恋をした。3ーもう一度ー
文=ひーさん(N高6期生・通学コース)
今の時期は肌寒さで目が覚める。
今日の朝ごはんは、焼き魚に白米、なめこのお味噌汁にほうれん草のおひたし。ちゃんと作ればちゃんと美味しい。最近気づいたこと。
食べ終わったら洗濯!
生活の習慣はもう体に染み付いている。
一段落した昼下がり。はぁ、と一息ついていた。
これから用事があるため、いつもより急いで終わらせたのだ。
なかなか決心がつかなかったけど、思い出の場所で、あなたにもらう最後の言葉を知るために。
「久しぶりに来れたねぇ」
杖をつき、たどり着いた先で見た思い出の木は懐かしい黄金で眩しくうつった。
いつも座っていたベンチに腰掛け、空をぼーっと見つめる。
あの人が空に旅立ってからここに足を運んだのは今日が初めてだった。
白い便箋。「ふみこへ」と書かれた宛名を見るたびに、恋しく思ってしまう心を静めながら初めて便箋を開いた。
「あなたは自分をそんなふうにいうけれど。
一緒に歩くときは車道側を歩いてくれるし、あなたが苦手なほうれん草だって私と半分こして、いつも残さず食べてくれる。
確かに”ありがとう”はあんまり聞いたことないけれど。
それに、そんなあなただから恋をして想いを告げたのよ」
当分は行かないけど、お酒飲みすぎずにちゃんと待っててね
またね、こうきさん
手紙を閉じると、言葉を終わらせてしまう気がした。あの人はもういない人というのを重く実感してしまった。
ひらひらとイチョウの葉が私の隣に落ちてきた。そこは今はいないあの人の場所。
溢れる気持ちを抑えながら紙を裏返してみた時、端っこに小さく
「僕の部屋の引き出しの3段目の奥」という文字。
不器用ながらに、何かの居場所を伝えようとしている!
最後に迷いながらこの文字を書いたのだろうなぁと思うと少し笑いが込み上げてくる。
「半世紀分の愛を侮ってはいけませんよ」
ふふっと笑う、おばあさんの手の中には”何か”が握られていました。