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ドキュメンタリーの枠にはめるから真偽が取り沙汰されるけど 『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』バンクシー(ドキュメンタリー 2010)

『21世紀のメキシコ革命』で、アーティスト集団ASAROのワークショップの日程に、この映画が組み込まれていた。

個人的な趣味でストリートアーティストの活動を映像に記録していた男、ティエリー・ゲッタ。ある時、バンクシーの一言に触発され、自らもアーティストになると決め、Mr. Brainwashと名乗るようになる。
彼の作品は独創性に欠ける。にも関わらず、大々的な宣伝が奏功し、デビューの場として自ら企画したアートショーは大成功を収める。

Mr. Brainwashについては、このドキュメンタリーも含め、すべてバンクシーのいたずらではないかという話もあるみたいだ。
確かに、上手くできすぎな印象はある。
ティエリーの"にわかアーティスト"ぶりは、アートワールドに対する痛烈な皮肉だが、これほどストレートに「盟友」を批判材料にできるものだろうか。

個人的には、途中のある時点までは偶然で、その後は意図的に(この映画の製作も視野に入れて)仕掛けていたのでは、と思う。
バンクシーがティエリー・ゲッタに作品づくりを提案したのは、成り行きの、ちょっとした出来事。でも、ティエリーがそれを真に受けて全力でアーティストになろうとしたのはバンクシーも計算外。ただ、バンクシーはそこで立ち止まらず、その状況を「おもしろい」と客観的に見て、ドキュメンタリーにしようと考えてたのでは。

だが、いずれにしても、真偽云々は本題ではないだろう。

私には、映画前半の、様々なアーティストの作品や製作風景が興味深かった。
いつ頃、こんな人がこういうことをしていた、という記録であると同時に、とても臨場感がある映像だ。
次の日には消されてしまうかもしれない刹那的な作品の目撃者になったような気持ちになる。暗がりにまぎれて壁に描いている彼らのそばに、自分もいるかのようで、わくわくする。

タイトル画像は、メキシコ、サンミゲル・デ・アジェンデにて。(映画『イグジット…』とは直接の関係なし。)タイルの真ん中、❤がリアルな心臓になっていて心を射抜かれた。

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