AV新法における「性行為」とは
問題の所在
AV新法は、性行為映像制作物(AV新法2条2項)の制作公表を対象とする法律です。
そこで「性行為」の定義が問題になります。
「性行為」にあたらなければ、その映像の制作公表には、AV新法の規制が及ばないことになるからです。
「性行為」の定義
AV新法における性行為とは、「性交若しくは性交類似行為又は他人が人の露出された性器等(性器又は肛門をいう。以下この項において同じ。)を触る行為若しくは人が自己若しくは他人の露出された性器等を触る行為」です(AV新法2条1項)。
「性行為」の定義を分解すると以下のとおりとなります。
性交
性交類似行為
他人が出演者の露出された性器等(性器または肛門。以下同じ。)を触る行為
出演者が自己の露出された性器等を触る行為
出演者が他人の露出された性器等を触る行為
「性行為」に該当しない行為
「性行為」の定義を踏まえると、以下の各行為は「性行為」に該当しません。
乳首に関しては、「性器等」ではないことから、
①他人が出演者の露出されていない乳首を触る行為
②出演者が自己の露出されていない乳首を触る行為
③出演者が他人の露出されていない乳首を触る行為
④他人が出演者の露出された乳首を触る行為
⑤出演者が自己の露出された乳首を触る行為
⑥出演者が他人の露出された乳首を触る行為
全て「性行為」に該当しません。
児ポ法やリベンジポルノ法では、「性器等」に乳首が含まれています(児ポ法2条2項柱書、リベンジポルノ法2条1項2号)。これに対しAV新法では、「性器等」に乳首が含まれていません(AV新法2条1項)。
露出された胸部を触る行為については一般の商業映画等でも見られる行為であるところ、これらの商業映画等を対象から外すため、露出された胸部を触る行為等に係る人の姿態の撮影にAV新法の規制が直ちに及ばないようにする趣旨です(AV出演被害防止に関する各党実務者会合著「AV出演被害防止・救済法Q&A」34頁)。
性器に関しては、露出されていなければ、触っても「性行為」に該当しません。
したがって、
⑦他人が出演者の露出されていない性器等を触る行為
⑧出演者が自己の露出されていない性器等を触る行為
⑨出演者が他人の露出されていない性器等を触る行為
これらは「性行為」に該当しません。
まとめ
①②③④⑤⑥⑦⑧⑨は「性行為」にあたりません。
そのため、①~⑨を撮影した映像の制作公表には、AV新法の規制は及びません。