世界一の乗り物?奥祖谷観光周遊モノレール
異次元空間は、世界のヘンテコを追う同人誌「異次元空間」のオンライン版で、風変わりな場所と構造物の紹介がメインです。
世界に乗り物は無数にあれど、世界一を称する乗り物はそう多くない。そんな中、4つの世界一を持つ乗り物が四国の山間にあるという。
今回の異次元空間では奥祖谷観光周遊モノレールを紹介する。
平家の隠れ里伝説も残る四国の奥祖谷(おくいや)。急峻な四国山地の川沿いに狭い道路を車で走らせると、山間にひっそりと駅舎が現れる。ここが奥祖谷観光周遊モノレールの乗り場だ。
外から何やら遊園地で見るような乗り物が顔を出している。
プラットホームからは車両が発着している。奥祖谷観光周遊モノレールの乗車時間は65分と長いため、乗る前には各種注意事項の説明がある。乗車前には必ずトイレに行ったほうがいいだろう。
(※顔には処理をしています)
車両は簡素ながら非常時用の無線機および非常ボタンも搭載されている。なお、誤って車両から物を落とした場合には場所が場所だけに拾得まで非常に時間がかかるという。注意されたい。
モノレールは山の上でループするように作られているため、駅は1つのみ。途中停車は一切ない。
森の中の空気は、なんだか爽やかですがすがしい。これは植物から発散されるフィトンチッドの効果だと言われています。ゆったりのんびり進むモノレールで森林浴を楽しみながら登山気分を味わい、自然からの恩恵を感じてみてください。2人乗りのモノレールが約4分おきに発車し、乗車時間は約65分になります。
全長4600m、高低差590m、最大傾斜度40度、最頂標高1380m、これらすべて世界一(観光用モノレールとして)
※自然環境に配慮した電動式を採用しております。
三好市公式観光ウェブサイト大歩危祖谷ナビより
ゆっくりとモノレールに揺られながら杉木立を見上げる体験は他にでき無さそうである。歩かないハイキングと形容されるのも頷ける。
写真では分かりづらいが、かなりの急勾配が続く、車両には勾配に合わせて座席が傾斜する機構が備えられている。
約4分間隔で発車しているので、複線区間では約2分間隔で他の車両とすれ違う。対面するのでどこか気恥ずかしくもある。
乗車すること数十分、「100m先、最高地点です。右手にご覧いただけます」の標示が現れる。
ひたすら登り続けたモノレールもようやく山の頂上に達する。
この景色こそが65分間もこのモノレールに乗る最大の目的である。
なんでこんなに長い距離のモノレールになったんですか?と聞くと「そりゃあ、峰々の美しさを見るためじゃけ!」と笑われた。「剣山を見るために、あの斜面を登るわけです。足で登るよりはだいぶ早い」とのこと。
exciteニュース記事より
行きはひたすら上りなので、帰りはひたすら下りになる。下りの場合も座席が水平にするよう傾斜する。
(※顔には処理をしています)
すごいところに作ったモノレールであることが下りだとよく実感できる。
(顔には処理をしています)
水平区間と比べるとエスカレーターかと思うほどの傾斜っぷりである。乗り物というよりはちょっとしたアトラクションといったほうが合っているかもしれない。
駅が見えてきて、長い乗車も終わりである。駅に近接して温浴施設もあるので、乗車疲れを解くのもいいだろう。
到着したあと留置中の車両を見学をした。座席は前後の二名(タンデム配置)で、前方はカブトムシのような意匠になっている。上部には屋根もついており、どことなくトゥクトゥクを思わせる。
レール下部は下向きのラックレールになっており、いわゆるラック・アンド・ピニオンを利用して急勾配でも登攀できているようだ。
乗車時間65分で、通信も圏外になりがちな山間ということで、ウェブ上でのレビューで「飽きた」「長すぎる」「すれ違うカップルの顔が虚無」と書かれた物も散見されたが、物好きの筆者としては乗車体験を楽しめた。
観光名所も多い奥祖谷に来て、わざわざモノレールに来る方が居るのだろうかと思っていたが、すれ違う車両にはそこそこ人が乗車していたため、観光振興という目的は果たせているのかもしれない。
昨今のご時世もあって、現在は運休中ということだが、通常運休となる冬シーズン後の運行再開を期待したい。
日本にはまだ見ぬ不思議な光景があるものだ。
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