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皮!皮!皮!

たかがドラムヘッド、されどドラムヘッド

小太鼓の皮、色々種類があって困りもの。「どれだって良いじゃん」と思いがちだけれども人によっては「太鼓の音の80%くらいは皮」というほど、叩いている時の感触や音そのものに大きな影響を及ぼすので馬鹿にできません。
せっかく買った自分の小太鼓のポテンシャル、引き出してあげたいですよね。自分もそう思いここしばらく「え、また新しいの買ったの…?」と同僚に呆れられながら色々試した感想をまとめてみます。
先に注意点として、キットスネアじゃなくてコンサートスネアの話であること、結局相性問題というのは色々あって張る小太鼓によってどれも使いようがあること、またチューニングや使う場所、使い方によってどうとでもなってしまうのでなるべく「良い、悪い」のような単純な話は避けます。

REMO Diplomat Renaissance

買った小太鼓の標準装備

コンサートスネア買ったら十中八九最初についてるのがこいつ。それだけの理由がある不朽の名作。厚さは7.5milで、コーティングではなくトリートメントがフィルムに施してあるタイプ。余計なものがフィルムの上に塗られていないので素直な打感。普通のDiplomatクリアに比べて落ち着いた、中低音によった音で、Diplomat coatedなどに比べると明らかにブライトさはない。高張力時にも端っこ叩いたときに柔らかさが残り、弱奏時に「カーン」と弾かれない。とりあえず迷ったらこれから始めてみたら間違い無いのでは。

Kentville Kangaroo (Fine gauge)

買った際に何故かマスクをオマケしてくれた

コンサートスネアといえば本皮!本皮といえば普通は牛か山羊!なのだがなぜか気になって買ったカンガルーの本皮。オーストラリアでは害獣扱いなので数を減らすために獲られているのだが、その肉や皮を無駄にすまいと思い立ったのがKentville社。厚みにはFine、Medium、Heavyの三種類があるものの、一番薄いはずのFineでも10mil近くあるのでは、という厚み感がある。メニューには無いのだが頼めばExtra fineという極薄を作ってくれる…らしい。
打感はカーフスキンに比べると柔らかく、より中低音メイン。ただ湿気にとことん弱く、また皮の厚みに少しムラがありチューニングが難しい。自分が買ったものはどれだけ張っても音が高くならず、小太鼓に張るのは諦めてテナードラムに張ったりしていた。弾力のある面白いタッチで、好きな人は好きなのでは、という感じ。ちなみにHeavyをボンゴに張ると良い音がする。

REMO Skyntone

REMOの最新「本皮っぽい」プラヘッド

REMOのラインナップの中でかなり新しい部類に入るコンサート/ジャズ向けの小太鼓/トム用ヘッド。Diplomat扱いだがベースとなるフィルムは普通のDiplomatより更に薄い5milのもので、そこに3mil分のファイバーがコーティングしてあるので合計8mil。Diplomat Renaissanceに比べて若干厚いはずだが反応はよく、また音も明るい。タッチもベースフィルムが薄いせいかより柔らかく感じる。Renaissanceから全体的に一歩進んだ万能型とでも言えるかもしれない。サスティンが長めになるのと、きつく張った際に端が少々固くなる気配があり、またコーティングが均一ではないデザインなので音だけ聞いてチューニングすると「ん?」となるおそれあり。

REMO Fiberskyn 3 Diplomat

気持ちの良い打感

Skyntoneとは違い、正しく7.5milのDiplomatフィルムに3milのファイバーコーティングが施されている皮。結果的にAmbassador並の厚さになっているので薄い打面を求めているなら要注意。その厚みからくるパワー、またベースのフィルムの薄さによる反応の良さ、コーティングの打感の小気味の良さと良いところ尽くし…と思いきや低音の引き出し具合が凄すぎて音が上がらない。胴そのものの音が高くてキンキンしてしまうものに張ったら良いのかもしれない。自分の小太鼓はもともと中低音が太いのでこいつを張ったら「お、軍楽隊かな?」というレベルの低い音になってしまった。それでもザクザクとした感触がたまらないので曲を選べば使えそう。ショスタコとか?

REMO Skyndeep

「お客さん…”ある”よ…」とか怪しい店員に言われて買うようなアイテム

本来はドゥンベクとかに使うシリーズなのだがJPCが「スネアに使ってみたら面白いのでは?」とREMOに作ってもらったレアな品物。本当、JPCいかないと売ってない。一応ベースはDiplomatだけどコーティングがあるので普通のよりは厚め。元の用途が用途なだけに、打音そのものが他の打面に比べて長く「ふくよか」な感じ。打感もかなり柔らかく、音も低く落ち着いている。ただパワーはやや弱く、また裏面とのバランスがかなり難しいのでややもすると「あれ、音が飛んでいかないな?」となりやすい。ピット、小編成などで音量感を抑えつつ上品な音が欲しかったら良いのでは。カンカンうるさいブラスシェルに載せたら相性が良かった。また胴の鳴りが短いブビンガや合板のシェルなんかにも良いんじゃなかろうか。

EVANS Strata 700 Staccato

「ベタつくよ!」と言われまくって心配

ここで他ブランド、EVANS。StaraシリーズはREMOで言うところのRenaissanceシリーズに近く、フィルムそのものにトリートメントがしてあり明るさを抑え「本皮っぽく」してあるタイプ。このStaccatoはそのStrataにさらに内蔵リングを備えたもので、倍音のうるささを抑えるのが目的。が、実際そこまでの効果は無く、どちらかというと周囲が2プライになっている分、14インチの小太鼓に張ってもなんだか13インチくらいの小太鼓を叩いているような、一段階スンと落ち着いたような音を出す。胴が暴れまわるうるさい小太鼓を抑えるのに良いかもしれない。EVANSの言う通りチューニングのしやすさはREMO以上。弱奏用の小太鼓にのせるといいかもしれない。

ASPR TE-000C

これ、薄い茶色とかにして本皮カラーできませんかね

日本のブランド、ASPRのフィルムを使っていないアラミド繊維の面白い打面。公式データはないけれど厚みは9milくらい?フィルム特有の打った瞬間にガッと皮が引っ張られて出す音がしない、という意味では本皮に打感が近い。またチューニングレンジが非常に広く、「え、こんなに張って平気なの?」ってところまで締め上げても大丈夫。音はかなり明るく、張り過ぎるとなんだか金属を叩いているような倍音が出てしまうことも。どちらかというと低張力でもアタックがきちんと出る、という方が強みなのではないかと思う。テナーに低めで張ると華々しい音がする。パワーもあるのでブラスに張った時は周りに「うるさい!」と怒られまくった。

裏面(レゾナンスサイド)

REMO Diplomat Hazy

これもまた標準装備

REMO Diplomat Renaissanceと同様、コンサートスネア買うと十中八九こいつが付いてくる、というくらいスタンダート。2milという最薄でなんのトリートメントもコーティングもされていないフィルムなので反応は抜群で、ことさらストレート線を使うコンサートスネアには最高。良くも悪くもタイトなので、人によっては「太鼓の音がしないで響線の音ばっかりする…」という感想も出るかもしれない。またコイル線だけの響線にはちょっと暴れ安すぎるかもしれない。そういう人は3milの裏面もどうぞ。

EVANS Orchestral 200

右側。障子の紙っぽい質感。

EVANSが出している2milのレゾサイドのうち、トリートメントがされているもの。普通の200というクリアな裏面も出しているので間違えないように。REMOもトリートメントがされているRenaissance Reso sideというのは出しているのだが、そちらは3milのしかない。Orchestral 200はこのトリートメントのお陰で響線の甲高い倍音が若干抑えられ、しっとりとまとまった音になりやすい。また裏面のくせにかなり鳴りやすく、何なら「表はタイトなのに裏がずっと鳴ってる!」というわけわからない状況になったことすらある。BSPやMajesticなど、4つも5つも響線があって裏面をどうしてもミュートしてしまうような小太鼓の裏をオープンにさせるのに良いのではなかろうか。また胴の鳴りが弱めの小太鼓なんかにもオススメしたい。ただ素材のせいなのか、すごい伸びるので「あれ、昨日張ったのに今日また低い?」となりやすく、張ってすぐは毎日チェックする必要があるかもしれない。

ASPR TE-01S

「これ、打面に張っても良いのでは?」そう思ってた時期が私にもありました

打面側と同じく、アラミド繊維で作られたレゾサイド。これよこれ!この色で打面も作ってよ!とか思ってます。厚さは素材が素材なため流石に2milとはいかないようで、若干厚め。またフィルムと違い繊維を編み込んであるような表面をしているため凸凹しており、ストレート線とフィルムのあのピタッとくっついた感触を期待していると肩透かしを食らう。どちらかというとコイル線に相性が良く、キレが良くなり共振でコイル線がバズることも若干減る。個体差があるのかどうか知らないが、カラーと呼ばれるフープから出ているあまりの部分が短く、コンサートスネアによっては他のパーツと干渉しやすいので注意が必要。胴の音を増幅してくれるような感触がして面白いのは面白い。現在テナードラムに装着中。

この先も色々…

こうしてみると結構いろいろ試したなぁとは思うものの、まだ試していない種類の皮やコンビネーションもあるので満足せずに探求していきたいと思う。
せっかく高い金出して買った小太鼓なんだし、ちょっとした皮への投資でそのポテンシャルがフルに発揮出来るようになるなら安いものでしょう。
また曲や場所によって皮を変えれば全く違ったキャラクターが出てきたりもするので、小太鼓そのものを増やすより安上がりだったりもします。
ほら君も無駄に6枚も7枚も皮を買って変えまくって遊ぶんだ。