反射行動
これまで大企業から中小企業のいろいろな人達と仕事をしてきました。
特に製造業を中心に仕事を一緒にしてきた中で気がついたことを一つ取り上げてみます。
それは、反応の一つとしての『条件反射』とか『脊髄反射』とか言えるものです。ただただ日々、目の前に起きたことに反応する。
良くも悪くも、その会社の文化的要素かもしれません。
製造業では、日々色々なことが起こります、品質問題、生産変動、部品遅延、特急生産依頼、等など繰返し起こります。
それらの状況変化、いわゆる目の前に起きたことにTOPから一般従業員までの反応が同じように反応し、そして時間経過とともに収束します。
ただ問題は、それらがノウハウの蓄積に結びつかないこと。
問題が終了した翌日には、何も無かったかのように忘れている。
脊髄反射の様に、脳に思考が発生していないこと。
仕事をしている中で、ある事例や現象が目の前に現れると、それに対しての反応(対策や対応)が起こりますが、その反応の仕方は、二つに分かれる。
①目の前に起きた現象だけに特化した反応をする人
その現象が起こったことだけを見て対処する人
②その現象のそもそもの原因は何か?と考える人
その現象が起こった背景と、なぜそのようになったかをみて対処を考える
残念ながらノウハウの蓄積が出来ない会社は①を選択するしている割合が大多数いることに驚きます。
数十人~百人規模の中小企業なら、社長以下各階層に役職者が在籍しているのですが、トップから一般従業員までが①を選択して同じミスを繰返したり、明らかに二次弊害が発生することを予測できずに不具合を再発させる。
なぜ✕5回とか言われていますが、それが出来ない。
本能的な反応、いわゆる脊髄反射をして、残念ながら真の原因を探れない無いんですね。
品質問題など、基本的に再発以外無いに等しいのですがね。
不具合事例
製品Aに取付けられていた部品の一部に、何か溶融物が侵入して固着している不具合品が顧客先で見つかった。
作業担当者は、製品Aを組立作業をしていると、50%程度の修正作業が発生する。その修正作業を行うと汚れが付着する。すると、刷毛をとりだして毛先にアルコールを含ませ汚れを落としていた。
聞けば、綿棒にアルコールつけて拭くと綿棒の繊維がA製品に付着するので刷毛を使用して拭いた。
ここでの作業者は
・汚れは無条件に落とさなければいけない。
・汚れを落とすのには、アルコールで拭く必要がある。
・綿棒で拭くと、繊維が製品に付着する。
・したがって、刷毛で拭くことにした。
一応この作業者は勤続10年以上
アルコールの特性
・水より表面張力が低く流動性がある
・汚れを溶解する力がある
・アルコールは蒸発する
この工程の管理者
・綿棒、刷毛、アルコール、の設置があることを知っている。
・50%程度修正作業が発生することを知っている。
・汚れの程度的には外観OKレベルで拭く必要はないことを知っている。
・アルコールの特性を知っている。
工程管理者から対策として出てきたこと
・拭く必要がないこと
・刷毛を撤去すること
・作業者に教育すること
それに対する質問
対策の内容から、起きた問題の事象しか考えていない。したがって、今後同様なことが発生する。
なぜ今回のことが起きたのか深堀りする必要がある質問をした。
・アルコールは流動性があって、多量に塗布すると流れてしまう
どうしてそれを知っていながら使用しているのか?
・そもそも修正がなぜ発生するのか?
修正対策が出来るならそれを優先して行うべきではないか?
・刷毛は工程全体から撤去したのか?
そもそも刷毛を使用すること自体間違い(水平展開)ではないか?
まとめ
ここでの作業者から管理者までが、問題の本質を捉えていないこと。
目の前に起きたことに対する脊髄反射的なことしか出来ていないこと。
この事例では、汚れが発生する頻度、汚れの程度、それに対する処置基準、汚れの処置方法、そこに用意されている備品、誰が何をするのか、最終結果がどうなるのか、全く考えることができない。
残念ながら、このような組織で仕事をしても何のスキルアップも望めないので早々に自分の将来を考えるべき事例と思います。