シビアアクシデントの脅威
本のタイトル「シビアアクシデントの脅威」は福島第一原発の事故以前から原子力発電設備に関わっていた舘野淳氏の著作です。
この本には米国でも原発建設を推進する過程で様々な委員会で安全性に警鐘を鳴らした研究者が存在していたが、原発推進派の権力者が無視して来た歴史も紐解いている。米国のアイゼンハワー大統領(当時)が核エネルギーの平和利用と言うスローガンをぶち上げて、そのおこぼれに預かったのが正力松太郎(元読売新聞社主)と中曾根康弘元総理です。正力氏は総理の座を目指しており、米国の意向に沿い未完成の原発を導入、日本の産業活性化と言う成果を得ることに血道を上げていた。そこに食らいついたのが中曾根氏で今で言う河野太郎デジタル相のような存在でした。原発調査用予算を獲得した時、科学者に向かって「君達がグズグズ言うから札束で頬をひっぱたいたのだ」と豪語していたが福一以降は「そんな発言はしていない」と。
電力会社と重工メーカーへの提言
舘野氏の著書や各種事故調査委員会でも軽く触れているが、原発の実態について真実と虚構が入り混じっており、このまま40年超の原発運転は福一とは別の要因で大事故につながることが懸念される。舘野氏の著書でも「ウラン燃料の『崩壊熱』がゼロ近くに低下するまで冷却し続けなければ、炉心溶融が避けられない」と書いています。私は50年前に日本製鉄㈱名古屋製鉄所の火力発電所の技術管理をしていました。上司から「系統図と現場の配管ルートの照合」を指示されて、現場調査をしました。系統図と現場の違いを知ることが出来、事故が起きた時の対処方法が分りました。この経験は後輩に伝え、実践した人もいます。日本に導入された初期の原発については碌な系統図も渡されず、福一事故で右往左往した。手探りで現場確認をしたことで事故拡大につながった。運転を開始すると現場に近づけないのが原発なので。名古屋製鉄所長が交代すると浜岡原発のイエローゾーンに案内するのが中部電力の慣例で、私は中電との窓口担当として同行しかけた経験があります。
重工メーカーは完全に休止している原発から現場調査する対象を選び、冷却水の確保方法に遺漏がないか調べるべきでしょう。関西電力美浜3号で起きた復水(循環)水の量を測るオリフィス下流部が紙のようにぺらぺらになっていて、噴破指数人死傷した事故あり。完全停止から時間が経過しており放射能汚染の心配が少ない。福一事故の後、冷却水の漏れ箇所が分からずに苦労したことを忘れてはダメでしょう。
いつ起きるとも知れない活断層がもたらす地震対策は無駄の上に無駄を重ねる愚行でしょう。