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着実に起こる出来事/反復のリズム 『パターソン』ジム・ジャームッシュ(映画 2016)

静かだけど、いろいろなことが「起こっている」映画。

そして心地のよいリズム。


なにも起こらない映画は苦手だ。何気ない日常を切り取ってみました、こんなのいいよね、というような。

展開されるドラマにおいて、登場人物がどのように振る舞うか。そして観客の自分はそれをどうとらえるか。それを求めて、2時間ものあいだ、スクリーンや画面の前に座るのだ。

『パターソン』はとても静かな作品だ。主人公パターソンのある月曜日から、次の月曜日までを淡々と追う。事件はいくつか起こるが、起承転結には結びつかない。

だが、冒頭の朝の場面。パターソンはシリアルを食べている。そして、テーブルの上のマッチ箱をふと手に取る。その日、彼はバス運転手の仕事の合間に、マッチ箱から着想した詩をノートに書きつける。

彼の周りで、彼の中で、出来事は着実に起こっている。

もう一つ、重要な要素は「反復」だと思う。

この映画では、双子があちこちで登場したり、いくつかのフレーズが繰り返される。双子になにか暗示的な意味があるのではなく、これは純粋な反復だ。

反復はリズムを生む。詩であれば韻を踏むことによって、映画であればモチーフの繰り返しによって。音楽など、ほかの表現にもあてはまると思う。

リズムはその作品を味わう者に、余韻と満ち足りた気持ちを残す。

⭐︎食の場面
パターソンのパートナーは、カップケーキを焼く。そして、ちょっと変わったデコレーションをする。

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