線がガッチリとヒモを噛んで裏面から離れたところで浮かんでいた、なんてことがあったのだ。
更に言うなら、こういうヒモではなくワイヤー的な頑丈な素材、またはいっそボルトとナットですぐ傾きの調整が出来るような機構に出来たら助かるのだけども。機構全体の左右の傾きというのも大事で、これが揃ってないと右端の響き線が左端のに比べてギュウギュウに裏面に押し付けられちゃう、なんてことが起こり得る。
手のかかる子ほど可愛い
と、まぁつらつらと不満みたいなことを書き連ねてしまったが、実際は本当に大満足で毎日ベタベタと触って可愛がっているし、面倒くさい調整も「今日はどうちたんでちゅか~♡ ギター線くんがゆるんじゃったんでちゅか~♡」みたいなキモさ全開でやっているので「手のかかる子ほど可愛い」状態にはなっている。そして自分向けにビシバシ調整して「お、良い音してるね!」と言われたら嬉しいし、その褒めてくれた人が「ちょっと叩かせて!」とやってきて「使いづらい!これはお前しか使いこなせないよ!」とか悲鳴を上げてくれるとそれはもう最高にモチベが上がるものだ。
今後TAMAさんには是非…
せっかく良い楽器なのでさらに簡単にバラエティが出せるよう、後3種類くらいBravuraで換装できる響き線のオプションを出してもらえたら嬉しい。
個人的にはコイル線よりぶっといコーテッドステンレスがあってくれると助かるし、何ならBravuraの機構にドレスデンタイプの響き線(Hannabachとか)を付けられるアタッチメントみたいなのがあったら良いな、とも思う。
ついでにStarphonicのSteelとCopperのやつ、コンサート仕様にしたら良いヤツ出来ると思いますぜ!!Star Reserveのハンドハンマード系も!