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宇宙船とヒューストン、夫と妻 『アポロ13』ロン・ハワード (映画 1995)

数多くのトラブルに見舞われながらも、乗組員が無事に地球に帰還した、宇宙船・アポロ13号の実話に基づくストーリー。

宇宙船内や、管制センターのシーンはリアルだ。
もちろん、私には詳しい知識はない。アポロ13号の実物を見たことなどない。それに、映画には全てが描かれているわけではないだろうし、逆に、事実とは異なる部分もあるのかもしれない。
だが、つまり、「克明に描いている、と思わせる緊迫感」が演出されている。乗組員たちが、一歩間違えば生還できなくなるような危機を乗り越えていく様子には、興奮を覚えずにはいられない。

これには、ストーリーにおける2つの対比が貢献していると思う。まず、アポロ13号と、管制センターの対比。両者は、常に無線で交信を行いながら、任務に当たる。宇宙と地上。何十万キロも離れた2地点が、信頼し合い、協力し、時に牽制しながら困難を解決していく。もう1つの対比は、ラヴェル船長(トム・ハンクス)とその妻マリリン(キャスリーン・クインラン)だ。心配などという言葉では抱えきれないほど遠く離れているが、お互いを想っている。
この2つの対比が、リズムと緊張感を生み出し、観客を引き込む。

ストーリーと観客の一体感を邪魔するものは見当たらない。各登場人物のキャラクターはきちんと描き分けられている。多くのスタッフが入り乱れる管制センターでさえ、主な人物の特徴はすぐ覚えることができる。特に、飛行主任ジーン・クランツ(エド・ハリス)の存在感は、登場シーンから際立っている。

私は、この映画を20年ほど前にも見たことがある。時間をおいて映画を改めて見ると、「ああ、そうだ、こんな場面があった」という懐かしさのような感情がところどころで湧くが、今回、それが特に強かった場面がある。シーンの冒頭数秒を見て、それに続く映像がはっきり思い出せたくらいだ。
それは、交代要員だった操縦士のジョン(ケヴィン・ベーコン)が、思いがけず、13号に搭乗するようにとの連絡を受けるシーンだ。電話の受話器を置いたジョンは、ふらっと数歩進んだかと思うと、不意にガッツポーズで雄叫びをあげる。
最小限の説明で、打ち上げ直前の乗組員交代という劇的な出来事を描写している。その上、ジョンとケン(搭乗を断念した操縦士:ゲイリー・シニーズ)の明暗を印象的に示している。

⭐︎食の場面
燃料を節約するために暖房を切った宇宙船内では、すべてが凍りついている。ソーセージで壁を打つと、カーンと硬い音がする。

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